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哲学者にして京都市立芸大学長の鷲田清一と、ゴリラ研究の世界的権威にして京都大学総長の山極寿一による対談。旧知の二人が、リーダーシップのあり方、老い、家族、衣食住の起源と進化、教養の本質など、さまざまな今日的テーマを熱く論じる。京都を舞台に、都市の思考と野生の思考をぶつけ合った対話は、人間の来し方行く末を見据える文明論となった。
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Posted by ブクログ
哲学者で元大阪大学総長の鷲田清一氏と、ゴリラ研究で著名な山極寿一京都大学総長の対談。 ただ第1章からリーダー論がぶっ放されていて、改めて知を探究すると射程は広く、そして「僕たちはどう生きるか」という問題に集約されていくのだなあということを実感。 文科省が学習指導要領で「生きる力」を提言してからでも...続きを読む随分経つが、文科省が(あるいは日本の政府が)進めようとしている教育改革が、たとえば本書で述べられているような「生きる力」を涵養するものであるかと自問すれば、甚だ疑問であるというよりは、正反対の方向に進んでいるような気がしてならない。 複雑化する国際社会と日本の現状を踏まえた上で、大人としてどのように振る舞えばよいか。 最近自問していることは、結局そういうことに尽きるような気がしてきた。
この本は読んでいて気持ちが良い。先に読んだ本が「大学が新しい時代に応えられる人材を…」というような内容だったので余計にそう感じた。
鷲田さんと山極さんの対話形式で進み、様々なテーマについてそれぞれの知識や経験から考え出された事を分かりやすくまとめてくれてあり、どれも面白かった。お二人のようにに開かれた専門家を目指したい。
学問でも自分基礎修練の中で積み重ねてきたものをいちどチャラにするような視点を持つことが大事。回り道をしているようで、普通なら普通ならもったいないと思うところです。せっかく蓄積したものがあるのにそれを役立てず違う方向に行ってしまうなんて。けれどもあえてそうやってみる先にまったく違う世界がひらけてくる。...続きを読む →鷲田さんの例でいえば、「基礎修練」(主に書物、原典研究)の後、ケアの世界やファッションに行った、その後、臨床哲学という看板が掲げられた。これは歴史で言えば、過去を知った上で、どう未来を構築していくか、私をそこに位置付けていくかというときに、「現実」という場所が希求されるということだと思う。その「現実」が、鷲田さんにとってはケアやファッションだった。それらへの考察を経て、立ち上がってきたのが、おそらく哲学史を踏まえた上で、次に哲学が接続すべき領域、流れていくべきいく先である臨床哲学ということだったんだろう。哲学の枠組みや流れを踏まえつつ、現在に希求されるべき哲学のあり方を、現在という「現場」に身を放り込むことで立ち上げていったということだろう。 以下引用 あいつ頭ええかなと言われたら馬鹿にされていると思え。あいつはおもろい、と言われて初めて褒められたことになる。おもろいというのは、これまでの通説や、それらが依拠している基盤そのものを揺るがし、覆す徴候を見てとったときに発せられることば。頭がいいとか、できるというのは、今流通している基準の中での評価でしかない とんでもないことを言い出すやつを放逐したり飼い慣らしたりするのではなく、あえて野放しのままぬしておく場所、その意味では大学が引き受ける社会貢献は社会実験 人の上に立って人を手足のように使う、そんなのは本当のリーダーではない ダイアログは、話の最初と最後で自分が変わっていなかったら意味がない。話せば話すほど自分と相手との差異が細やかに見えて来る。お互いの差異がより微細にわかるようになるのが、ダイアログ 簡単にリセットできる、そういう社会はやばい。 人から聞いたストーリーなら体に素直に入ってくる。それが人の行動を規制する。 ゴシップを共有して、知識を共有し、子どもは学ぶ。あそこのおじさんはあんなことしたからこきおろさえるんだなと肌感覚で理解する 料理は人と人を会わせるための場所づくり 文化は隔世代で伝わる。現役世代は忙しくてゆっくり子どもの相手をしている時間がない 子どもと付き合うようになると、自分を抑制し、包容力を培わねばならない 成熟した社会は、うれて腐乱状態にあると同時に、未熟さを深く宿している社会でもある。ここでいう未熟というのは、何かに夢中になったら他のことが目に入らなくなったり、じっとしていられなかったりする様子 学者や芸術家の多くは未熟な部分を持ち合わせている すごい学者は往々にして変人。世間のことなど何も気にせず、自分の世界だけをとことん突き詰めていく。