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高3の夏、水着姿で自転車に乗った美樹子が差し出した葡萄味のアイスキャンディーを、明彦は今もはっきり覚えている――(「愛は真夏の砂浜」)。かつての同級生、兄と妹、客と店員、編集者と作家、元夫婦。都市の一角ですれ違い、向き合い、別れていく男と女の姿を、研ぎ澄まされた文章で、譜面に音楽を刻みつけるように描く。音楽、スニーカー、ラジオ……あるテーマを出発点に想像力が鮮やかに紡ぎだす、魅惑の9篇。
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Posted by ブクログ
季刊誌「IN THE CiTY」に発表された短編集。 片岡さんの作品は、夏のイメージがあります。 そのせいなのか、冬号に掲載された作品でも季節は夏。 しかし、書き下ろしの表題作はタイトルのとおり冬の物語。 片岡さんの冬が読めてとてもうれしかった。
私には「いちぢくの香りがして…」というあのシーンを読みたいがために、何度も読み返している本があるのだけど、片岡さんの小説もそれと同じ気配がする。 ちゃんとはじめから読まないとその状態にならない。クライマックスではないのだけど、辿りつきたい場面を持つ小説。 「細い体だから、と彼女はかつて言ったが、...続きを読むその体には人を夢中にさせる許容力の奥行きがあった。」(フォカッチャは夕暮れに焼ける) 「どんな気がしても、それはきみの自由だよ」(ティラミスを分け合う) 「平凡で素朴だけれど、たいへんいい状態にあっておいしいもの、という基準をきちんと持つためには、たくさん経験しないといけないね」(この冬の私はあの蜜柑だ)
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この冬の私はあの蜜柑だ
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片岡義男
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