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アメリカ社会、とりわけ若い世代に広がりつつあるリバタリアニズム(自由至上主義)。公権力を極限まで排除し、自由の極大化をめざす立場だ。リベラルのように人工妊娠中絶、同性婚に賛成し、死刑や軍備増強に反対するが、保守のように社会保障費の増額や銃規制に反対するなど、従来の左右対立の枠組みではとらえきれない。著者はトランプ政権誕生後のアメリカ各地を訪れ、実情を報告。未来を支配する思想がここにある。
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Posted by ブクログ
リバタリアニズムというのは、個人の自由を最大限尊重して、政府の介入を最小限にする、という思想のようです。 著者は、アメリカのリバタリアニズムのNPOや財団、中国の財団に取材しています。 リバタリアニズムという思想そのものよりも、アメリカのNPOや財団が多くの寄付金を集めて、かなりの資金力があること...続きを読むが印象に残りました。
【私たちは往々にして現実社会における「影」や「負」への対応を政府に丸投げしてはいないか。そして、政府を批判することで私たち自身の「他者への責務」から逃れ、自らを道義的高みに置こうとしてはいないか】(文中より引用) 保守やリベラルといった広く用いられる用語では定義することが難しい「リバタリアニズム」...続きを読むという考え方。淵源やその広がりを辿りながら、アメリカで若者の注目をにわかに集めつつある思想の説明を試みた作品です。著者は、『文化と外交』などでも知られる渡辺靖。 リバタリアニズムの解説本として機能しつつ、リバタリアニズムが硬直的・単一的な思想ではないということを示している点が魅力的。アメリカを分析する上で一つの重要な視座を与えてくれていると思います。 アイン・ランドはどこかで読んでみよう☆5つ
本来の自由主義 リバタリアニズムを代表する政治家として米大統領選にも出馬した経験のある元米下院議員ロン・ポール氏が現役時代の2012年、ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン教授と、経済ニューステレビのブルームバーグで討論したことがある(『ロン・ポールの連邦準備銀行を廃止せよ』に収録)。 ...続きを読む中央銀行によるインフレ政策を支持するクルーグマン教授は、金本位制の復活を唱えるポール氏に対し、百年前の世界に戻るようなものだと批判。するとポール氏はあざやかにこう切り返す。「教授の主張は一千年、二千年前に戻りたいという考えではありませんか? かつてのローマやギリシャのような国家が、自分たちの通貨を減価させたように」 ポール氏のこの発言から二つのことがわかる。一つは、あたかも最新の経済理論に基づくかのように思い込まされているインフレ政策は、はるか古代から国家が人々の財産を収奪するために駆使してきた手口にすぎないこと。もう一つは、金本位制を支えるリバタリアニズムの考えはわずか百年前まで、世界における経済政策の常識であり、過激な思想でも何でもなかったことだ。 リバタリアニズムは「自由至上主義」と訳されることが多く、本書の副題もその訳語を踏襲している。この訳語は過激な思想であるかのような誤解を与えてしまう。リバタリアニズムには国家の廃絶を唱えるラディカルな無政府資本主義もたしかに含まれるが、本書が詳しく解説するように、それがすべてではない。国家に一定の役割を認める考えも含まれる。米国では自由主義を意味する「リベラル」という言葉が左翼に乗っ取られてしまったので仕方ないが、日本では「自由主義」をそのまま使えばいい。 副題にケチをつけてしまったけれども、本書の内容はすこぶる有益である。米国を中心とした多くの活動家や研究者へのインタビューも興味深いが、見逃せないのは歴史的な考察だ。リバタリアニズムの源流をハイエクやフリードマンら現代の経済学者だとする解説をよく目にするが、実際はジョン・ロックやモンテスキューら17〜18世紀の啓蒙主義時代の欧州の政治哲学にまで遡る。 その思想は米国に受け継がれる。初代大統領ワシントンや第3代大統領ジェファーソンは、諸外国との貿易を推奨する一方で、軍事同盟など政治的なつながりを拒絶した。