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加齢によって、記憶は衰える――。それが一般的なイメージだろう。だが、人間のメカニズムはもっと複雑だ。本書は、高齢者心理学の立場から、若年者と高齢者の記憶の違いや、認知能力の変化など、老化の実態を解説。気分や運動、コミュニケーションなどが記憶に与える影響にも触れ、人間の生涯で記憶が持つ意味をも問う。加齢をネガティブに捉えず、老いを前向きに受け入れるヒントも見えてくる。
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Posted by ブクログ
高齢者が引き起こす痛ましい自動車事故のニュースが増えてきた。超高齢社会に入ったわが国には未曾有の事態が出来することは避けられない。自分の家族や、自分自身にも老化の様々な弊害が感じられるようになった今、何ができるのだろうか。本書を手に取ったのもそんな心理からであった。 加齢によって認知症が発生する...続きを読むことはどうにも避けられないらしい。発症の要因は様々挙げられているものの、その決定的な予防策はないようだ。いわゆる脳トレと呼ばれる一連の活動やそれにともなう商品も科学的に見ると気休めの範囲になるとのことだ。手の施しようがないのである。 それでも本書では脳の機能にも加齢によって衰えない部位があることや、認知症になりにくい行動条件があることを紹介する。また、いくつになっても継続的に何かを行えば必ず上達が見込めることや、高齢者はポジティブな考え方をしやすいという常識とは異なる見解も紹介されていて参考になる。 老いとどう付き合っていくか、忘れることをどう容認していくのか、これは多くの人にとって重要なテーマになるはずだ。
記憶力が向上したからといって”物忘れ”が直るとは限らない、”脳トレ”をしたからといって認知症の人の日常生活の不都合が改善するとは限らない。考えてみれば当たり前のことが確かにあまり気づかれていない。老化の影響はひとそれぞれだし、やり方を学習する力は意外と衰えてはいない。いろいろ考える材料になる。
発達課題と記憶の関係について。感情のコントロールと認知機能についてなど読みどころが多い。 歳をとると「習慣を変えることは困難」なのはワーキングメモリの衰えと関係がある、というあたりの解説が読んでいてちょっと怖くなる。 あと「なぜ知識(意味記憶)は加齢で衰えないのか?」について。科学としては「衰え...続きを読むはない」のだろうけど、自身の知識がアップデートされないまま、いつまでも「正しい」と信じ込んでしまい、より正しく世界を捉えるための努力も変化もしないと、それも社会的には「衰え」だよな、と考えるとちょっと怖くなる。 「なぜ脳トレが認知症の発見を遅らせるのか」あたりの認知予備力と可塑性などについて。脳トレが日常生活での記憶維持に影響がない理由の解説が詳しい。あと「推論の訓練」と「ポケモンGO」の可能性についても。
記憶と一口に言ってもいろいろな種類があるが、老化により影響を受けやすい記憶とそうでない記憶があるそう。情報処理に必要なワーキングメモリーは影響を受けやすいとのことなので、徐々に読書スピードが遅くなってきているみたいなのもむべなるかな
「記憶力が衰えても、人は成長できる、 柔軟に生きるヒントもらいました」という、 中江有里さんの帯に惹かれて買いました。 数年前から、記憶力や集中力が衰え、 年のせいだから仕方ないのかなぁ。。。などと思いつつ、 半分あきらめ気分なのですが それでも、何か参考になりそうな本があれば。。...続きを読む。と、 いろいろ読んだりしてます。 この本は、ちょっぴり、私には難しくて、 ???な部分もありましたが、 社会参加が少ない人、孤独感が強い人は認知症になりやすいとか、 適度な運動は大切だとか、色々言われているけれど、 個人差もあるし、 結局は、あまり思い込まず、 前向きに受け入れましょうって事かな?
