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第二次大戦下、神戸トーアロードの奇妙なホテル。“東京の何もかも”から脱走した私はここに滞在した。エジプト人、白系ロシヤ人など、外国人たちが居据わり、ドイツ潜水艦の水兵が女性目当てに訪れる。死と隣り合わせながらも祝祭的だった日々。港町神戸にしか存在しなかったコスモポリタニズムが、新興俳句の鬼才の魂と化学反応を起こして生まれた、魔術のような二篇。(解説・森見登美彦)
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Posted by ブクログ
『神戸・続神戸』は、新興俳句運動の中心人物のひとりであった俳人・西東三鬼が物した随筆である。太平洋戦争末期、三鬼が下宿していた神戸のホテルにおいて、住人たちが繰り広げていた狂騒的な日常を描いたものだ。 三鬼自身も戦時下で反戦的な俳句を詠んだとして検挙された経験もある人物だが、『神戸・続神戸』に出て...続きを読むくる人物たちは、それに輪をかけた曲者ぞろいである。どこからともなく貴重な食肉を仕入れてくるエジプト人や、体ひとつで渡世している娼婦たち。ロシアの老婆は日本娘をドイツ兵に売りさばき、台湾の青年はバナナの密輸入に精を出す。男たちは闇物資を、女たちは体を売り、特攻や結核や空襲でゴロゴロと死んでゆく。 このカオスのようなホテルはほどなく空襲で全焼し、前後して住人も死んだり消息不明になってしまう。このような社会の底辺の、いわば非国民たちの存在が公式に記録されるはずもないから、彼らが生きていた証は三鬼が書いたこの本の中にしかない。だが、三鬼が語る彼らの「生」の、なんとリアルなことだろう。なまなかな小説などには出せない凄みが、この随筆にはある。歴史には決して残ることのない、名もなき庶民たちの生の記録がここにある。 彼らの境遇の悲惨さは、ほとんど戦場ルポルタージュの様相を呈しているが、一方で奇妙な明るさにも満ちているから不思議だ。日本全土が軍事色に染まってゆく中、自らが異端者であるという事実は、彼らを萎縮させるどころか、矜持の源泉でさえあったようである。三鬼を含め、彼らはみな生まれついてのアウトサイダーであった。日章旗でも旭日旗でもなく、ただ独立不覊だけが、彼らの掲げる旗であった。
第二次世界大戦中の神戸、アパートを兼ねたホテルに主人公は住む。そのまわりには日本人だけでなくエジプト、ロシア、台湾、朝鮮、ドイツなど様々な出自の怪しい人々が蠢く。 戦時中だけに物資や食べ物は不足し、住むところに困ったり、体を売ったり、病気で死んだり、という悲惨な状況である。にも関わらず、生々しさがな...続きを読むく別世界の寓話のような仕上がりになっている。 解説で森見登美彦氏が、三鬼とは天狗の異名だという逸話を取り上げ、著者の書きぶりを「フワリと宙に浮かんで人間たちの営みを俯瞰しているようでありながら、俗世で生きる彼らへの愛情ゆえに見捨てて飛び去ってしまうこともできない」と書いている。「千一夜物語」とも書かれていて、自分がぼんやり感じたことを見事に言語化してくれたこの解説にも★5つをつけたいと思った。
何の情報で知ったのだったか、私の好きな作家さんが何人も絶賛してたので、読んでみることにしました。 西東三鬼は俳人で、新興俳句系の句誌を創刊したりしてた。 でも、俳人になる前は歯科医師、その後貿易会社役員など経歴が面白い。 戦時中、京大俳句事件で執筆活動停止処分され、妻子を東京に置いて単身神戸に移住...続きを読む。 これはその神戸の頃の回顧録的な作品。 今まで、映画やドラマや小説で知っている戦争中の苦しさ、貧しさ、暗さ、悲壮感... その重さで戦争モノは敬遠しがちな私ですが、著者の淡々としていて、ユーモアあふれる文章にぐいぐい引き込まれてしまいました。 しかも生活していたアパートとホテルの間のような止宿人たちの個性豊かな面々との交流が味わい深くて良かった。 本当にこれは戦時中の話なのかと思うほど、外国人もうろうろしてるし、のんびりした感じがあるんだよね。子どもとか出てこないし、大人の世界。 不思議な魅力にあふれてました。 で、解説が森見登美彦氏で満足度上がりました。
