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1789年の大革命から1815年のワーテルローの戦いまで、ナポレオンの熱狂情念が巻き起こした相次ぐ戦争による混乱と怒濤の30年。この偉大なる皇帝の傍らに、警察大臣フーシェ=陰謀情念と外務大臣タレーラン=移り気情念なかりせば、ヨーロッパは異なる姿になったにちがいない。情念史観の立場から、交錯する三つ巴の心理戦と歴史事実の関連を丹念に読解し、活写する。(講談社学術文庫)
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Posted by ブクログ
▼けっこう以前に読んだんでかなり忘却していますが、とにかく面白かったです。 ナポレオンと、同時代の政治家ふたり、フーシェとタレーラン。簡単に言えば三人の評伝です。 ▼鹿島茂さんなんで、色々なことを「情念」という人間の持ち味に着眼しながらの語り口になるんですが、無茶苦茶に面白かったんですが、「情念...続きを読む説」を述べるくだり自体は半分でもよかったかな(笑)、とは思います。 ▼ナポレオンだけの評伝ではないし、直前に「太陽王ルイ14世」を読んでいたこともあって、「フランス革命前夜→いわゆるフランス革命→共和制だけどロベスピエール的暗黒政治期→ナポレオン・ボナパルトの栄光→その没落から王政復古」という、全体の概略がつかみやすくて助かります。 ▼鹿島茂さんは、ナポレオンの軍事的才能の角度は一切描かずに(まあそういう本はいっぱいありますからね)人間ナポレオンを色恋などから眺めつつ、時代の政治だけではなく経済や民意の”ムード”をよくとらえていらっしゃると思います。 ▼ナポレオンが、もともとは「コルシカ島独立運動の志士」たらんとして、挫折と逃亡の末にフランス革命軍の救世主となっていく。その数奇さと、フーシェ、タレーラン(そしてロべスピエール)の流転を通して、「革命と言う劇薬と狂気」の血なまぐささが匂い立つような一冊。で、オモシロイ。さすが鹿島茂さん。 ▼鹿島さんの不朽の名作「レ・ミゼラブル百六景」を再読したくなりましたね。あれ、ほんと名作だと思うんですけれど。
フランスの思想家フーリエが言う、高位の洗練的四情念。 その内の三つをそれぞれ体現した三人。ナポレオンの熱狂情念。 フーシェの陰謀情念。タレーランの移り気情念。 フランス革命からワーテルロー会戦までを生きた三人の生涯と 情念の有様を探っていく。 情念とは、パッション。 昨日の友は今日の敵、陰謀大好きフ...続きを読むーシェ。 金と女が大好きだけど外交官としては凄腕のタレーラン。 俺様一番~~とばかりに突っ走るナポレオン。 この三人がある時は迎合し、ある時は離反する、心理戦。 それがナポレオン時代を築き上げたという、時代の妙。 なるほど、この三人の行動を探り、辿っていくと、 フランス革命から帝政へ、そして王政復古、ルイ=フィリップ までの流れが実に面白いのです。ラストのルイ=ナポレオンと 内務大臣のモルニー伯の関係までも・・・いやはや。 鹿島氏の文章は痛快で軽妙。さくさく読めて楽しかったです。
小説ほど創作があるわけではなく、教科書ほど無味乾燥なわけではない。しかして抜群に面白くて楽しく学べる。これこそが大河ドラマというものか。フランスの歴史書でありながら、訳本ではなく作者は日本人。というわけで『山田風太郎』や『自民党』、『ボンド・ガール』と現代日本にしか通じないような例えを混じえ、ナポレ...続きを読むオンとフーシェ、タレーランの生い立ちから没するまでの三者三様の欲望と生き様をドラマチックに語る。 歴史上の人物は、ストーリーの都合上、こっちの作品では人々のために戦った善人、あっちの作品では自分のためだけに戦った悪人など、わかりやすい型に嵌められやすい。だが、欲深い個人の利益の追求が、時には戦争で幾多の被害を出そうとも人々の夢と重なったり、時には民衆に疎まれても保身のために国土を売り渡した結果、欧州の平和を守った傑物たちを、どのような箱に入れろというのか。 プライドが高く、支配と権力への情熱に取り憑かれた戦争狂でありながら、過去の英雄たちを思い出させられる圧倒的な勝利で民衆の心を掴んだ戦争の天才ナポレオン。賄賂、横領がなければ生活ができないほどの豪華絢爛を好み、淫奔にふける放蕩聖職者でありながら、ヨーロッパ全土の権力者と繋がりを持ち、フランスが敗戦してなお国家と民衆の権利を勝ち取った外交術の天才タレーラン。常に自身の王であり、保身のためには虐殺、スパイ、脅迫、教唆と手段を問わない悪漢でありながら、替えのきかない警察機関を組織して国内のあらゆる秘密を手に、政権の治安を維持した陰謀の天才フーシェ。 キャラクター作成の肝要は、如何に欠点が愛される人物を作れるかという論があるが、ひょっとしたら歴史上の英霊はみな、欠点が愛されたからこそ今なお語り継がれているのではないだろうか。 欲深いから能力が低いということは当然なく、欲深いから社会利益に反するということもないが、欲深くなくては、誰のヒーローにも悪者にもなれない。歴史上の人物に限らず、人を理解するということは、その人が過ごした環境に加え、その人が持つ、欲の絶対値とベクトルを知るということなのかもしれない。
文庫版「情念戦争」。まさか文庫化するとは。 にやにや、ときどき吹きながら読んだ覚えが。 タレーラン!タレーラン!
