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妻・唯を殺害した罪で服役後、37歳の吉川森二は他人との交流を拒み孤独に生きることを決めた。何より大切だった唯とその兄の圭介との絆は失われ、一人娘の冬香からも激しく糾弾される森二を、新たな試練が次々と見舞う。オブリヴィオン=忘却と赦し。赦されざる罪を犯した男に、救済は訪れるのか。闇の中でもがき生きる人間の痛みと希望を描く、傑作長編。
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Posted by ブクログ
とても重々しい気持ちで読み切った。傷ついた人との接し方。人なんてどんな傷を背負っているかわからない。やり直しの効かない人生なんてない。
始めはすごく冷たい印象の小説だったが、読み終わったときは温かい気持ちになった。 全部がハッピーエンドではなかったが、それが心地よかった。 遠田さんの本を読むのは初めてだったが、迫力のある文章だと思った。 森ニの一人称で話が進んでいくため、彼の過去や現在の感情の動きにとても引き込まれた。 登場人物が...続きを読む皆、自分の過去と戦うとてもよい小説だと思った。
吉川森二37歳は妻の唯を誤って殺してしまい、六年間服役して出所しました。 堀の外では実兄の吉川光一42歳と義兄の長嶺圭介47歳が待っていました。 森二の父親は生前理髪店を経営していましたが、ギャンブルにのめり込み、長男の光一はヤクザになっています。 森二は妻の唯と娘の冬香を深く愛していましたが、冬...続きを読む香と自分がDNA鑑定の結果血縁がないということが判明し、妻を問い詰め、誤って殺してしまいます。 義兄の圭介とは17歳の時出会い、唯と圭介は両親を4年前に亡くし二人で暮らしていました。 圭介は森二が光一とともにヤクザの道へ入っていこうとするのを、止めて、大検を取って、大学入学するのを勧めてくれ、自宅に招き、毎日森二の勉強をみてくれ大学を卒業させてくれた人物です。 唯との結婚後も二人の付き合いは続き、森二ら家族三人と一緒にしばしば、食事をする仲で、圭介は冬香を溺愛していました。 冬香が実子でないことを知ってからは、森二は血のつながらない兄妹であると聞いたことから、圭介と唯の仲を疑い始めます。 一方、光一は出所した森二を、ヤクザの世界へ引っ張りこもうと手下の加藤・持田とともに、森二に嫌がらせを始めます。 森二のアパートの隣の部屋に住むハーフの少女、沙羅が森二に助けてもらったことから、訪ねてきた10歳になる冬香の面倒をみてくれたり何かと世話を焼いてくれます。 森二には光一ら家族しか知らないギャンブルに強い勘が働き大当てするという特殊能力があり、そのために大きな事件にと発展していきます。 またヤクザの話か…と思いましたが、これは文句なく面白かったです。 森二と圭介の最初の結びつきの話は大変気持ちよく読めて、まさか冬香が圭介の子どもだったら嫌だなと思いました。 そしたら、この作家さん独特の横溝正史ばりの事実が待ち受けていました。 とんでもない結末ですが、これも悪くないと思い納得でした。 ただひとつ、唯が生き返ることがないのが、残念ですが、沙羅という少女の登場が救ってくれている気がします。
相変わらずの遠田節炸裂。文庫化を心待ちにしていたもの。やっぱりテーマは贖罪で、どれも似たり寄ったりと言ってしまえばそれまでかもしらんけど、その都度味わわされる強烈なカタルシスは、他に代え難いものがある。今回は、ちょっとした超能力をまぶされているのが新機軸。極端に非日常的な力だと、物語の根底を揺るがす...続きを読む瑕疵になりかねないけど、本作においては良いアクセントになっていて、使い方もお見事。クライマックスも含め、存分に楽しませてもらいました。
全体的に暗く重い内容で、中盤までは間違えた…と思った反面、物語に引き込まれて行った。 最後は涙が出そうになった。