古い写真を見ながら読むと当時の風景が浮かび上がります。 戦時中でも人はたくましくそれぞれの人生を生きていたんだと。
これはよかった。生きるというのは参ってしまうようなことの連続で、戦時下にあってはそれも如何許りならんやという感じですが、登場人物たちは眉根を寄せながらもじつに自由に人間らしく生きてみせるのですね、その日々を。 ユーモアとかペーソスとかジャジーとか、そういう分かるようで分からないカタカナ語が、カタカナ...続きを読むのまましっくりとはまる本です。そして、人間って哀しくて可笑しくて阿呆みたいで他愛ない、つまり、愛すべきものなんだと思えます。
戦中戦後の神戸の猥雑な空気や人間模様が、淡々とした距離感と味わいで描かれ素晴らしい。私にとってこんな文章が書きたいと思うお手本のよう。場所柄時代柄の各国の人の交錯が梨木香歩の「村田エフェンデイ滞土録」を思わせる。一人一人の無名の人の持つ大きなドラマをさらりと書くセンスと腕前に感嘆。神戸の民衆史として...続きを読むも興味深い。
戦中、戦後を強かに生きた人々の喜怒哀楽が描かれているが、ちょっと不思議な読後感がある。コスモポリタンや自由を愛した人々というと何かが違う。国家の庇護を受けないが、その代わり国家の命令にも従わない。望むと望まざるとに関わらずそういう境涯へと至った人々が力強く生きていく様を、ほとんど心理描写を交えずに断...続きを読む片的に投げ出すように描いていく。この愛すべき人々との交わりに何かしらの感興や心の動きがあって俳人はこの散文を書いたのだか、生涯を損耗させるほど打ち込んだ俳句ではどうだったのか。俳句という器では任が重かったのか。虚子の花鳥風月では描けなかった経験だと思う。ただこれに催された感情の動きを何とか俳句という形式で表現したいという想いにも駆られて三鬼は新たな道の模索を始めたのではないか。単に戦後の解放ということだけではないと思う。また新興俳句の単なる復活ではない道を模索するのは本書で描かれた経験があったからではないか。桑原武夫の第二芸術論に対する反発もあったのだろうか。俳句を断念した静塔を説得する件は、静塔が軍隊において味わったその人生経験を基として新たな俳句の創造を共にしたいとの想いに沿ったものだったのだはないか。三鬼の戦後の句を読んでみたくなる書き物である。
戦時中の神戸のある一軒のホテルで繰り広げられる日常。 戦争から自由を求めて、だけど逃れられない人々の生きざまが、日々が、鮮やかに描かれた作品。 リアルな残酷さばかりではなく、細やかなことに穏やかな時間が流れたり、呆れたり、笑ったり。 人々が生きていたことを残した一冊。
戦前戦後の日本人、特に女性はほんとにたくましい。生命力がすごい。パワーがページから溢れてくるようです。神戸の雰囲気も、いかにもな感じ。いろんなことがあったんだなあ、としみじみ感じました。今よりずっとダイバーシティが身近で、グローバリズムも相当。こんな社会で生きてた人は強かっただろうな。
こんなタイトルだけど、観光案内ではありませぬ。 「まったくよくいうよ」私が友だちならそんな風にツッコミたくなるような語り口。 サラリと、時に厳しさや悲しみさえ、ユーモラスな空気で運んでくる。 彩り豊かな人々と世界。 あの困難な時代が、なんとおおらかで「生き生き」と描かれていることか。 そして、そこ...続きを読むにある現実を思うとき、つっと何かが胸に留まる。 人々の足音と息遣いが聞こえるようだった。
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