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私たちは歴史の「どこ」に注目し、未来に「なに」を考えるべきか。技術が人を超える時代に必要な「知恵」とは。史上最高の歴史書が記す「文字」「心」「法」「文化」という「4つの起源」に学ぶ。古典を熟知する能楽師が、日本トップクラスの進学校・開成高校の生徒たちにいま伝えたいことを、『史記』の全体像とともに学ぶ1冊。
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Posted by ブクログ
能楽師の安田登さんが開成高校の生徒に特別授業をされた内容です だからとってもわかりやすくておもしろい!! . . 「史記」を通して、歴史の中で思考の概念が生まれる過程がわかるということが驚きの視点でした。 文字が生まれる瞬間、心や時間の概念生まれる瞬間、法が生まれる瞬間、全て「史記」から見えてくるん...続きを読むです 無いものが生まれる瞬間。 文字がない時代の人たちは、文字がある世界なんて想像もつかなかったでしょう。 ということはこれからの時代を生きる私たちが今までにない概念を生み出すかもしれないということ。 そのために歴史やいろんなことを学んでたくさん考えることの大切さがわかりました。 ぜひ若い人たちに伝えたいです
中国史を少しずつ齧るにつれ、避けて通れないと感じるのが司馬遷の「史記」である どうしても敬遠してしまうのだが、でも気になる気になる… 少しだけこの世界を覗いてみたい… そんな自分に天からの思し召し 能楽師の安田登氏が解説 何度も目からうろこを落としてしまった「異界を旅する能」以来だ とて...続きを読むも楽しみである 司馬遷の「史記」は三皇五帝と呼ばれる古代の伝説の王の時代〜前漢まで 2500年以上の歴史が描かれる 歴史書には、一般的な出来事を時系列に書く「編年体」と人物を中心に書く「紀伝体」がある 司馬遷はこの「紀伝体」で描くことによって、直線的な歴史ではなく、歴史に物語が生まれ、たくさんの人間の活動の積み重ね…として描いている (学校の歴史より、歴史小説が楽しいのは当然ですね) 安田氏の着目点はシンギュラリティ(特異点) 「シンギュラティ」とは…少しずつ変化してきたことが、ある時点を境に劇的に変化する、その変化の一点をいう 古代中国はシンギュラリティを体験しているという 一番大きなものは「文字の発明」だ 文字によって脳を外在化できるように 脳に余裕が生まれる 余裕が生まれたことで「知」という新たな精神活動が生まれた (これは自分も体験した 厚かましのは承知の上で…記憶力がとてもよかったワタクシ が、思慮深さがまったく足りず、この記憶力をふんだんに使うことに特化してしまったのだ わかりやすく言えば試験の一夜漬け的なこと 全て「覚える」という行為で人生の半数を乗り切ってしまった 人生において起きたいくつかの出来事と環境により記憶や記録をPCやスマホにお任せし、脳の容量を「考える」行為に移行したら… あら~人生が激変、今まで何気なく通過してきた物事がまったく違うように見えてくるではないか! これが今思えばワタクシの人生の「シンギュラリティ」である) 各時代のシンギュラリティ ・殷…文字の誕生 ・周…心と論理の誕生 ・奏…法の完成 ・漢…中華文化の成立 ■周 心ができた(どういうこと⁉︎) 農業を完成させた周の時代 農業をする人は、地を耕して、そして種をまく さらに水をやったりして、収穫の時まで待たなければならない つまり先のことを考えなければならない また実りがあると信じなければならない 未来を知る力が「心」 心と論理が出現したことにより、周の時代は神、占い、生贄ではなく、自分たち自身でなんとかできるということが見えた時代 (「心」ができたとはさすが安田氏 歴史に風流さが吹き込まれたようだ) ■秦 例外なく適用する「法」の誕生 ちなみに日本で法の適用に例外認めないことが運用されるのは鎌倉時代の「御成敗式目」 秦といえば始皇帝 残虐な王である一方、国を統一したあとは戦争をやめた また文化政策や、先ほどの法を定める… 司馬遷は始皇帝の良い面、悪い面をきちんと書いた また法を職権乱用した趙高 法を改め李斯を排除 法の恐ろしさも浮き彫りに (いつの時代もこういう輩が必ず居ますな) ■漢 「項羽と劉邦」(大好きである) 劉邦は普通の家系の人が王になったという中国史上初のパターン 劉邦は家の仕事は何もせず、酒と色を好む、ただ度量が大きかった 一方項羽は代々将軍を努める名家の家系 戦闘能力に優れていた 初めて始皇帝を見た時の二人の様子 劉邦→「男子たるものは、まさにこのようにならなくてはいけない」嘆息した 項羽→「あいつに取って代わってやる!」 これが紀伝体の醍醐味 さらに安田氏に言わせると、現代なら、さらにハイパーリンクを貼って、同じ出来事に対しての各人の思いや考え、行動に飛ぶことができよう 司馬遷はハイパーテキスト構想的な思考を持っていた(ワォ、なるほど!) さらに二人の比較は続き、劉邦が勝ち残った理由はいかに…と締めくくる 項羽→敵を容赦なく皆殺しに 劉邦→出来るだけ戦いを避け、秦の圧政に苦しめられてきた人を味方につける作戦 さらには優秀な部下に恵まれ、彼らが劉邦を助けた 劉邦は良いプレイヤーではなく良いプロデューサー (劉邦の情け深さに多くの人がついていった 劉邦のためなら…と命をかけた熱い男たちの物語がたまらないのだ) 司馬遷について 中島敦の「李陵」からも読み解かれる 李陵を弁護したことにより武帝の怒りに触れ、宮刑を受け入れ、屈辱的に生きる 人から蔑まれ、理不尽な体制に対する怒り、天に対する疑問… そんなものを腹に抱え、「史記」を完成させた 凄まじいエネルギーである まさに血肉を投入した偉業である 最後に安田氏からのメッセージ(かな?) 「温故知新」…故(ふる)きを温め、新しきを知る 実は孔子の意見はちょっと違うという 正しくは「温故而知新」 而…時間の経過を示すもの ここから、既存の知識を鍋でぐつぐつ煮込んでいると、今まで誰も考えつかなかったような新たな切断面、すなわち新たな知見、新たな方法が突如として現れる そのプロセスそのものが「知」と言う精神活動 勉強していて、最初はぜんぜんわからないけれど、しばらく続けているとある瞬間に突然わかるようになる スポーツや楽器の練習も然り 古典を読んで発酵させてみよう 誰も考えつかなかったようや新しい何かが突如現れるかも… (これはやったことある人間にしかわからない 日々これでいいのか、モヤモヤしながらもとにかく切磋琢磨する… 同じことの繰り返しが間違っているのでは? そう思いながらももがき苦しみ考え抜くと… あるとき突然光が差し込む、体が雷に打たれたようになる… こんな体験をしてしまうともうやめられないのだ!) 能楽師である安田氏だが、ただの能楽師ではないのである コンピューターグラフィックスの本を書いた実績、プレステゲームのプロデュース 理化学研究所の「AI文化研究会」… 今回史記を知るつもりが、安田哲学までオマケで付いてきた! なんという贅沢でしょう! うーん 歴史なのに心に沁みたわ〜
史記に何が書いてあって、どんな示唆があるのか考えたこともなかった。殷や周の時代も含めて新しい知識を得られて満足。 それぞれの時代で何が前と違うか、何が新しい概念として出てきたかも分かる。 知的好奇心をそそってくれた。
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別冊NHK100分de名著 読書の学校 安田登 特別授業『史記』
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