ノリーナ・ハーツの作品一覧

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  THE LONELY CENTURY　なぜ私たちは「孤独」なのか

  ノリーナ・ハーツ / 藤原朝子

  「自分さえ良ければアンタはどうでもいい」
  
  いつの間にかそれが当たり前の社会になっている。ちょっと前はそうではなかったように思う。一般的に厚顔無恥と言われる政治家だって、まだ一応体面を気にした発言をしていたし、あきらかに人を馬鹿にしてるような成功者をもてはやす風潮もなかった。
  
  でも今はどうだ。社員...続きを読むを過労死させても儲けたら正義だし、屁理屈でも勝てば正義だ。発言の辻褄なんか合わなくてもいい。法律だって守らなくても問題なし。権力の座にいることや、株や金を持っていること、フォロワー数が多いことがすなわち正義なんだ、とでも言わんばかり。もちろん良心的な提案が出たところで「でもお金にはなりませんよね」で消えてゆく。
  
  おかげで人々の心から市民意識は消え、コミュニティも消え、心のつながりを失ってただようばかりの「原子」化した人たちは、他人なんか信用ならない、やっぱり頼れるのはお金しかない！とばかりに財テクにはげむ。まさに仏教で言う「末法の世」に生きている。
  
  いつの頃からこんなだろう。ポストモダニズムが流行ったミレニアムをすぎてからしばらくして世間一般が満遍なく新自由主義に染まっていったような気がする。
  
  自己責任論が蔓延し、見知らぬ他人は敵もしくは不審者となり、社会的弱者など気づかう余裕もなくして、「私さえ良ければアンタはどうでもいい」というお札ならぬスマホを額に貼り付けてショッピングモールをウロウロするゾンビたちの悪夢のような世界。
  
  で、本書の主題「孤独」である。ゾンビ映画のゾンビたちが絶えず飢えに苦しむように、私たちもまた孤独に苦しんでいる。そりゃそうだ。自力でなんとかしなければならなず、他人は全員敵に見えるような状況で、どうして他人に寛容になれたり、人との繋がりが育まれるんだという話だ。
  
  本書に詳しく説明されているように、その苦しみは心だけでなく、実際に肉体も蝕む。肉体だけでない、孤独は世間に対する印象を悪化させ、人を人間不信の塊にすることで、敵対的かつ不寛容な発言をする政治家に投票させ、実社会をもむしばむ。
  
  いわゆる極右政権や全体主義に同調する人々は孤独によって失った安心感や自己肯定感、人との繋がりなどをそうしたコミュニティで見つけてしまう。
  
  現代の孤独は個人的な問題で済ませられる問題ではない。孤独が生まれる構造、もたらす結果、どっちも社会規模だ。資本主義経済も現代テクノロジーも、こぞって人を孤独へとうながしている。
  
  もちろん、孤独（ぼっち）であることは負け組であり恥なので、みんなSNSなどでお茶を濁したり、特に言わないで平気な顔を演じているから、日常生活ではあまり目立ってない。それがまた怖いなと思う。
  
  平穏無事な日常の下で、着々と育つ社会の全体主義化を止められる人はいない。どこかおかしいと感じても、とりあえず自分は平気だと頑張ってしまう。もしくはすべて自分の努力不足だと思い込んでしまう。
  
  これはもちろん、弱肉強食という強者に都合の良いシステムがもたらした結果ではあるが、人々が効率化や合理化を追求したせいでもある。
  
  ただ、私は、田舎の不自由さを嫌って都市部に移住してきた人たちを責める気持ちにはとてもならない。気持ちが分かるからだ。都市にはおせっかいでうるさい隣人はいなくて、ただ自由だけがある。そして、全てがコントロールされて、便利で清潔で快適だ。例えその裏に孤独という地獄があっても、現代人はもう都市がもたらす快楽を捨てられない。ミヒャエル・エンデ『モモ』の灰色の男たちに抗うこともない。
  
