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日本には「草木国土悉皆成仏」という偉大な思想がある――。原発事故という文明災を経て、私たちは何を自省すべきか。デカルト、カント、ニーチェらを俎上に近代合理主義が見落としてきたもの、人間中心主義が忘れてきたものを検証し、持続可能な未来への新たな可能性を日本の歴史のなかに見出す。ここに、新たな「人類哲学」が誕生する。
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Posted by ブクログ
これまでの科学技術文明が人類の生活水準を劇的に押し上げてきた反面、環境破壊を通じて地球への負荷も目に見えて大きくなっています。そのような中で本書では人類全体が指針とすべき新たな「哲学」として、天台思想の「草木国土悉皆成仏」を挙げておられます。これは生きとし生けるものすべてが仏の本性を持っている、とい...続きを読むう仏教の思想の1つで、神道にもそのルーツをたどることができます。この本の大きな特長は、梅原氏が世界の様々な「哲学」と「草木国土悉皆成仏」思想を比較しその優劣を論じているところで、仏教でいうところの教判論だと思いました(注:様々な教えの違いを分析しその優劣を述べるのを仏教では教判と呼びます。例えば空海は「弁顕密二教論」という書の中で、密教と顕教というカテゴリーのもと、密教が優れていることを論じています)。その意味で本書は世界の哲学(思想)の教判書である、と認識しました。 このような哲学の教判書をかける人物は世界でもほとんどいないのではないでしょうか。さすがに梅原氏も、本書のタイトルを「序説」とした理由として、梅原氏自身が西洋哲学から離れてだいぶ年月が経っていること、よって西洋哲学の面での論述が不十分である点を挙げておられが、それでも非常に中身の濃い本だと感じました。大変勉強になりました。
とても分かりやすい本。初めてふれる人でもとっつきやすいし、理解もしやすい。 科学技術の発達は哲学にも影響を与えている。 その中で日本人には、日本人らしい哲学があうのではないかなと思うし、これを証明するのにもいいのはうれしい。
3.11を経験した筆者がその違和感を探って思いついたのが、草木国土悉皆成仏、デカルトの思想の批判、アイヌや宮澤賢治の再発見である。ニーチェやキリスト教への言及もあり興味深い。 デカルトの方法序説は確かに便利だが、そこで見落とされるモノが今回の自然災害を発端とする災厄の元凶であり、その理由や西洋思想で...続きを読むは理解し難いであろう日本的な考え方とその土壌について丹念に述べている。 私も技術者である前に人間として、自分に問い直したいと思った。
最澄に連なる比叡山中興の祖である良源は天台宗本覚思想を完成した。日本文化の本質を解く鍵はこれにある。本覚思想とは、草木国土悉皆成仏、一木一草のなかに大日如来が宿っているという思想である。本覚思想は鎌倉仏教の共通の前提となっている。 さらに遡ると縄文文化に行き着く。縄文とアイヌには連続性があり、アイヌ...続きを読むの貝塚思想は生きとし生けるものの再生を願うものである。 草木国土悉皆成仏、アミニズムは世界の原初的文化である狩猟採集文化共通の思想である。 デカルトは世界を変えるのではなく自分を変えろと考えた。これはストア派と類似する。アリストテレス以来自然とは神の意思の実現であるとされていた。デカルトは自然とは数学的公式により把握されるとした。ここにデカルトの偉大さがある。 ニーチェは血でもって書けと言った。頭でも情でもない、血である。自分に味方のないことを確認した後、勝ち誇る者に論争を挑め。ニーチェはデカルトの理性万能主義を否定して、最も重要なものは意志であるとした。 ハイデッガーはニーチェ研究に始まり実存主義哲学を創始した。死を自覚することで初めて自己が生まれるとした。のちにザインの哲学へ移行する。凶暴な意志が世界を支配しており、それに隠れた「存在」が重要とした。 世阿弥は鶯も蛙も歌を詠むと言った。草木思想である。 ソクラテスとプラトンは人間中心主義の祖である。人間中心主義、科学万能主義はいずれ裁きを受ける。
西洋哲学が主流になったのは、その言葉による構成力だと思います。 しかし、世界には東洋をはじめ、色々な知恵が点在しています。 それらを統合して哲学を新しくしていく、それこそが人類哲学、多様化の時代の哲学です。 本書はそのものでは有りませんが、読むとその姿をほんのりとイメージできます
大きな題目となった。人類哲学。今までの西洋哲学ではこれからの世界の未来を担えない。その思想が「草木国土悉皆成仏」だそうだ。なんだかアニミズムのような感じがするが。天台本覚思想を一言でいうとそうなるとか(?)。