●→引用 ●そして記憶の衰えをマネジメントするうえでも、SOC理論を当てはめることができます。1.覚えておくこと必要がある重要なことは記憶するのではなく(選択)、2.メモや手帳などの記憶補助ツールによって正確に記録し(最適化)3.記憶力の低下を補い、物忘れに対処する(補償)。 ●スターン博士は、加...続きを読む齢や認知機能の低下の個人差を説明する概念として、「認知の予備力」を提唱しました。「認知の予備力」とは、機能低下の個人差を説明する概念で、情報処理に必要な能力をどれだ蓄えているか、低下した機能を適切な方略によって代償することが可能か、といった個々人が有する認知機能の質や量を意味します。予備力が高いほど、加齢にともなう脳機能の低下に起因する認知機能の低下が小さく、前述の修道女のように、アルツハイマー病を罹患したとしても認知障害が発見しにくいと考えられています。これを裏づけるように、認知機能と教育歴との関連性を検討した疫学研究は、教育水準が低いと、加齢にともなう認知機能の低下が大きいことを報告しています。 ●日々の生活の中で私たちは、状況や環境に応じて、要求されている課題や実行したい行動の難易度を評価し、遂行可能かどうかを適切に判断することが求められています。たとえば高齢期の車の運転がそうです。言い換えると、自信の能力を把握せずに、課題を遂行することは、失敗や事故につながるリスクを高めます。反対に記憶能力が低下していたとしても、適切な自己評価ができれば、周囲に助けを求めたり、適切な補助ツール(メモやリマインダなど)を利用することによって、失敗」のリスクを減らせます。 ●この結果を踏まえると、私たちの人生の評価は、人生全体の良い経験や悪い経験の総量で決まるのではなく、人生の最も良い時期」あるいは悪い時期(ピーク)に加えて、特に高齢期の経験(エンド)の影響を強く受けることを示唆しています。 ●キレる高齢者が増えた理由は、三つあると考えられます。一つは、高齢者のうちキレる人の割合は以前と同じでも高齢者人口が増えたため、結果的にキレる人が増加したこと。もう一つは、昔より寿命が延び、認知症になる方も増加したため、前頭側頭型認知症のように感情のコントロールが難しい方が増加したこと。最後は、独居の増加、年金などの経済的な不安、長寿による健康不安といった高齢者を取り巻く環境が以前と比べて厳しくなったため、不安からキレていくことが想定できます。これら三つの理由は、高齢自信がコントロールできるものではありまえん。 ●SSTでは、人は残された人生の時間が限られていると認識すると、感情を調整することに動機づけられるとしています。そして、多くの喪失を経験するストレスフルな時期があっても、高齢者がポジティブな気分を維持し幸福感が高いのは、高齢者が感情的に価値があることや、感情的な満足感を重視し、それらを得るために認知的あるいは社会的資源を投資するからだと説明しています。 ●高齢期の記憶を含むいくつかの認知機能は加齢とともに低下しますが、そのこと自体が高齢者の幸福感や精神的健康に悪影響を及ぼすのではありません。むしろ、加齢とともに物事の良いところに目が向き、記憶し、そして思い出すこと、加えてこのような情報処理の質的な変化が高齢者の感情のコントロールに良い影響を及ぼすことついて述べました。 ●また、高齢者の多くが望むピンピンコロリという死に方は難しいものです。寿命と健康寿命の差が約10年はあるのですから、その健康ではない10年間をどう悔いなく過ごすかが、人生の受容を考えるうえだ、とても重要となるのです。
たとえば、鍵を置いた場所を忘れるのは、置いた場所を忘れているのではなく置いた時に意識をしていないから。なるほど! 齢をとればとるほど、無意識の行動が増えている気がする。経験や知識でわかっているからいちいち考えずに動く。もう少し色々意識をもって行動しよう!と思う。納得ができる面白い本だった。 勘違いな...続きを読むのか、作り話なのか、間違ったことを言ってる姑たち高齢の人が、記憶を都合よく自分のストーリーに塗り替えてしまうのは、あるある!なんだと理解できたことで、まぁいっかと許容できるようになったかも。
