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北町奉行が異例の若さで定廻り同心に抜擢したのは、萬七蔵、三十五歳。袖の下を使った出世だと噂が広がる中、深川の貸元が何者かに殺害される。あと一歩まで下手人を追い詰める七蔵だったが――。まだ夜叉萬と呼ばれる前の七蔵が取り逃がした凶悪な男と再び対決。侍の世の不条理と、敵への憐憫と、人の心に巣くう何かをも斬る。夜叉萬の始末が胸を抉る傑作小説。
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Posted by ブクログ 2020年06月18日
北町奉行が異例の若さで定廻り同心に抜擢したのは、萬七蔵、三十五歳。袖の下を使った出世だと噂が広がる中、深川の貸元が何者かに殺害される。あと一歩まで下手人を追い詰める七蔵だったが――。まだ夜叉萬と呼ばれる前の七蔵が取り逃がした凶悪な男と再び対決。侍の世の不条理と、敵への憐憫と、人の心に巣くう何かをも斬...続きを読むる。夜叉萬の始末が胸を抉る傑作小説。 令和2年6月16日~18日
凶悪事件を起こした若侍
北町奉行所勤めの萬七蔵が、定町廻り同心になったばかりの頃に起きた事件の話しである。 深川近くの洲崎の土手道で男の首切り死体が見つかった。死体は深川界隈の賭場を取り仕切る貸元岩之介で、懐を狙った辻斬り強盗だった。 七蔵がこの事件を担当したのだが、被害者の関係者の聞き込みに時間を取られて、一向に下手人を...続きを読む捕まえられなかった。その後しばらくして、和菓子屋の番頭羽左衛門が首を斬り落とされて懐の紙入れが盗まれる、という同様の事件が起きた。 七蔵の探索では同じ人物、田島享之介がしばしば浮かんだ。享之介は北町奉行所年番方与力、殿山竜太郎の奉公人だった。享之介は、表向きは礼儀正しい物静かな若い侍である。同じ侍の七蔵は享之介を疑惑の目で見られなかった。 しかし、享之介は裏では賭場通いなど素行が悪い。深川の賭場で遊んでいた時賭場の取り締まりに遭遇し、その際、お金を使って見逃して貰った。 しかしながら、その時の同心が主の殿山に告げ口をして、主から享之介は厳しく叱られ切腹を宣告された。その場で享之介は主の殿山と内儀を斬って殺し、逃げる途中で告げ口した同心の首も刎ねた。享之介は、箱崎から舟を使って逃走し、行方不明になり、事件は未解決になってしまった。七蔵のちょっとした見過ごしが大失態を起こしたのであった。 奉行所は直ぐに御触書を各地に出したが成果がなかった。 それから7年が過ぎて、七蔵はお役替えで隠密同心として奉行所に務めている。奉行所の与力、山木大三郎が奉行所の大失態の無念をしたためて、せめて八州の本陣屋、出張陣屋の元締め宛に享之介捕縛に協力を願う書状を送っていた。成果は直ぐに出て、上野国群馬郡の岩鼻の手代がそれに応えて知らせをよこした。 それによると、享之介らしき人物は三一凶之介を名乗る侠客らしいことが分かった。 早速、七蔵らは上州に享之介捕縛に向かった。しかし享之介は七蔵らに執拗な抵抗を見せて、捕縛は困難になり剣術での決着となってしまった。七蔵の手下のタイミングのよい助けに支えられて、七蔵がかろうじて享之介を倒したのだった。 「享之介は、自分の生い立ちと境遇の中で、子供の頃から怒りをずっと腹の中に溜めて生きてきた。それがある時、自分の腹の底からこみ上げる怒りを抑えられなくなった・・・」と言う七蔵の言葉に強く印象を受けた物語である。成長しきれない未熟な大人が犯した凶悪事件である。
#怖い
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夜叉萬同心 風雪挽歌
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辻堂魁
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