前述のロン・ポール氏は共和党内における反イラク戦争の急先鋒で、在日米軍を含む海外駐留米軍の撤退を訴えたことで知られるが、この姿勢はワシントンら建国の父たちの理念に「驚くほど忠実」だと著者は指摘する。 リバタリアニズムは過激な思想ではない。この百年の間に世界が自由を否定する方向に傾いてしまったために、過激に見えるだけだ。 「自由」をその名に冠する政党が戦後ほぼ一貫して政権与党であるにもかかわらず、福祉国家や軍事同盟に舵を切り続けてきた日本。野党にも本来の自由主義の復権をめざす政治勢力は存在しないに等しい。先行きに展望の見えない現状を変えたいのであれば、リバタリアニズムがそのカギを握るのは間違いない。
アメリカにおけるリバタリアンの来歴、現状、展望などの取材とインタビューに基づいた内容。リバタリアニズムの概要と特徴を大まかに理解することができた。 想像以上に彼らは狂っていて、想像以上に彼らは現実を深く認識し、時には自らの誤りを意味する考察もしている。面白かった。
自由至上主義者はマリファナを吸いすぎで頭がおかしくなった連中なのか。自由市場、最小国家、社会的寛容を重んじ経済的には保守、社会的にはリベラル。連邦政府への懐疑心が強く国防、司法、治安のみを政府の役割とする夜警国家論も。弱者を切り捨てる市場万能主義と批判も共和、民主にも共感できない米国若い世代が増加中...続きを読む。中南米では急速に浸透中、東欧では対極の権威主義が増殖中。
この本を読んでいると、国家の干渉という点では、自分はリバタリアニズムの影響を大きく受けているなあと感じる。 リベラル、保守どちらにもない視点がリバタリアニズムにはある。そしてリバタリアニズムといっても相当幅があるのが面白かった。 「人種差別は最も下等で下品な原始的集合主義」という立場をとりながら...続きを読む、政治による是正措置には否定的など、独特なロジックがあるのは興味深い。
いつも渡辺先生の現代アメリカに対する視点のフレッシュさに感心する。 アメリカを通して日本を見つめているとの記述に、激しく同意。自身も海外の経験を通して結局のところ日本を思っている。こうした視座に立つ事が大切なことだと。
「これからは社員を管理しない会社が生き残ってゆく」という論調が散見される。社員を大人扱いして、その自主性と自律性を重んじ、管理という名の会社の介入を最小限にして生産性を高めよう、という。 確かに、過去に社員が犯した大きなミス、あるいは、想定し得る最悪の事態を基準にしてがんじがらめの社内ルールを作り、...続きを読む不祥事を減らしている一方、業務効率を大きく落とすというケースがある。これでは、ミスとは無縁の多くの優秀な社員をも巻き込み、企業全体の生産性を落とす、ということにつながりかねない。 でも、社員を大人扱いしたところで、そこからこぼれる人たちは当然出てくる。大人として認められなかった場合、最悪、彼らは切り捨ての対象となる。 自由市場・最小国家・社会的寛容を重んじ、弱者切り捨てとの批判を受け、シリコンバレーでの支持が小さくないリバタリアニズム。日本ではいまひとつ広がりを見せていないが、上記の論調が散見されるということは拡大の前兆を意味するのか?
これほどまでに先鋭化している思想が生まれるアメリカという国。 多くの日本人の理解の外にあるであろうその「自由」への感覚。 とても共感できそうにない。こういうイズムが出てくる素地があるこの国と敵対しないほうがいいことだけは確か。
リバタリアニズム思想に深く切り込むというよりは、全体的に近年の動きや事例を多く挙げていく形式。 リバタリアニズムの理論や哲学的考察についての厚い内容を期待していた自分にとっては、イメージしていた内容と少し違ったので後半は読み飛ばす形になった。海外ではこういう動きがあるんだ、ふーんってなりたい人向きの...続きを読む本だと思う。 日本に思想の選択肢を増やした方がいい、というのは大賛成。
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リバタリアニズム アメリカを揺るがす自由至上主義
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