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難民としての出自を持つ世界各地の作家18人が、「場所を追われる」体験をみつめなおし、祖先、家族や知人、さまざまな「難民として生きる人たち」の声に耳を傾けていく。排外主義が強まる世界で、掻き消されそうになる人間的な声を丁寧に拾い上げた本書は、私たちの心の奥にある感情を揺さぶり、痛みとともに新たな光を投げかける。喪失した「物語」を編みなおすことの意味を伝える異色のアンソロジー。
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Posted by ブクログ
エッセイ、ノンフィクションなんだよね、つまりこれは現実。 どんな国で、どんな状況で、どうして難民になるのか、そして行った先の国でどんなことが待ち受けているのか。まるで知らなかった。 悲惨で読むのがつらい話もあったが、そうだよねきっとそうだよねと共感するところも。 どれもよかったけれど、中でも『トラ...続きを読むンプの壁は、つくられる前からおいしい食べものに負けていた』(アリエル・ドルフマン)、『恩知らずの難民』(ティナ・ナイェリー)がよかった。
世界のニュースを普通に見ている人は、さすがにここ5年の間のどこかで、難民を受けれるということについて、あるいは難民支援、ということについて、一度くらいは考えることがあったのではないだろうか。 ん? 考えたことない? まあ日本にいると、あんまり深く考えなくても済むんだけれど・・・。(今のところはね) ...続きを読む 私も折にふれ、もし日本が、難民が押し寄せているギリシャの場所にあったら?ハンガリーのあたりだったら?ドイツだったら?イギリスだったら?と考えようとしてみたけれど、結局答えは出なくて結論はいつも保留。 ひとつだけハッキリしているのは、日本だろうとどこの国だろうと、全員は受け入れられないということ。 一度飲みの席で、会社の偉い人に、かるーい気持ちで「さすがに今の日本は移民や難民を受け入れなさ過ぎでしょー、人手不足も少子化も解消されるし彼らが自立すれば税収も増えるしもっと受け入れたらいいのにぃー」と適当なことを言ったら、その偉い人は急に真顔になって、「じゃあ君は、今よりももっと治安が悪くなっていいんだね? もっと犯罪率が上がっていいんだね? テロとか増えてもいいんだね? それにどこから支援のお金が出るんだ?」と畳みかけるように言うので、ビックリした。 なぜそうなると決まっているの? そう言いたかったけど、うまく言えないどころか、黙るしかなかったのが、ずっともうモヤモヤしている。その人は理性的で寛大で頭がいい人だという印象があっただけに、いきなり頑なで偏狭で、ドナルド・トランプみたいなことを言うのでびっくりした。そして、やっぱり移民や難民については多くのごく普通の人が(極右とかじゃない、という意味で「普通」の人が)多かれ少なかれこのような「恐れ」をもっていて、受け入れ側には悪いことしか起こらない、という考えなのかなぁ、と思った。 まあそんなことを思い出しながら、この本を読んでみた。少なくとも、議論をするにはこういう本をいくつか読んでからだよなぁ、と思う。もちろん、この本に収録されている話は、すべてあまりにも個人的な話でそのまま一般化はできない。でも、世の中すべて、一般化できないことを集めて一生懸命一般化して制度を決めるものだと思う。 この本を読むと、母国を出てからの彼らのたどる道は「まっすぐでも安全でもない」というのがすごくよく分かる。 そして、その過程で本当に多くの人がトラウマをかかえる、というのは、簡単に想像できることなのに、私はこの本を読むまで全然考えてもみなかった。 「はじめに」と「ラスト、ファースト、ミドル」「神聖ローマ帝国の女王、マリア・テレジアのゲスト」「神の運命」が特に印象的だった。 子供たちは親を傷つけないように用心深く行動し、親は子供を守ることを第一に考えて行動し、その結果として家族の絆が深まったり、逆に見えない傷が深く残ったりする。こういうのって普通の日常でもあることなんだけど。 あと、この本を編集したヴィエト・タン・ウェンの「はじめに」の中で述べられている「境界線」についての考え方は、非常に心を動かされた。 国境なんていらないでしょう?っていうとてもシンプルな考え。 確か「アミ 小さな宇宙人」にも同じ考えが書かれていたけど、そちらの方は、童話のような語り口で、本気にしない人が多いような気がした。でも、今回ウェン氏の文章で改めて同じ考えを聞かされると、夢想家の非現実的な夢物語以上のものを感じた。 これはみんなが本気でやれば実現可能じゃない?と私は真剣に思ったのだけれど、どうでしょうか。
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