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1/31(金)

毎週更新!BookLive! 書店員の愛と独断と偏見による「五つ星作品」をご紹介♪今週は『沖で待つ』『累』『高橋愛写真集「LOVE NO.10」』の3作品です。

  • すべての働く大人たちへ

    • 沖で待つ

      沖で待つ

      絲山秋子
      文藝春秋
      1巻
      493円(税込)

      死生観が変わる度

      「同期」とは不思議なもの。私には十数名の同期入社がいます。助け合い、張り合ったり、時には呆れもしますが、根っこには常に信頼と感謝の気持ちがあります。友達や家族や恋人とは違う、いわば運命共同体。同時に入社しただけで、「同期」という関係は会社を出ても年をとっても変わらず、血脈のように続くのです。
      「沖で待つ」は同期の絆の物語。入社直後に福岡配属になったふとっちょの「太っちゃん」とバリバリ女子「及川」が、社会人として助け合い成長する中である約束をします。
        「先に死んだ方のパソコンのHDDを、後に残ったやつが破壊するのさ。」
      人に見られたくない自分の趣味嗜好の塊を託せる人、というのは同期という距離感の信頼関係があってこそ。それからしばらくして、太っちゃんは事故によって死んでしまい、及川は一人で約束を実行に移すべく彼の家へ向かうのですが…。
      死によって消えるものと消えないものがそっと見えてきて、周りの人に優しくなれます。少し照れくさいけど、同期に薦めてみたい一冊。(書店員・えい子)

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    シンプルな言葉ですみずみまで描く、絲山ワールド!

  • 鏡よ鏡、本当に美しいのは…誰?

    • 累 1巻

      累 1巻

      松浦だるま
      講談社
      1~9巻
      540円(税込)

      究極の変身願望度

      ――クレオパトラの鼻がもう少し低かったら、歴史は変わっていたかもしれない。

      こんな名言が誕生するほど、昔から議論の的となっている「美醜」。
      この作品は、美しかった大女優の母・淵 透世と違い、醜い容姿で周囲からいじめられている累(かさね)が、母に託された口紅の不思議な力で他者の顔と入れ替わり、望みを叶えていく物語。
      口紅という変身アイテムに「テク○ク○ヤコン」的なキラキラ魔法変身少女を期待すると、大きくしっぺ返しを食らうのでご注意を。

      累が葛藤するたびに母の幻影が現れ、悪魔のような囁きを続ける。さらに一度覚えてしまった「人に羨望のまなざしを向けられる快感」は、麻薬のように累を虜にし、次の欲望を生み出す。
      累の名前は江戸時代に流布した「累ヶ淵」という怪談を彷彿とさせ、物語に登場する人々の執念は底知れぬ淵にも似たものがある。
      累の絶望を知ってなお、「人は見た目じゃない、心だ」と言えるだろうか?

      作者はまだ新人とのことですが、これが初連載作とは思えないほどの構成力で、特に目力が素晴らしく引きこまれます。表紙の美しい瞳に魅入られたら、ぜひ。(書店員・鮭)

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    欲望と執念の果てにあるもの