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2016年7月に神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた殺傷事件。死傷者45人を出した平成最悪の事件はなぜ起きたのか。20年1月から始まり、3月に死刑判決が言い渡され確定した裁判で明らかとなる、加害者の実像に迫る。
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Posted by ブクログ
19人を殺害したという行動は明らかに異常だが、その背景となった障害者への差別意識というのは、可能性として誰でも持ちうるもの、社会に確実に潜んでいるものなのではないか、という巻末まとめが本書の肝だと感じた。 生産性のみを人間存在の価値の基準とし、生産活動すなわち労働ができない重度障害者は価値が低い、...続きを読むもしくは無い。 生産性が低いイコール仕事ができない、とすると、最近増えているという「職場いじめ」に通底するものを感じる。
事件の詳細、事件後の面会や裁判でのやり取りの記録をまとめたルポルタージュです。 この事件が示唆する問題について話し合えることはたくさんあるはずなのに、ずっと上滑りしている印象でした。植松死刑囚の考えが既に完結していること、この問題へは踏み込みづらいこと、遺族側がその立場からしか話さないこと、要因は様...続きを読む々です。植松死刑囚の認知の歪みや不確実な部分への想像力の欠如を解き明かしていけば、もう少し掘り下げることができたのかなと思います。 個人的に、明かされた動機よりも彼を突き動かしていたのは自己実現欲求だと思いました。自己実現のためなら正直なんでも良かったんだと思います。人生に価値を付与するための役割を欲し、そこにピースとしての障害者への差別意識が混ざり込んで、事件を起こした。死刑への抵抗感が薄いことからも、生きてることへの実感に飢えていて、とにかく何かを成し遂げた人になりたかったのかなと感じました。
先ずは、このような形で、記録を手にとって読めるようにしてくれたことに敬意を表したい。 しかし、同時に読めば読むほど、この事件がなぜ起きたのか、植松死刑囚という人物がどのように形成されていったのか、疑問だけが残った。 気になるのは、両親の存在。 柳田邦夫氏が「いのち」は生物学的な面だけではなく、『つな...続きを読むがるいのち』という視点が重要だ、と言っていたのが印象的だった。この事件は『いのち」の意味について私たちに問うている。
沢山の取材を重ねてこの本を作ってくれた人たちには星5なんだけど、あまりにも犯人の動機に同情できなかった……。 犯人の家庭環境や幼少期のトラウマのようなものが、歪んだ思想を生み出してしまったと思っていたんだけど、そのような影響を感じられないのがめちゃくちゃ怖かった。犯人は自身の信じる「かっこよさ」に捉...続きを読むわれていきすぎた優生思想になっていると 感じたが、この思想は何をきっかけに生じたものなのだろうか…。 こういう本を読んでいると、育ってきた環境があまりにも辛くて犯人に同情してしまう部分もあるのだが(もちろん犯罪はだめだけど)、ここまで犯人に感情移入できなかったのは初めて。 被害者遺族への取材部分は読んでいて辛かった。殺されてしまった人たちが、障害の有無に関係なく家族に本当に愛されていたことが伝わってきた。 犯人には1ミリも同意できなかったけど、読んでるだけで辛い裁判を記事にして、犯人や被害者遺族に取材してくれた筆者ありがとうございます…という気持ち
ある種のマキャベリストか何かだろうかと感じた。私自身も障がい者なので、たしかに世の中のお荷物だと思う瞬間は多々ある。社会福祉に使う予算を考えれば、私は金食い虫の部類だとも。 人間の倫理が問われる一冊でした。果たして私はどちら側に属しているのか気になりました。
他の大量殺人者などは、家族との関係などが語られるが、家族の話題が全くといっていいほど出てこないのが奇妙だった。自分が思う「カッコよさ」にこだわる被告。ただ単に「自分に都合がいいことだけを見ている人」にしか見えなかった。そしてそれは、大なり小なり誰しも持つものだとも思った。 そして「日本は大麻合法だ...続きを読むっけ?」と思うくらい、大麻が当たり前に語られていたのが驚いた。友達も恋人も親も、なぜ通報しなかったのかしら? 大麻が被告の優生思想をブーストさせていた、と思うのだけど…。
