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メディア環境の急速な進化、世界情勢の転変、格差社会の深刻化、そして戦争に大震災──。創作の足元にある社会が激変を重ねたこの五〇年。「大文字の文学の終焉」が言われる中にも、新しい小説は常に書き続けられてきた! 今改めて振り返る時、そこにはどんな軌跡が浮かぶのか? ついに成る、私たちの「同時代の文学史」。
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Posted by ブクログ
10年ずつ区切られた、その当時の文学のかたち。 1960年代 知識人の凋落 1970年代 記録文学の時代 1980年代 遊園地化する純文学 1990年代 女性作家の台頭 2000年代 戦争と格差社会 2010年代 ディストピアを超えて 相変わらず読書量も凄ければ、分析力もハンパない。 知らないこと...続きを読むを読めば「ふむふむ、そうか」と思い、知ってる部分を読めば「そうでしょうとも」と膝を打つ。 子どもの頃の私は学校にある子ども向けの世界文学全集を読み、そのほか中学生くらいまでは海外のミステリを中心に読み、高校生でSFにハマり、同時代小説を読み始めたのは子どもが小学生になった頃からだった。 というわけで、この本に関して言えば、1990年代以降からしかピンとこないのが実態。 それはつまり、出版不況が始まってからなんよ。 そんな中、ある程度時代を代表する作家だったり、世の中の確信を作用の作品はたいてい網羅しているのに、西加奈子がなかったなあ、と思いました。
小説は社会を映すことがよく分かった。社会風俗とその時代の代表作を結びつける筆致が巧み。これまで、小説は古典を優先してきたけど、今後は積極的に現代作家を読みたいという気持ちにさせられた。各論で言えば、私小説の系譜とポストモダン系は読む価値がないと思ったが、現代におけるプロレタリアートの系譜は読んでみた...続きを読むい。
読んでいて、非常に濃い時間を過ごし愉しかった。本好きと称しつつも、如何に偏っているかを知ったし、「読めない時期」が結構あって、意外と知らない作家、作品が多いのも解った。 自身が「純文学は嫌い」とかねてより思っているし、今も変わらないのだがその中でも少しは読んできたつもり。純文学に有る「オープンエンド...続きを読む」が好きというせいもある。ヘタレの知識人から始まったというそのルーツの表現法に納得。 同時代文学史とは言い過ぎと感じたのは、そう行ってしまうと「思想史」に通じてしまいかねない事。 それにしては、1960年からの諸々の動きを俯瞰し、見つめ切れているかと簡単に攻撃を食らいそう(そういった流れが好きな人が多いし)とは言え、2000年までがもはや【現代史】と語り始められている今ではタイムリーと捉えられる。しかも女性の口から言われているのはとても好ましい。 やるなぁと言った感慨。 2010年まで、2010年からと大きく分けて語っているのが多論沸騰の可能性を持たせて愉しい。 少年犯罪・DV・格差社会・不倫・母子家庭・キャリア小説等といった食料を糧に書き手が広がり 増えたこの時期。小説は弱者や敗者に敏感という言い方にも納得。 そして今は ディストピアの時代という今、それだけかという気がしないでもない。 しかし、リーマンショックがもはや甘いと言われ、コロナ時代のビフォーアフターがテーマになるのは論を待たぬと言えよう。 女性作家の台頭は認めつつも、ファンタジー、カルチャー、BL,LGBTとひとくくりにできないのがその中身。性差を越えての語りが待たれる。 戦争~イライラ戦争を経ていま、日本の小説も国際化多国籍化は留まるところを知らない。いつ、どこが紛争の場となるのが解らないのだから。 ラスト「1960年は文字通り、航海記」だったがこれからの次代もそうなってほしいと結んでいるのは同感。
さながら近々の歴史をざっくりと見ながら、同時代の文学史をひも解いてくれるとてもわかりやすく面白い文学案内でした。確かにこういうのを待っていました! わたしの読書人生は1950年代の後半から始まっています。その頃は桑原武夫や伊藤整の読書入門や、もう少し詳しいのだと中村光夫の『日本の近代小説』、196...続きを読む0年代後半に出た同じく『日本の現代小説』が参考書でした。まさに斎藤美奈子さんが「まえがき」にそうお書きになってます。 でも、そういう案内は1960年代までで終わっています。このようなわかりやすい案内は今現在2010年代までなぜか空白でした。もちろん専門書的なものはあったでしょうが。 世界が多様性にばらけている今、文学のジャンルも増え、しかも、堺がわからなくなり渾然の様相、まるっと見渡してまとめるのは大変な作業でしょう。 わたしとて情報に限りがあり、何をどう読めばいいのか?何か足りないようなもどかしさがありました。 近代、現代、そして「同時代」とはうまいネーミングであります。 斎藤美奈子さんもおしゃってますが、この新書を足掛かりにして、まだまだ埋もれている作家・作品を発掘しながら、読書人生を歩みたいと思いました。