作者の考え強めで時々それほんとかな?と思うこともあったけど、人の情念をもって歴史を切ってみる見方は個人的には好き。ストーリー性が強く見えて面白かった
フランスの革命期から帝政を経て王政復古、百日天下以降へ至るまでを、“皇帝”ナポレオン、“天才外交官”タレーラン、“フランス全土にスパイ網を張り巡らせた警察長官”フーシェの絡みで描いた本。 フランスの哲学者、フーリエの唱えた人間の持つ感情の諸要素(情念)のうち、“熱狂”“移り気”“陰謀”をこの3人に当...続きを読むてはめて、その絡みを解説していきます。 タレーランの“移り気”はいまいちピンと来なかったものの、ナポレオンの“熱狂”、フーシェの“陰謀”は正にその通りだと思いました。 この時期のフランスがとても面白く、分かりやすく感じ、同時に知的好奇心も刺激されて「ナポレオンがなぜ戦争に強かったのか?」や「タレーランが天才的な外交手腕を発揮できた秘密は?」などより詳しく知りたくなります。 作中にも引用されているツヴァイクの『ジョゼフ・フーシェ』と併せて読むと、より分かりやすいと思います。
勝手な想像で、小説みたいな歴史本だと思い込んでいたが、あにはからんやゴリゴリの歴史本だった。しかし、学問的な歴史解釈に明け暮れるのではなく、人間が歴史を作っていくさまが書かれていて、すんなり読める。知らなかった話も読めて楽しかった。
西洋史に詳しくない私でも興味深くわかりやすく読める文体と、鹿島氏独自の切り口の面白さもあって、文庫本にしても分厚い本ではありますが飽きたりだれたりすることなく読み進めることができました。フランス革命をキャッチフレーズ的にしか知っていないと欧州史の見方を誤ってしまうなと反省したところです。 ちなみに...続きを読む登場する3社の中でいうと、ナポレオンは見ていて面白いし、フーシェのポジションには憧れるけど、最終的に自分が目指したいと思うのはタレーランではないかと思います。ま、あんな大物比べたらいけませんけどね。
フランス革命からナポレオンの没落までの大役者、ナポレオン、フーシェ、タレーランの三人と、彼らを突き動かした情念に焦点を当てた歴史読み物。 といっても歴史的資料というよりももっと気軽な内容。何といっても連載元は週刊プレイボーイだ。堅苦しい話は一切無く、軽妙な語り口でぐいぐい引っ張ってくれた。そこそこ分...続きを読む厚い文庫だが、気がつけば怒濤の30年を一気に駆け抜ける。 それもそのはず、読み物としてこれだけ読みやすいのは、着眼点がぶれていないからだ。分かっちゃいるけどやめられないを地で突き進む三人が、周りを巻き込みつつ、互いに相手を誤解し利用して一つの時代が作り上げられていく。その過程は、あの時代の人間たちにとっては不謹慎だが、痛快である。 それにしても驚かされるのは、この三人の飽くなき活力だ。情念としてこの本では取り扱われるが、ナポレオンは常に歴史に向かって突き進み、フーシェはただただ己の能力が発揮できることにのめり込み、タレーランは新鮮で飽きのこない快楽を追求する。ありがちな偉人伝には描かれない側面があるからこそ、彼らは歴史上の人物になり得たのだ。 一番のお気に入りはフーシェ。このカメレオンがナポレオンにトドメを刺したのだ。そして唯一の色恋に迷って舞台から転落する。あわせてツヴァイクの伝記も読むべきだろう。
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ナポレオン フーシェ タレーラン 情念戦争1789-1815
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