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個人への少額の融資を行ってきたサラ金や消費者金融は、多くのテレビCMや屋外看板で広く知られる。戦前の素人高利貸から質屋、団地金融などを経て変化した業界は、経済成長や金融技術の革新で躍進した。だが、バブル崩壊後、多重債務者や苛烈な取り立てによる社会問題化に追い詰められていく。本書は、この一世紀に及ぶ軌跡を追う。家計やジェンダーなど多様な視点から、知られざる日本経済史を描く意欲作。
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Posted by ブクログ
消費者に対する金融は大手の金融機関は昔は軽視していたので、信用力のない個人は身内などから入用の時は金銭を調達していた。そして戦後、個人間金融からサラリーマンという安定した月給を稼げる人を対象とした金融サービスが登場することになる。 業者は何を目安に与信を与えたかというと、当時ステータスのあった公団...続きを読む住宅に住んでいるという事実であった。この着眼点は慧眼であると言え、この団地金融から上場企業に勤める会社員、そしてあらゆる層に無担保で貸し付けるサラリーマン金融の発展していく萌芽となっていく。 サラ金業者が伝統的な金融機関とは別に独自の発展をとげられた理由は、外資規制と政府が企業融資を重視したため従来の銀行が個人融資に熱心ではなかったこと、そしてグレーゾーン金利の存在により法外とも言える大きな利益を得られたことにある。 様々な層からの資金需要により繁栄を謳歌した消費者金融だが、無担保故の高利率、命を最悪奪ってしまうような過酷な取り立てによる世間の批判から、政府も様々な対策を講じた結果、自分たちの資本だけでは事業が継続が困難になる機会に見舞われた。そして組織の生き残りを図るため、伝統的な商業金融機関に段階を経て組み込まれ現在に至るのだ。 結局アウトサイダー的な存在から、日本の伝統的な経済システムに組み込まれた過程を読んでいくと、世論を巧みに利用した行政の熟練の手腕を何となく感じる。成熟した産業に見られる、創業時のダイナミックさというのは無くなっていく中でも消費者金融は蓄積し洗練された与信技術、債権回収業務を通じて堅実な発展を遂げていくのだろうと思う。 そもそも消費者金融機関というのは、当時の政府の方針など、外的な条件が発展するためにちょうどよく、隙間産業的に産まれた産業だと読んでいて感じた。その条件が徐々に国家によって規制もしくは規制緩和によって無くなって行ったら、苛烈な競争を戦い抜くために高いレバレッジを利かした新興の消費者金融はたちまち経営が苦しくなる。そのためこの消費者金融の隙間産業性は日本の支配構造に取り込まれて行くのも必然だったのだろうとも思う。別にその支配が悪であると糾弾している訳では無いが。
プロミスやアイフル、レイクなど、普段何処かで見聞きする所謂サラリーマン金融業者。そのルーツや盛衰について、貸す側、借りる側の両面を、戦前から現代までを整理、解説した良書。
サラ金の歴史が時系列で説明されているだけでなく、その盛衰を経済、経営学の知見を交えて分かりやすく解説されている。サラ金のブラックな部分も交えながらも、極めて中立に解説されている良著でした。
不肖、自慢ではないが20代の頃にがっつりアコムとモビット、銀行カードローンにリボ払いに質入を重用し、口座やカードを凍結されながらも辛々生き延びた体験を持つ私にとって実に思う所のある新書。 オビの問いかけについて、私にとっては紛う事なく「セイフティネット」であったと断言出来る。返済遅れた時の電話は怖か...続きを読むったけど、基本電話が鳴らない私には電話が鳴る事がちょっぴりだけど嬉しかったしまあまあの延滞っぷりだったからそりゃ怒りますよね。あの時に伴走してくれたのは家族でも会社でもなく担当窓口のお兄さんでした。いや、向こうは仕事だから仕方なくかもしれませんが。その節は誠に申し訳ございませんでした…。 内容としては(恐らく)他に類を見ない’日本サラ金史の総ざらい’と呼ぶにふさわしく、サラ金が「サラ金」として完成するまでの素人高利貸〜団地金融〜サラ金旭日期〜サラ金斜陽期〜日本の低成長とこれから、という各タームを日本社会史や家族史・政治史など実に多面から分析・研究した一冊。 「年利七万三〇〇〇%」(p267)という俄には信じ難い事例にはため息しか出ません。アコムの「らららむじんくん」や武富士の「シンクロナイズド・ラブ」をBGMに女性達が激しく踊るCMやアイフルの「くぅちゃん」レイクの緑の恐竜などなど、2000年代一桁の頃はお茶の間ゴールデンタイムにサラ金が実に身近なものでした。特に武富士はバラエティ番組でパロディコントまで放送されてましたね。「ザ・センターマン」って懐かしい。道端に「車でお金」とかの看板も実に沢山ありました。 という、妙なノスタルジーをくすぐりつつも真剣そのものにサラ金史をひらいた本書。ジャンルとしては大変ニッチかも知れないが実に読み応えある読書でした。 お金は大事だよ〜。ル〜ルル〜。(これはAFLAC) 1刷 2023.5.22