世に出ている近世(明治)以降の文学の解説本の多くは、60年代の横光利一・石原慎太郎・開高健らで終わっている。著者はその後の文芸の歴史をきちんと解説した書が見当たらないとことに奮起し、筆を執る。カバーする範囲は1960年代〜2010年代までの約60年。我々が生きてきた“同時代”の「性格」を文学で探って...続きを読むいく。 印象深かったのは、文芸評論家の蓮實重彦の考察。70年代半ば〜80年代を代表する小説の「羊をめぐる冒険」「コインロッカーベイビーズ」「枯木灘」「吉里吉里人」「裏声で歌え君が代」「同時代ゲーム」は全て同じプロットの物語である。「依頼」→「代行」→「出発」→「発見」という経過を辿る構成であると喝破。 それを受けて著者は、近代文学と現代文学の差異を絵画を例に挙げ分析する。近代文学が、ミレーやコローのような写実画とすれば、現代文学はピカソやカンディンスキーのような抽象画に当たる。ピカソのデッサンを非難するが、それは旧来の写実的画法では描けないとピカソが考えたからにほかならない。 かつて文芸界で飛び交った「人間が描けてない」という批判は80年代以降には効力を失った。現代文学はそもそもそれまでの小説の意味や技法に疑問を抱いたところから出発している。その代表格が、高橋源一郎・島田雅彦・田中康夫らである。確かに各氏の処女作は物議を醸した。 この様に小説は時代を斬り、時代が小説を産んだと言える。本書には、約300篇もの小説を10年単位で区切り、当時の時代の空気をすくい取りながら、簡潔な解説の中に時に容赦のない筆誅を下す。 すっかり廃れたと思っていたプロレタリア文学や私小説がその形を時代の器に合わせ変容し生き延びていたり…同時代の文学を鳥の眼と虫の眼のデュアルレンズでもって、昭和~平成の世相史が学べる副産物もある労作。
60年代以降の日本文学史ということで、私はまあまあリアルタイムで読んできているものが多く、臨場感モリモリだった。 しかしこれだけ多岐多彩に渡る作品群を、まずはもちろん読み、明解に解析し、グルーピングする手腕はさすが。 こうしてみると、私小説や不倫小説のめった斬りは爽快だし、フェミニズム文学もうまく...続きを読む網羅しているし、偽史が意外と多いというのも納得。
さすが美奈子オネエサマ、ズッパリ切り込みつつも読者を小説の世界に誘い込む仕掛けがふんだんに盛り込まれている。読みたくなった本が多数、困った。
非常に面白く、興味深かった。「同時代小説」を俯瞰的な視点で分析し、特徴を抽出することがいかに難しいか、ちょっと考えてみればすぐわかる。その困難に果敢に挑んだ本書、なるほどねえ、言われてみればその通りとうなずくことしきり、さすが斎藤美奈子さん。 60年代から10年ごとに、売れたり話題になったりした作...続きを読む品をとりあげ、そこに刻印された「時代の空気」を鮮やかに読み解いていく、その切れ味に唸ってしまう。文学というのは、現実から遊離した場所で行われる営みのように思ってしまいがちだが、なんのなんの、本書を読むと、これほど「時代」の要請によって創り出されたり読まれたりするものなのかと、目から鱗が落ちる思いだった。 また、自分の読書歴を振り返るという点でも実に面白い。教科書的な「名作」ではなく、まさに「同時代」のものとして読んだ作品の数々。はっきりそう感じた最初のものは、高校生の時、刊行後しばらくしてから読んだ「赤頭巾ちゃん気をつけて」だった。それから2000年あたりまではここに出てくる作品の多くを読んでいたのだが、それ以降は急に未読のものが増える。そうだ、この辺で自分の趣味嗜好が固まって、手当たり次第に読んだりしなくなったんだなあ。特に最近の小説がどうも苦手で敬遠してしまうのは、やはり自分が旧世代に属するようになって、作家の問題意識を共有しにくくなっているからなのだろう。 多くの作品について内容が簡単に紹介されているのも嬉しいところ。食わず嫌いはやめて、気になったものを読んでいこうかと思う。 オマケ 美奈子姐さんおなじみの啖呵は、ここでは控えめ。それでも村上春樹へのピリッとした批判や、セカチューとか百田のベストセラーをバッサリ斬っているところなんか、やっぱり痛快。
1960年代〜2010年代までの小説を 時代背景ととも分析。 近代日本文学(〜1950年代)は「ヤワなインテリ」がいつまでも悩んでいるヘタレども。 60年代 大学進学率上昇に伴う 知識人の凋落 70年代 公害問題等による 記録文学の時代 80年代 バブル経済 遊園地化する純文学 90年代 バブル崩...続きを読む壊後 女性作家の台頭 00年代 9.11.リーマンショック 戦争と格差社会 10年代 3.11以降 絶望的ディストピア 芥川賞受賞した芸人さんのあの作品も往年の私小説に近い自虐的なタワケ自慢と貧乏自慢と一刀両断。 市場縮小も著しく、新しい表現による小説は なかなか厳しい時代のようです。
さらっと書いてるけど、これすごい本なんじゃないか? 1960年代〜2010年代の小説を、純文学・エンタメ小説問わず数行で紹介しつつ、その潮流と背景となる出来事を解説している。必ず読んだこと(聞いたこと)がある作品が含まれている。 最初の方はまだ文学史という気分で読めたけど、自分の読書生活と重なる90...続きを読む年代以降は時代の暗さや作品の痛々しさが辛かったが、解説が的確で未来の展望まで示しているのに救われた。 これを同時代でやってのけるの、やっぱりすごくない?
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