そうした未熟さこそが文化の原動力。 人が大人になるのは、未熟なものをしっかり守るため。自分の未熟さを守るためにこそ人は大人になる 連綿とした歴史の重みを感じれば人はおのずと居住まいを正すものです。歴史の重みを息吹を孕む空気が、今の世界だけを基準に考えていてはだめだと教えてくれる イノベーションはあくまで結果。成果を出すには考える時間が欠かせません。 昔のこどもは自分たちの世界と大人の世界が違うことを肌で理解していました。世の中には今の自分にはわからないことがある。そこで年上の人の真似をして考えることを学んでうたわけです。大人のおしゃべりを聞きながら、大人の気分になったり、人の真似をしながら、自分の頭で考えることを学んでいた リサイクルはいかん。古いものをそのまま使うのでではなく、古くなったものを、材料として新しいものに変えて、それをまた使っていこうという発想。古いものを保存して、大切に使う、そうじゃないち古いものの姿がどんどん見えなくなっていく ほんまものの気品。これを通じて子どものころから皮膚感覚が養われるから目も肥える 何が大切なのかを判断するのに、物忘れはちょうどよい手段。大事なことは忘れない 今はみんなが何もいわずに、お互いに村十分して暮らしている 趣味の集まりみたいなものはせっせとやる。大切なのは、命の世話を一緒にやることであって、そうではない、やってもやらなくてもよいことをいくらやっても本当の人のつながりは育たない 子どもが自分の味覚を満たすために、家族以外の大人を働かせている。このことに強い違和感を覚える。子どもが消費主体になっている。消費主体のこどもにすれば、自分のお金だから何に使おうと勝手、誰にも迷惑をかけていないと。そんな全能感をこどもが持つのは危うい。お金がなくなれば、一転して極端な無力感に陥る お金以外で人が動いてくれるのが、人と人とのむすびつきの力 芸術の起源は共感生。同じものを見ているという感覚を共有する アートの根源には、ある種のセンサーが働いている。アートとは何かを考えたときに、その根底に違和感があること。ー何か気持ち悪い、居心地が悪いといった感覚。こうした違和感こそがアーティストをアーティストたらしめている現感覚。異変を感じとるセンサーがある。 人間には2種のセンサーがある。微分回路と積分回路。 微分回路は、感覚入力のうち変動部分のみを検出し、そこ微細な徴候を読み取って、未来を先取りしていく思考回路。一方の積分回路は、過去の経験を索引として参照しながら入力を整理しつつ、事態に対応していく回路。前者の微分回路は微細な変化のみ感応するため、ノイズを拾いすぎて誤作動しやすいし、そのことで動揺も増幅しがち。芸術的感性は、おそらく狩猟民族的=微分回路的。微細な違和感に常に敏感であろうという直感的な判断力に優れている たくさんデータを集めて過去の論文を分析すると研究したような気にもなる、短期的に成果を出せることもある、しかも作業は書斎の中だけで完結する わざわざアフリカのジャングルにまで行って、とんでもないものを見つけたといっても、なかなか信用してもらえないし、学問としても簡単に認めてもらえない。けれども従来の学問のパラダイムを変えるような発見はそういうところから生まれる。ノーベル賞級の研究者は、狩猟採集的でqり、現場発見型。 時代を支配するパラダイムから見れば取るに足らないものに注目して視座そのものを変える 優れた研究者は日常的な世界に暮らしながら、普通の人とは異なる見方で世界を捉えている。何これ、みたいなものに目を留める。いわば着眼点のオリジナリティ。 本当のアーティストは、ある段階から自分ののうryを封じ込めていく。少し屈折することで、自分の能力のさらに深いところからいまだ眠っている能力を掘り起こす 山登りや探検の得意な人が向いているかといえばそうではない、むしろ山なんか登ったことがない人がフィールドに出て、とんでもない発見をすることがある、要するに着眼点の違い 学問は、その領域をちょっと超えたところに旨みがあえう 画家が自分の器用さを封印するのと同じ。積み重ねてきたものを一度チャラにすること 回り道をしているようでm普通ならもったいないと思うところ。せっかく蓄積したものがあるのに、それを役立てず行ってしまうなんて。けれどもあえてそうやってみる先に、まったく違う世界がひらけてくる 直感力がなければ、学問はできない。これだ!と閃かなければ。そういうセンスは自然の中で鍛えられる 一種の極限状態に身を置くことで、磨かれる能力。理屈でうごいていては手遅れになる、瞬間的に判断して飛ばなければ 成果や、その先にある経済効果度外視して、おもろい!だけで研究する 自分の研究が何かの役に立つと感じたのは、大きなブレークスルーを起こしてから そもそも何かに役立てようという発送がない。知りたいという純粋な欲求だけ 全体のコンテクストなど考えない。全体に目配りすることがでっkない、今あえて、そういう人物が存在することの重要性を強調したい。 ひと昔前には意味を感じなかった学問が50年後に意味を帯びてくることもある
