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米大統領選の混乱は、アメリカの衰退の象徴である。世界は明らかに混沌に向かっており、この流れは不可逆的と言わざるを得ない。「世界の力の均衡点はアジアに移行しつつある」「アメリカ・ファーストは不変である」「中国の国際機関支配は止まらない」「北朝鮮の核開発は着実に進む」「米・イランの神経戦は続く」――。国際情勢分析の第一人者が、20の観点(アングル)から2021年以後の世界を読み解く。
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Posted by ブクログ
米国と中国の新冷戦、ポピュリストの台頭、新型コロナパンデミック後に起こること…。パラダイム・シフトを迎えた世界の今と、これからを読み解く書籍。 現在、経済・政治・外交の中心が、米欧からアジアにシフトする「イースタニゼーション」(東洋化)が進行している。米国は中国の影響力拡大を懸念し、「インド・太平...続きを読む洋地域」で同盟国などとのネットワーク形成を進めている。 米国は、建国から第2次世界大戦前まで「孤立主義」を外交の基調とした。 トランプ政権が掲げた「アメリカ・ファースト」も、この伝統に沿うものだ。よって、バイデン政権になっても、トランプ以前の米国に戻ると楽観すべきではない。 2016年の米大統領選挙のトランプブームは、イギリスのブレグジット(EU離脱)をはじめ、世界のポピュリスト運動と共鳴した。ポピュリズムの元祖は米国にあり、過去、大恐慌などの不況時に勃興した。新型コロナによる不況が深刻化すれば、ポピュリズムが受け入れられる余地がでてくる。 新型コロナのパンデミック後、国際問題は先鋭化する。 例えば、中国やロシアは感染被害と経済悪化による不満から国民の目をそらすため、強硬姿勢を強める可能性が高い。その結果、コロナ後の世界では、米国と中ロとの対立が強まるだろう。 米国の対中政策は、1972年までは、冷戦における対共産圏「封じ込め」というパラダイム(枠組み)の中にあったが、以降は「協調的な関与パラダイム」の中で展開された。そして、中国の経済的・軍事的台頭が米国にとって脅威になった現在、米国の対中姿勢は、新冷戦下における「対抗的な関与パラダイム」に変化したと考えられる。
とにかく、日本は一歩も二歩も遅れていること。このままいけば、未来は決して明るくないことがひしひしと感じられる。
2021年は米国政権がトランプからバイデンへと移行することにより、米中関係、エネルギー、コロナや経済対策といった分野でこれまでとは違った流れができる可能性がありますが、本書では個別テーマについて明快に整理されています。 米国が「ハブアンドスポーク」という2国間関係重視から地域ネットワーク重視の政策...続きを読むへの転換を図っていることの背景には、増大する経済と軍事力を背景に、アジア地域の盟主を目指す中国に地域周辺国の連携と強調することにより対応しようとしていることや、同盟国である日本の推進する「自由で開かれたインド太平洋構想」の位置づけが、その政策上重要性を持っている事情。一方、中国が経済協力、援助を背景にアジアのみならず、アフリカや南米でも影響を拡大している事実に、今後の世界規模での米中関係の緊張化が強調されています。大国同士がいずれ対立する運命にあることを予言したいわゆる「トウキディデスの罠」が現実化する勢いです。米国は中国との緊密な経済関係もある一方で、Partial Disengagementによりその優位性を牽制し、米国の軍事、経済上の優位性を確保しようとしていると筆者は言います。 他にもロシアのウクライナ侵攻が、「ハイブリッド戦争」と言われていることや、インドの非同盟路線、中国全人代による香港国家安全維持法の制定、全米有権者の22%を占める米国の福音主義者(エヴァンジェリカル、主として共和党を支持する)の重要性とイスラエルのエルサレム問題の関係、そして対イランで合致するイスラエルとアラブ諸国の利害、など、2021年初めにおける国際情勢を俯瞰するテーマが簡潔にまとめられ興味深く読みました。
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2021年以後の世界秩序―国際情勢を読む20のアングル―(新潮新書)
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渡部恒雄
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