さすが新書大賞。日本独自のサラ金の歴史を多角的に描いた傑作。 戦前の素人高利貸に始まり月賦、団地金融からサラリーマン金融そして消費者金融へ。貸金業法の規制もあるがサラ金の大手の攻防が三国志的に楽しめる。 武富士、アコム、レイク、プロミス。 今は銀行の傘下が基本。カードローンにも押されている。 ...続きを読む 時にサラ金がセイフティーネットの役割を果たしてきたという指摘も興味深い。 学問の奥深さを教えてくれる一冊。
第43回サントリー学芸賞受賞作品。そして、日本経済史の若き俊才による傑作。 まずサラ金の歴史を狭い意味でのサラリーマン金融各社の歴史で終わらせず、きちんと戦前期の「素人高利貸」の話から説き起こしている点は素晴らしい。史料的に一番大変な時期だったのではないかと思うが、サラリーマン向けの利殖マニュアル...続きを読む本の類まできちんと追っている。著者が図P-1で示しているように「家計」を預金者という視点からだけではなく、資金の借り手として位置付けることは言うほどに簡単なことではないのである。 また家計=個人として捉えるのではなく、家計内構造をジェンダーの視点からきちんと把握しようとしている点が素晴らしい。家政学や開発経済学などでも単純で均一な主体としての家計モデルは批判されており、A.センも複雑な家計の構造を「協力を志向する対立」と捉えているが、本書はそうしたジェンダー視点を十分に取り込むことに成功している。 また広い意味での金融技術の「革新」もサラ金各社の経営実態を明らかにする際に必要な視点であるばかりではなく、日本のマイクロファイナンスの発展史としても読めて非常に面白かった。 「まえがき」で述べられている「その画角の広がりは、金融技術だけに留まらず、人びとの働き方や消費のあり方、家族関係やジェンダーといった、過去を生きた一人ひとりの身近な労働と生活の世界をも捉える」との言は、全体を通読して確信されるものとなっているだろう。
1980年代、街を歩いていると必ず「サラ金」が目に止まりました。それは店であったり、看板であったり、吊り広告であったり。また、当時は大量の販促用ポケットティッシュが街頭で配られ、ポケットティッシュはそれだけで十分でした。 サラ金は主に個人への少額の融資を行なってきました。戦前の素人高利貸から質屋、団...続きを読む地金融などを経て変化したサラ金は、経済成長や金融技術革新で躍進。そして、バブル崩壊後、多重債務者や苛烈な取り立てにより社会問題となってゆきます。 本書は1世紀におよぶ「サラ金」の軌跡を追う力作。2021年新書大賞受賞の名に恥じない中公新書の大傑作です。 「本書は、サラ金業者の非人道性を告発・暴露するというより、その経済的・経営的な合理性を、あくまでも内在的に理解しようと努めてきた。いかに強欲で異常に見えても、人間の経済的な営みである以上、その行動はある程度までは合理的に説明できるはずである。それが本書の基本的な立場だった」とあるように善悪の感情を切り離してサラ金を観察しています。 サラ金の起源は戦前の「素人高利貸し」。金を貸すことが義侠心を誇ることであり、男らしさの具現化の時代でした。そして戦後になり、「アコムやプロミスなどのサラ金は、『家族の戦後体制』に寄り添いながら大きく成長した。『サラ金』という独特な消費者金融の呼称は、サラリーマンである夫とその妻という、家族とジェンダー(性差)の視点の重要性を示唆している」。 妻から見たサラ金、サラリーマンである夫から見たサラ金、妻に金を貸すサラ金側の理屈、サラリーマンに金を貸すサラ金側の理屈、他社との競争、金利の低下、社会からの風当たり、貸倒や借り手の自己破産の増加、逆風の法改正の中で喘ぎながら、独特の金融技術で生き残りを図ってゆくサラ金の盛衰記は一篇の大河小説のようで読み応えがあります。 本書は事実に対していちいち引用元を記しています。例えば「相談者は1人平均で10枚のカードを持ち(『朝日』1990年5月13日朝刊)」のように。また、引用文献一覧、略年表も充実していて、資料としての価値も高いと思います。 著者の小島庸平さんは東大大学院経済学研究科准教授。40歳になるかならないかの年齢で、こんな真面目で面白い本が書けるということに驚きます。 新書では珍しい一気読みできる本。これだけの本が1,078円で買えるなら買わない手はありません。