対話が面白い、読みやすい ファストフードを食べる姿を見て、チンパンより孤独。そう言う意味では人類史は退化している
ふむふむ なぁるほど と これまでの著書を辿らせてもらった お二人 哲学者の鷲田清一さん そして 人類学者の山極寿一さん お二人の対談集 お二人の対談を拝聴しながら あれやこれやのことを 考えさせてもらったり 途中で あの本にあったなぁ と振り返させてもらったり いい時間を 過させてもらえました
そもそも人間とは社会とはを、人類も生物の一種類であるという原点に立ち返り、専門家からの示唆にとても興味深い良著。
模試の文章で使われていたのが面白くて原典を見つけたので読んでみた。 鷲田さんも山極さんも現代日本でもトップクラスの知の巨人だが、お互い違うジャンルなことを生かして色々な視点から現代社会を見ていく。対談形式で文章も非常に読みやすかった。 ・教育(特に大学教育)が向かうべき方向性について ・人間そし...続きを読むて都市の成熟について(京都について) ・人類学的な家族形成について ・アートについて(アートは唯一目的を持たない人間の行動だ!) ・食と性の比較(動物は食を隠し性交は公に見せるが、人はなぜ食を人に見せ性交を隠すように進化したのか) ・教養とは何か(人が考えるということの意味と効用、これからの未来について)
様々な知識と広い見識を持つ2人の多岐にわたるテーマの対談はどの話題を取っても好奇心が擽られ読みながらワクワクする。 ミーティングでは相手を役職名ではなく必ず「さん」付けで呼ぶ。呼び方一つでその場の空気が明らかに変わる。 リーダーとは自分がいなくても周りがうまく動くようにセッティングする人の事。g...続きを読むetting things done by others. リーダーは周りの人の適性や能力を的確に判断し、チームワークを先導して目的に向かってみんなをまとめる。リーダー自身は目立たなくていい。 本当は強いんだけど、それを抑えている事が出来る。これが愛嬌。ゴリラのリーダー。 ロビン・ダンバー「人間の会話のほとんどはゴシップでできている」 明治9年までは妻は実家の姓を名乗らなければならなかった。夫の姓を名乗るようになったのは明治31年(1898)とは案外日本の家族の歴史の概念は近年大きく変わったんだな。それまでは養子をよくとるし、そこに外から妻を迎えるなどしたら、〇〇家という完全に血縁はなくなる事があった。 そもそも人間の子供は共同で保育する様に生まれついている。これが他の霊長類との決定的な違い。人間の赤ちゃんのみ泣く。ゴリラ、チンパンジー、猿も赤ちゃんは泣かない。なぜ泣くか?母親が赤ん坊を離すから。他の霊長類は生まれてから1年間は赤ん坊を胸に抱いて離さない。しかし人間の赤ん坊は重いので母親が抱え続ける事ができない。赤ん坊はひ弱なので自分の不具合を訴えるために泣く。ひ弱なのに抱き続けられないのは脳が急速に発達するために体脂肪率がゴリラの5倍あるから。脳を成長させるには脂肪が必要。ゴリラの4倍近く人間の脳は大きくなる。 絵画などは学問と同じですでに基礎技術が確立されていて、その技術を使えば感じたものを巧みに表現できる。しかしそれだけだといずれ壁にぶつかる。だから近代の画家は例えば右利きの人が左手で描いたり、ピカソなんかもわざと稚拙に描いた。器用さをあえて封印することで逆にセンサーをフルに機動させようとしたのではないか。 一般市民にとっていい専門家とは何か?→一緒に考えてくれる人。専門家が寄り添っていく事。 人間が生きる為に1番重要なのは関係性。関係性を知る手がかりは、相手が何を考えているのか、自分に対して何を望んでいるか知る事。それこそがセンサー。直感力。その上で仲間の意向について自分がどう考えるか。察知しながら行動を規制し、それを前提として自分の行動も規制する。AIにはできない事。
二人ともめちゃくちゃすごい人なのに、 仲良しのおっちゃん二人が話しているような温かさ。 内容もバラエティに富んで、 考えさせられる場面がたくさんあるのに、 居酒屋で先輩の話を隣で聞いてるような気楽さ。 面白かったー。 特に、最後のほうで、 学生は大学を離れて社会人になった時、 自分が学生時代にど...続きを読むういう期待を受けて育ったのかを 自覚してほしいと書かれていたのが心に残った。 いい言葉だな。 まさに教育者のお言葉だわ。
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