世界を何度も変えた男、スティーブ・ジョブズ。この本は直属の部下として彼の人となりをつぶさに見てきた人間によって書かれているだけにその在りようが窺えるものでした。彼のリーダーシップを学びたい方はぜひ。
この本は数ある『ジョブズ本』の中でも、実際に彼のそばで人となりを見てきた人間が書いたもので、今ま
...続きを読むで、彼のストーリーは世界の人間が知るところとなりましたけれど、それとはまた違った側面が現れていて、スティーブ・ジョブズという人間の複雑さと経営者としての偉大さ。そして、生身の人間としての彼が浮き彫りになっていて、ビジネス書としてはもちろん、一人の人間の伝記として、読んでいく、という楽しみもあるかと考えます。
筆者がジョブズと実際にかかわっていたのは彼が精魂を傾けて開発していた初代のマッキントッシュの開発から発表までだそうで、一人ひとりの限界をはるかに超えるクオリティーを現場の人間に要求し、現場の人間から『もうこれ以上は無理だ!』という悲鳴にも『いいや、君たちなら出来る』と発破をかけてマッキントッシュの発表にこぎつけたというエピソードはあまりにも有名ですが、筆者は彼のふとした姿をこう紹介しています。『エンジニア連中に嫌われているのはわかってる。だけど将来、今この時期が人生最高のひとときだったと振り返ってくれるはず』だとあるときふっと筆者にこぼします。事実、開発にかかわっていたスタッフはあとのほうで『あのときが自分の人生で最も輝いていた』と方々で語るという事実から見ると、彼の『将来を見る目』は正しかったんだなと痛感しました。
そんな彼も自分の会社を追われ、個人的には一番注目しているネクストやピクサーを率いていた10年間のことも書かれており、まったく泣かず飛ばずの中でライバルのビル・ゲイツはどんどん資産を膨らませていく…。こういうときに彼がいったい何を考え、それでも前に歩み続けていた姿というのは今の自分にとって、本当に励みになりました。
後にピクサーが「トイ・ストーリー」のヒットで世界有数のアニメスタジオになり、ネクストが古巣であるアップルに買収され、iMacの大ヒットに始まり、その後のiPod、iPhone、iPad、iCloudに続く立て続けの大ホームラン連発につきましては、僕はいまさら語ることでもないのでしょうが、『アメリカ政府よりも現金を保有している』とさえ今はいわれる会社をどのようにして築いていったのか?彼の「iリーダーシップ」というものを学んで、自分のものにしていきたいという方には格好のテキストであると考えております。
2011年10月5日にスティーブ・ジョブズが「旅立って」新生アップルは筆者が予想したとおりCOOだったティム・クックが新しくCEOとして舵を切る形でスタートしました。この「箱舟」がどこへ行こうとしているのか?今後も目が離せません。