宇沢先生については、時のローマ教皇ヨハネ・パウロ2世から手紙で、"Capitalism are alright?(資本主義は大丈夫なのか?)"と直接問われた経済学者、という説明で十分だろう。
宇沢先生は、当時の米英の主流派・新古典派経済学の世界においてもっとも影響力のあった研究者のひとりでありながら(後に新自由主義的な市場万能説を唱える当時の主流派経済学説を批判して、ノーベル経済学賞を受賞するジョセフ・スティグリッツ、ジョージア・アカロフが彼の教え子にあたる)、後年は市場の外にあるシャドウコストをモデルに組み入れて社会的共通資本(Commons)をいかにして守るか、ということに軸足を移して行動した稀有な研究者だった。