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理性があることは進化で有利なのか。どのようなかたちの理性が進化したのだろうか。最新の諸科学の成果をふまえながら、ヒトらしさの根源に迫る知的エンタテイメント。戸田山和久氏推薦。
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Posted by ブクログ
ごく最近までの知見がものすごく読みやすく整理されている。この分野の中堅〜若手の先生たちはほんとに優秀よね。
理性とは何か。 「俺の理性が残っているうちに、とっとと消えるんだ」「理性的になりなさい」とか、「理性を失いそう」など、茫然自失、暴力や性的、時にスーパーサイヤ人に変身するタイミングで使われる〝理性“という言葉。冷静さを失い、衝動的な精神状態に変化する境目を表す言葉である。 本著では、それを合理性...続きを読むと非合理性として区別して説明する。理性的だからといって客観的な最適行動が取れる訳ではないのだから、理性=合理的にはなり得ず、単に感情が落ち着いている状態に過ぎないと思うのだが、このツッコミは一旦置いておく。 理性の起源について、思弁的、哲学的な答えを除けば進化論的アプローチだという。それを二重過程説、つまり、「ヒューリスティックに真偽を判断する情報処理プロセス」と「論理的に判断するプロセス」が人間には併存しているという事、換言すると、「直観的理性と熟慮的理性」に区別する。頭が良いかは別として、落ち着いて考えるかどうか、だ。直観的に最適解を出す、熟慮したが不正解みたいな現象は、想定しない。 という事で、思考スタンスの違いが人間にはあるが、それは進化する上で必要な違いだったという話。思考した結果については、直観的かつ正解のパターンは天才とか、熟慮の誤りは愚鈍とか、当然散布図の中にはそうした存在もある。 リンダ問題や4枚カード問題、ストリップバーでのチップ額による研究論文など、有名な話も多く紹介されるので二重過程説も含めて、焼き直し感、既視感の高い読書。副産物として、客観的な合理性とは何かを改めて考えさせられた。
人間が理性的な判断ができる固有の認知モデルについて、筆者の仮説や論点提示から丁寧な思考過程を辿りながら学べる。 心的リハーサルという認知能力がキーになっている。時や空間を超えて、認知、想像する力を人間はもっているから、見えないもの、心的距離の隔たってた対象にも判断ができるし、自分を超えて、集団とし...続きを読むての判断をくだせる。 未来を考えられるからこそ絶望もする人間だが、希望を持てるのも人間ならでは、という視点は的を得ている。
進化と理性は両方とも興味ある分野でこれまでも何冊か読んでおり、中にはその2つがはっきりとクロスオーバーした形で論じられているものも既にあったが、今回は帯の「戸田山和久氏推薦‼︎」のアオリに惹かれて思わず購入。本書は人間が「合理的」であることの意義を探り、「1)そのような性質がどうして我々に備わるに至...続きを読むったのか」「2)時として過剰な合理性を呈してしまうのは何故か」の2点について、認知心理学、科学哲学、進化生物学等の諸分野を横断しながら考察したもの。 ダニエル・カーネマン "Thinking fast & slow" 以来、二重過程論についての一般向け書籍が多数出版されてきたが、本書ではそれら諸学説が簡潔にまとめられていて、これまで得た知識を再整理するのには役に立った。しかし逆に言えば既存の説を教科書的に紹介するのみで、著者なりの知見や新しい解釈の提示はあまり多くない。例えばジョシュア・グリーン「モラル・トライブス」と重なる記述が多く感じられたのも個人的にはマイナス。各章間に挟まれる「ボックス」にはもっと掘り下げて貰えると面白そうなテーマが提示されているのに、ちょっと残念。ただ文章は読み易いのでこの手の本を初めて手に取る向きにはうってつけかも。なお、表紙に人間の子供の写真が使われている理由は終章まで読むと明らかになる。
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網谷祐一
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