終章とその直前が素晴らしい。 金銭を借りる需要。 返してくれそうもないところには高い金利で、そうでないところには安い金利で貸す。 ということになるだろうし、金利に制限をつければ、金を借りられなくなる時期が早くなり,そこで自力による社会生活ができなくなる。 それでもなお、足掻きたい向きには、法律の枠...続きを読むから外れた世界で、後一もがきする、ということになる。そこから先は、アンダーグラウンドの世界であり、何がどうなったかは分からないけれども。 単にそれだけのことなのに、利率を何故法規制するのか。 そこらへんのことが、ずっともやもやしていた。 p294で「そもそも新古典派の経済学は、自由であるべき市場に介入する規制は、独占や寡占などの『市場の失敗』が存在しない限り、否定されてきた。(中略) 一方近年めざましく研究が進んだ行動経済学は、人間が常に合理的な選択を行うわけではないという『限定合理性』を前提に、直近の借入であれば高い金利でもよいと考える『現在バイアス』や(中略)の存在を明らかにしている。行動経済学者たちは、金利規制に慎重な立場を維持しながらも、限定合理性に起因する債務過剰を予防するために、政策的介入の必要性を考慮に入れている。」とする一方、改正貸金業法の完全施行によって、特殊詐欺の増加や、ITを活用した「個人間金融の復活」にも目配りしている。 また、「高利貸と民族問題」の項では、憎悪や差別との関係にも、射程を広げようとしている。 この著書で、その分析が充分になされているとまでは、思わないが、「サラ金問題」と他の社会問題の根っこの繋がりを意識することができた。 著者のこれからの活躍を期待したい。
フラットに、シンプルに、分かりやすくサラ金の歴史が叙述されています。 そこまで長い本ではないですが、ビックリするほどの充実した情報量です。 サラ金についての知識を得るためのスタンダードな一冊であると思います。
戦前から今日に至るサラ金の歴史の本。 ①歴史的変遷 戦前は個人間貸借でも有利子。貧民窟での顔しれた関係での日掛けの貸出や、サラリーマンの副業としての同僚への貸出から始まった。 戦後の中間層の消費意欲向上(三種の神器等)もあり、団地金融が登場。逞しい営業力の反面高コストだった。そして、繁華街で遊...続きを読むぶサラリーマンのレジャー資金としてサラ金が登場。当時の情意考課で遊ぶ人ほど仕事熱心、出世すると考えられていた。当初は上場企業のサラリーマンのみだったが、規模拡大のため顧客層拡大(勤め先不問、女性も)、無人化やリストラによる人件費削減、現在に至る。 ②審査基準・債権保全 ・(グラミン銀行…借り手同士で5人組を作り、返済に対して連帯責任を負う) ・戦前の貧民窟の日掛け…毎日会う顔知れた関係、貸した人が責任を負う形態 ・団地金融…URの入居基準、出前による室内の調査(新しい家電有無、整然さ等) ・サラ金各社…優良企業の勤め人のレジャー資金に限定する、連帯保証人を2人取る、電話番号案内による実在確認、自動与信システム開発、不動産担保ローン、団信(但しモラルハザードや逆選択孕む)、個人信用情報 ③その他豆知識 ・武富士の社長はなかなか凄い。えぐ…。 ・サラ金のポケットティッシュ配布開始は、女性を顧客層に含める営業方針に変わったのと同じ頃。 ・貸す時の地蔵、返す時の閻魔(営業担当は女性、債権回収はおじさんが多かった) ⑤気づき ・各社時代に応じて、審査基準の的確さと簡素化のバランス、債権保全、或いはそれを意識した故の顧客層や資金使途の特定に工夫が見られた。 ・攻めの姿勢を貫く故、顧客層拡大に伴い債権の質の悪化を招き、オイルショックやバブル崩壊等景気停滞のたびに貸倒を計上し、経営悪化に繋がった。人件費削減等により経営体質改善に努めていた。 ・過酷な債権回収により自殺者増加、社会問題となることで世間の批判を浴び、金融機関からの融資が受けられず、法改正による規制の強化を受けた。儲けられる時期があっても世間からの評価が悪化すれば支援が受けられなくなる可能性がある。 結構楽しかったです。
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