人の「記憶」する能力一般について書かれた本も多くあるだろうが、本書は、高齢化していくにつれて、記憶の能力が低下していくということを前提として、そのことを受け入れ、あるいは立ち向かっていくための知識や知恵を与えてくれる。 これまで研究された理論や、実験、調査などの結果を根拠に記載されており、内容につ...続きを読むいて信頼できるとともに、その内容も非常に興味深く読むことができた。 周知のようにすでに高齢化社会は到来している。本書によると1920年頃の平均寿命の2倍の長寿になっているという。世界最高年齢は、フランス人の方の122歳とあった。 そして、昨今よく言われる「健康年齢」について、本書上では、平均寿命とのギャップが、男性で9年、女性で13年あるとされている。 長寿はいいが、はやり健康な長寿でなければ、本人もまた周囲も辛いものがある。そして、認知症は一般的に65歳から急激に増加し始め、しかもその治療方法が未だないことから、現代人の誰もが60歳前後になれば、気になってくる病の一つだ。 「認知症」と言えば、「記憶の低下」である。なってしまった以上、この症状は受け入れるしかない。しかも、認知症でなくとも、高齢化が進むにつれて、記憶は低下していくという事実は避けられない。 そういうことを前提として、ではそうなる前に知っておいてよいことはないか。準備しておいてよいことはないか。そういうことに気付かせてくれるのが本書である。 最初に大脳の働きの説明がある。後頭葉、側頭葉、頭頂葉、前頭葉。続いて高齢化に伴う脳の萎縮の話が出てくる。齢をとると神経細胞が減っていき、またシナプスの密度がだんだん低下していき、記憶が弱くなっていく。 次に記憶の種類の説明が出てくる。 「長期記憶」「短期記憶」「ワーキングメモリ」の大分類があり、さらに「長期記憶」は「顕在記憶」と「潜在記憶」に分かれている。 また「顕在記憶」には「エピソード記憶「意味記憶」があること、「潜在記憶」には「ブライミング」と「手続き記憶」があることが説明されている。 これらの記憶には、加齢に強いものと、加齢に弱いものがあると教えてくれる。 例えば「エピソード記憶」は加齢に弱い(齢をとると忘れる)が、「意味記憶」は特に加齢に影響されないとか、「顕在記憶」は海馬を通して、覚えることに努力を要するため齢をとってからはつらいが、「潜在記憶」は習慣化によるものなので、一度覚えておれば齢をとっても忘れないとか(例えば自転車の運転みたいなもの)、そういうことを教えてくれるので、準備とか対策とかが考えらえる。 ワーキングメモリーは、加齢とともに衰えるそうだが、一般的に人の脳はマルチタスクよりシングルタスクに向いているそうだ。だから、若いうちも、齢をとってからもシングルタスク思考のほうが効率的ということだ。 例えば、齢をとってエピソード記憶が消失していく前に、外部媒体に記録を残しておくというのは有効だ。スマートホンでもタブレットでも、それを使うための操作は「手続き記憶」であり、これは加齢の影響を受けないらしい。若いうちから使いこなせておれば、高齢化してもちゃんと外部メモリーに必要な記憶は保持され続け、困るどころかさらに有意義に人生を楽しんでいける。 これは、人生の満足度維持のためのライフマネジメントとして紹介されていたSOC理論(選択・最適化・補償の重要性)を記憶にうまく適用した方法と言えるそうだ。 また、仮にスマートホンの操作を覚えるにしても、ただ文字で覚えるのではなく、例えば携帯ショップの実演講習などで覚えると無駄なく効率よく覚えられると助言してくれる。 これは言葉で覚えるという「脳の前頭前野」での記憶は高齢者は苦手で、逆に「脳の運動野」を使った実演による記憶は高齢者でも大丈夫だからと、その根拠を教えてくれる。「習うより慣れろ」と著者は言う。 最近話題の「脳トレ」が、記憶の改善・維持や、認知症予防に効果があるかという点では、著者は様々な実験結果から懐疑的であった。むしろ人と会うような社会的活動や、身体運動のほうがその効果が報告されており、例えば「脳トレのゲームのために人と会うのをキャンセルする」というのは本末転倒であると言っている。 予防という意味では、これまでの検証結果から、「年齢」「教育歴」「性別」「血圧」「BMI」「コレステロール値」「身体活動」などが認知症の発症率に対し有意であることなどから、例えば生活習慣の健全な維持や、適度の有酸素運動を習慣化することなどは、認知症予防につながるという。 その他、積極的に社会的交流を行うことや、ビタミンC、Eなどを摂取することなども予防に有効と述べていた。こういうコントロールで、35%くらいは予防できるという。 これまで実験の結果から、人の幸福評価というのは、人生の最も良いときの評価、最も悪かった時の評価と、人生の最後(エンド)での評価で決まるという。つまり人生の最終章が大事であるということだ。 ならば、齢をとってから後悔しない生き方をしなければならない。そのためには、いまから準備できることがあるということだ。 本書で紹介されていた「死ぬときに後悔すること25」(大津秀一)という本は、読んでみたいなと思った。
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増本康平
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