西洋文明により、豊かで便利な生活が生まれ、デカルトの哲学に基礎づけられて自然科学文明が勃興し、近代医学の発展があった。 著者は、西洋文明の偉大さを認めながらも、「現代は、もうそのような科学の進歩を謳歌する思想がそのまま通用する時代ではない」と近代西洋的な人生観では、駄目であるという。 確かに今まで人...続きを読む類が歩んできた歴史に、現代人は恩恵を受けているが、果たして受けているのは恩恵だけだろうか。原発にしてもそうだが、その利便性は危険を伴っている。 本書に何度も出てくる「草木国土悉皆成仏」という、仏教の思想のように、自然も生きていて、その中で人間はどのように生きるかということを考えるべきだと思う。 人間だけが特別という考え方では、本当の豊かさは得られないのではないだろうか。 デカルト、ニーチェ、ハイデッガーの思想や、ヘブライズムとヘレニズムについてなど、とても分かり易く、基礎的な情報が得られて、ためになった。 哲学書とは思えない、平易な文章で書かれていて、本当に読みやすく、面白かった。
人類文化を持続的に発展せしめる原理とは?...... かつてとんでもないSF映画があった。 「インデペンデンスデイ(ID)」。 地球人が宇宙人のマザーシップにコンピュータウイルスを感染させてバリアを破壊、攻撃するというあまりにも想像力プアーなあらすじは、ゴールデンラズベリー賞の最低脚本賞にもノミネ...続きを読むートされたほどだ。 この映画を揶揄したのが「マーズ・アタック!」で涙が出るほど笑える傑作だったが、IDは笑うどころか退屈して寝てしまった。 IDまでひどくはないものの、宇宙の知的生命体を探している科学者の多くも、それらは宇宙船に乗って来ると思い込んでいる。 宇宙は気が遠くなる広大さなのに、三次元の人間レベルで考えてよいのであろうか。 例えば、宇宙のどこかの星には空飛ぶアメーバのような四次元的な生き物が栄えているかもしれない。だが「神は自分に似せて人を作った」と聖書にあるように、人は古来から自分の範疇をなかなか越えられない。 梅原先生は、デカルトの「われ惟う、ゆえに我あり」に始まった近代の西洋哲学を大まかにおさらいしながら、批判を加え、これからの世の中の核になるべきは仏教由来の「草木国土悉皆成仏」という思想だ、と主張している。 デカルトの機械論の展開が科学技術を発展させるきっかけとなり、人間社会はここまで来た。 その究極が原爆であり、原発である。 だが日本人はその恐ろしさを身を以て知っている。 地震、火山、台風。 人や土地を飲み込む自然の恐ろしさも知っている。 だが西洋哲学では、人間を常に中心に置いて考える。 自然は人間が征服するものであると考える。 この思想を明治以降の日本人は必死で学んで来たが、この哲学が日本人を、ひいては人類をよく導いたと言えるだろうか。 ところで、21世紀に入ってからの、西欧における日本ブームには驚く。そこここでZEN ◯◯という商品が売られ、つい20年前まで「生の魚なんて食べられない」と言っていた彼らが箸を上手に使って寿司のランチを食べていたりする。 この日本への傾倒は一体なぜなのだろう。 仏教用語である「草木国土悉皆成仏」に落とし込むことが正しいと私は思わないが、日本のアイデンティティ、日本的価値観を西洋的手法を使って分析し、系統立てて解説することが、日本を知る哲学者、思想家の急務であると思う。
老いてなお血気盛んな哲学者・梅原猛の「人類哲学宣言」。 主義主張的には個人的に相容れなさそうな部分もあるけれど、それにしても著者の年齢にしてこの意気は凄いと思います。
「草木国土悉皆成仏」をキーワードとして日本仏教・文化を説明できるとの考え方が貫かれている明快な日本文化、哲学の入門書だった。特にデカルト、ニーチェ、ハイデッガーの説明は最高! デカルトが近代哲学の父としてどれだけ重要な存在なのかが、改めてよく分かった。デカルトの人生を生きていく規則(4つの格率)、方...続きを読む法序説の4ヶ条の説明など。ニーチェの「アンチクリスト」ではキリストを無私、愛の人として高く評価しているというのも面白い。ショーペンハウエル、ニーチェ、ハイデガーが「意志」に重きを置く哲学だという説明も分かりやすい。なお、世阿弥「白楽天」の紹介の中で、和歌の神・住吉明神との問答は実に楽しい話。「日本では人間ばかりか、鶯も、蛙も歌を詠む」との言葉で白楽天が驚いて帰っていく!実に痛快な言葉で日本文化を言い当てている。
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