妻殺しの罪で服役して、シャバに出てきても、もう何もないって感じ。 人とかかわりたくない、ひとりで生きていく!そう決心したはずやけど… しかし、かかわる人、かかわる人、訳あり過ぎる! 実兄は、893。 妹を殺された義兄は、真面目な大学の先生のはずが… 更にお父ちゃんを待つ隣りの娘。 自身は、特殊な能力...続きを読むがわざわいして、ギャンブル依存症の父親を… やっぱり、変にお金に変えられるような能力とかあると、 それを利用しようとする人 嫉妬する人 色々、絡んでくる。 自身の希望と関係なく… 関係ないけど、それが原因で不幸の連鎖… こんなんなら、自分の存在自体を否定したくなるな… 自身は一度、底辺から抜け出して、再起してるんやから、今回も何とか抜け出して欲しいな。 最後に、良い方向に向かっていきそうな感じで終わってる。 何とか、そのまま進んで欲しい。 ポキっ!とはなりませんでした! 遠田ワールド突き進んで参ります〜 間に休息を入れながら(^_^)v
遠田さんの小説は、設定が重苦しい展開ですが、最後は救われる場面もあると分かっているので、今回も一気読み。
#泣ける #切ない
『雪の鉄樹』の後に読んだ作品。主人公は相変わらず自縛し、自虐に苛まれる男性だが、前作の主人公よりは、その考えや在り方が理解できる。 遠田さんの物語は、箱庭のようだ。狭い世界で、少ない登場人物が行ったり来たりしている。物語を展開するには、箱庭に暮らす人々が様々な背景を負わなければ行けない。だから、一人...続きを読むひとりの人生/描写が自然と重く、深くなる。 かと言って、スケールが小さいということではない。これほどまでに人々を深く書き込むことができるのは、作者が登場人物の生をともにする、つまり命を削るようにして作品へ向かう姿が見える。 物語はなかなか動かないが、焦らずじっくり読ませる作家さんだと思う。 浅く軽いノリよりは、よほど好みだし、このスタイルをぜひ続けていって欲しい。 遠田さんならば、カラマーゾフの兄弟のような作品を生めると期待している。
森二が刑務所を出た日、塀の外で二人の「兄」が待っていた――。 自分を責め、他者を拒み、頑なに孤独でいようとする森二。 うらぶれたアパートの隣室には、バンドネオンの息苦しく哀しげな旋律を奏でる美少女・沙羅がすんでいた。 森二の部屋を突然訪れた少女・冬香の言葉が突き刺さる──「私、あの夜のこと、憶えてい...続きを読むるんです。 あなたは私の目の前でお母さんを殺しました」。 森二の「奇跡」と「罪」が事件を、憎しみを、欲望を呼び寄せ、人々と森二を結び、縛りつける。 更に暴走する憎悪と欲望が、冬香と沙羅を巻き込む! 森二は苦しみを越えて「奇跡」を起こせるのか!? はい!始まった瞬間から遠田先生ワールド炸裂です(*^-^*) 刑務所を出た日、いなり二人の兄が外で待っている。 本当の兄と、義理の兄。 何なんだーーーーこのシチュエーションはっ!!! 遠田先生ならではの書き方。もう最初は本当に何が何だかさっぱりわからない。 どういう状況なんだー。コイツは何者なんだーーー!? それがページを追っていく毎に、次第に全貌が明らかになってくる。 しかし、遠田先生の描く主人公は、色々な人が居るが、 やっぱり「いい人」(*^-^*) 遠田先生の描く「いい人」感。とても好きだなぁ~。 この本も序盤からガッツリ掴まれ、平日あまり読書をしない私も続きが気になってついつい夜中に目が開いたタイミングで読み進めてしまったりした。
遠田さんの小説は、設定が重く救いようがないものが多い気がします。 この主人公も、最愛の妻を自分で殺してしまい、兄はヤクザ、育ってきた家庭も荒れすさんだ家庭でした。 重苦しい展開の中、次はどうなるのかと気になり、読み進んでしまいました。 自分だけは自分自身でいることをあきらめちゃいけない、と思える本。
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