結局事件の本質に近づけなかった裁判。遺族のやりきれない思いは悔やまれて仕方ないが、施設は事件に負けず、建て替えて再起を図るとのこと。それを知って心静かに応援したい。
その事件は2016年7月26日未明に一人の青年が、津久井やまゆり園に刃物等を所持し侵入して、死亡者19名、重軽傷者26名もの戦後最多の殺傷事件を犯した。青年は、元施設職員の植松聖(30)という。同日午前三時過ぎ、津久井警察に自首し逮捕された。 彼は小学生の頃、一学年下に一人ずつ知的障害者がおり、...続きを読む低学年の時には作文に「障害者はいらない」と記述していた。 大学の3・4年生ごろ刺青を入れ大麻など薬物を乱用するようになった。 2016年2月16日、襲撃を示唆する手紙を当時の衆議院議長公邸に提出した。事を重く見た当議長は警察に通報し、身柄を拘束され措置入院をすることになった。 手紙には何を書かれていたのか?要約すると『私は障害者総勢470名を抹殺することが出来ます(中略)保護者の疲れ切った表情、施設で働いている生気の欠けた瞳、日本国と世界の為と思い、居ても立ってもいられずに本日行動に移した次第であります。私の目標は重複障害者の方が家庭の生活、及び社会的活動が極めて困難な場合、保護者の同意を得て安楽死できる世界です。要望―逮捕後の監禁は最長2年までとし、その後は自由に人生を送らせてください。美容整形による一般社会への擬態。金銭的支援5億円。』(意味不明!)通報は適切な対処だと思うが、措置入院から解放された同日、医師の証明書をハローワークに提出し、失業給付を受領し、生活保護受給を申請し給付を受けた。☆ 2020年1月8日に初公判。裁判中の模様や、裁判前に記者が被告と面会し、遺族や被害者の口頭陳述で犯行を非難したが、被告の様子に違和感を覚えていた。 被告が遺族等に対し、謝罪しているが、亡くなった方には、代理弁護士と論争を繰り広げ、被告の論理が破綻しても謝罪には至らず結審した。判決は2020年3月16日死刑宣告、控訴期限は2週間、3月31日死刑確定。 最後に、僕自身の違和感についてー被告人と代理弁護士の論争の争点が被告人の主張と一致していない。本当の争点は、彼等(重複・重度障害者)が人かということ。被告人は、意思疎通が出来ない人は、人間ではないと言っている。
朝日新聞取材班による被告への取材、裁判での証言、判決までを追ったルポ。このような事件についての書物は、被告の生い立ちの問題などを丁寧に取材するイメージで読み始めたのだが、実際には同じ内容の反復で被告のイメージはどこまでも空虚。事件後、判決を経て最後の接見を行うまでを見ても、どこまでも被告の主張は首...続きを読む尾一貫している。「かっこいい」ことが全てで、今の自分にできる、世の中を良くするための最善の手段が障害者を安楽死させることであると盲信する姿に、もちろん共感はしないし身勝手な印象を持つが、これこそ「悪の凡庸」の典型にも思える。 人物像も事件の動機も、どうにも薄っぺらく凡庸である印象しか持てない。過去に、多くの社会的事件が映画化されていることから考えると、これほどまでに映画化に向かない事件はないかもしれない。しかし、これこそまさに表層に漂う時代の空気を切り取っている事件なのかもしれない、と思った。 情報に簡単にアクセスできる時代には、内面に葛藤がなくとも、自分の信念はいくらでも強化できる、そのような情報のみを取捨選択すれば良いのだから。だからこそ、裁判において事件の背景を丹念に掘り起こしていく作業と時間に耐えられなかったのかもしれない。「自分は社会に問題提起をし、自分の起こした事件が世間を覆う偽善にメスを入れ、自分は一部で英雄視される」という自己愛に満たされて彼は死刑台に立つのかもしれない、と思うと、やはり日本の裁判員裁判というのは、裁判をわかりやすくすることはあっても、その効率化によって裁判から失われたものもあるのかもしれないな、と思ったりもした。 奇しくも、医師による自殺幇助の事件が起きた。相模原事件の被告の偏った価値観は、今や日本の一部の医療関係者の間でも共有されているのかもしれない。立岩真也さんが書いていたように、そのような歪んだ価値観を持つに至るような日本の医療制度・福祉制度のシステムとしての問題点がきちんと提起され、議論される世の中になることを切に願う。
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相模原障害者殺傷事件
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