  本書では一応、孤独化を阻止する方法があれこれ書いてはある。社会実験的な物、新たな法律の提案、日常において個人でも出来ること。中には、すでにヨーロッパで実施中の現実的な提案もある。だから帯で茂木健一郎氏が処方箋だなどと書いているのだろう。
  
  ただ、読んでいてどうも目がすべるのだ。どれもこれも、所詮は付け焼き刃でしかないのではないか、これはもう個人の意志を超えた歴史レベルの大きな流れなのではないかと。すでに無力感がいっぱいの自分などは本書を読んでますますそう思ってしまった。この先に待ってるのはアシモフ『はだかの太陽』なのか、はたまたオルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』なのか。
  
  数字しか頭にない無責任な株主が力を持つ社会で、無慈悲な多国籍企業が政府を上回る力を持つ世界で、目の前でどんどんお気に入りの店が潰れてゆく街で、他人に親切にしようと言われても心はひたすら萎んでゆくばかり。
  
  ピンチはチャンスだと著者は言うけれど、それすらも新自由主義の勝ち組によるスローガンに聞こえるのは自分が「原子化」しすぎたせいなのだろうか。タトゥーのように心に刻まれた分断は根深い。
  
  ちっとも希望は見えてこなかったものの、孤独が生まれる社会的構造や、その結果がこれ以上なく簡潔にまとめられており面白い本だった。現代の孤独が、個人の資質や努力不足などではないと分かるだけでも救われる人は多いのではないだろうか。

  Posted by ブクログ
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  THE LONELY CENTURY　なぜ私たちは「孤独」なのか

  ノリーナ・ハーツ / 藤原朝子

  今を生きる全ての人に送りたい。
  
  孤独な時代というタイトルがそのままズバリ。
  
  仕事に忙殺されている日々を過ごしていると何のために生きているのかたまにわからなくなってしまうことがある。
  
  そうそう、家族、友達、社会とのコミュティが大切なんだよな。
  
  そう思わせてくれる本。
  
  この本を読んで旧いともだ...続きを読むちに久しぶりに連絡してみようかなって思った。
  
  便利と孤独って表裏一体なのかもなー。

  Posted by ブクログ
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  THE LONELY CENTURY　なぜ私たちは「孤独」なのか

  ノリーナ・ハーツ / 藤原朝子

  孤独が様々な問題の起点にあることがわかる本。
  色々な問題に手をつけるよりも、孤独の問題にフォーカスした方がかえって早いかもしれないと感じた？

  Posted by ブクログ
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  THE LONELY CENTURY　なぜ私たちは「孤独」なのか

  ノリーナ・ハーツ / 藤原朝子

  孤独は一時的な感情ではなく、深刻な現代病である。だからこそ人は人とのつながりを求めてやまない。
  そしてテクノロジーは毒にも薬にもなるが、今のところ毒の部分が大きい。SNSはいいね(と広告収入)を稼ぐために分断を煽る発言を推奨させる。
  IoTは生産性向上のために従業員を監視する。
  AIは人に寄り添った...続きを読むコミュニケーションを取ってくれるが、AIに慣れると相手を慮る対人能力は失われていく。
  
  本書を読んでいてだいぶ昔に読んだラノベを思い出した。
  高度に発展した文明があったけれども、人は自分の都合のいいメタバースを作ってそこに引きこもってしまい、お互いを思いやることがなくなった。
  それを気に病んだ技術者がお互いの世界をつないでコミュニケーションを取るアンテナを発明した。
  結果、アンテナでつながった人は拒絶反応によって脳を破壊され、文明は滅びてしまった。
  現代もそうなりそうな予感。

  Posted by ブクログ
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  THE LONELY CENTURY　なぜ私たちは「孤独」なのか

  ノリーナ・ハーツ / 藤原朝子

  日米のロボットの捉え方。日本では肯定的、米国では悪役。
  ランチの取り方。大勢からデスクで1人。
  など、時代が1人の世界に変化している。
  しかし、人に寄り添うことも大事だともこの著書では言っている。

  Posted by ブクログ

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