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気分屋で無気力な父親が、セキコは大嫌いだった。彼がいる家にはいたくない。塾の宿題は重く、母親はうざく、妹はテキトー。1週間以上ある長い盆休みをいったいどう過ごせばいいのか。怒れる中学3年生のひと夏を描く表題作のほか、セキコの同級生いつみの物語「サバイブ」を収録。14歳の目から見た不穏な日常から、大人と子供それぞれの事情と心情が浮かび上がる。
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Posted by ブクログ
なにをもって「まとも」というのか。 誰かを「まともじゃない」と言い切る津村さんの表現力は潔くて、わたしは誰かをまともじゃないと言い切ってしまうことはその人を否定するように感じるから、思っても言わないようにしてしまうけれど、はっきりと言い切るこの潔さ。強いなと思った。 もし自分がこの作品を出版する立...続きを読む場だとして、わたしはどこかで「もしまともじゃない側の人が目にしたらどんな風に思うだろう」とか思ってしまって、このタイトルをつけることに戸惑いを感じてしまうだろう。 それは優しさとかそういう綺麗なものではなく、単純に自分が「まともじゃない人」に対して持っている差別意識だったり、自分の中にある「他人から見た自分」を捨てきれない自身の弱さなんだろう。ただただ怖いだけなんだ。見えない何かに、脅えているだけ。 たしかにこの作品に出てくる親たちはみんなまともじゃない。その状況の中で精一杯生きている人間だ。 一方で子どもにとって、家族は子どもが最初に触れる社会であるし、親は最初に触れる大人の像となる。徐々に関わる社会が広くなるにつれ、自分の家族が他と違うことや、どこかおかしいことにも気付きはじめる。特に思春期は、ありたい自分と今の自分との間でぐらんぐらんと揺れ動く。親なんて完璧じゃないのに、触れていく大人を、親と比べたりして苦しくなる。なんで自分の親はこうじゃないんだろうって。 だから、セキコは「まともな家」で暮らしていそうな、例えば室田のことを好きじゃない、と思う。すぐに家に帰ることができる大和田のことも気に食わない。まともな母親ではないナガヨシは圧倒的にセキコの味方で、一方で家にいたくないセキコにとって、ずっと家にいるクレは家にいられて羨ましい、と思う。 でもじゃあ、室田の家がまともかと言われたらそうじゃない。大和田もずっと家にいたわけじゃない。みんな、それなりに自分の居場所を探すことや、自分を守ることに必死なのだ。 ナガヨシの独特なキャラクターとその存在感、クレの包容力、室田と関わり、その全てがセキコの心の中に積み重なって、セキコは自身の家族と向き合っていく。 そして、もう一つ収録されている「サバイブ」では室田を中心に世界が描かれる。室田の世界もまた、そう簡単ではない。子どもの目線から見た大人の恋愛、という珍しい視点。 大人になって気が付く。何が「まとも」かどうかなんてわからない。 長く一緒に生活していれば大人も子どももいろいろなことがあって当然だし、みんな外から見れば「まとも」に見えるように、なんてことないように振る舞う。でも、みんなまともじゃない家族の中で、世界で生きている。 その中で、セリカのように楽なポジションを見つけられる子もいれば、セキコのようにどうしても親を受け入れられず、頑なに家を拒む子もいる。ナガヨシのように、上手に関わって、向き合っていく子もいる。 結局、「まとも」かどうかの判断なんて必要なくて、自分がその家族を通してどう向き合って、自分の人生にどう向き合っていくか、なんだと思う。でもそれが親や環境、その子の捉え方次第なんて、酷すぎるよな、と個人的には思う。人類みんなこんな十字架を背負っているなんて酷すぎるよ、神様。 淡々としつつも突き刺すような言葉で、心の機微を穿った津村さんの表現は、すごく好き。 そして、津村さんの作品に出てくる主人公は、いつも正義感が強い。わたしのなけなしの正義感が、彼女の作品に触れるたびに、敏感に反応する。
父親が«働かない»という状態の主人公のセキコ もうすぐ受験なのに、こういう父親がいたらそりゃ、終始むかつくし家以外に居場所を求めてうろつくだろうなと思う 母親と妹が父親に対してそんなに怒っておらず、家の中に味方がいない気がするのもまたしんどい 自分が思春期の頃の、何か分からないけどずっと何か思いつめ...続きを読むたようにイラついていたのをまざまざと思い出した この年代って、何だかずっとあらゆることに怒っているよな それにしても、まともってなんだろうとずっと考えながら読んでいた 出てくる子どもたち、誰も彼も別にいわゆるまともな家は出てこないのだ まともっていうのは何というかただの幻想で、何かあるのがフツーの家なのかもな もう一つ、セキコと塾が同じの室田いつみを主人公にした「サバイブ」もヒリヒリしていてまさにいつみにとってのサバイブな話だった これからお祈りに~でも思ったけど、津村先生はこの年代のどうにもならない怒りや鬱屈した感情を描き出すのがものすごくリアルで上手いなあと思う 津村先生の本は面白いな~
自分の思春期のころを思い出した。 多くの子供は、自分の家がおかしい、まともじゃないってことに気付かないふりをしてるんだと思う。 分かりやすく父親が働かない等の事情を抱えるセキコはそれに気付いてしまう。 中学生が向かい合わなくて良いはずの問題に向かい合って、イライラするセキコ。 友達とバカバカしいこ...続きを読むとしてる間(男子の尾行とか、やってるの、私と友達だけじゃなかったのね)はイラつきも少しは忘れられるんだよな。 セキコの友達のナガヨシが、これまた私の中学時代の友達に似てた。 何が似てるって、気になる異性の基準が、変で興味深いかどうか、というところ。私の友達が1学年下のメガネかけた怒り肩の男子に興味を持って、その男子のデフォルメキャラとか描いてたこと思い出した…。なつかし。 思春期に散々家族のことでイラついても、大学生になると家族のことより自分のこと(恋愛や学校生活)が忙しくなって、折り合いの悪い家族と離れて暮らすことも可能になる。 「サバイブ」に登場する佐和子はその典型だ。 だから思春期の子どもたちは、早く大人になりたがるのかな。 まともな家っていうのは、あんまりないんだよね。 まともな学校、まともな教師も、同じくらいあんまりないけどね。 嫌で嫌でたまらなくても、そこで生きていかなきゃいけない子どもたち。 みんなたくましく大人になっていってほしい。
私も家に居たくない子供時代を過ごしたので、主人公の中学生の感情がものすごくよくわかる。 外から見ればまともな家でも、内実はどこもそれなりに何かあるものなのかもしれない。 親という大人が、実はそれほど大人じゃないって事に気がついてしまう年頃。でも「大人であれよ!」と思ってしまう年頃の親子関係はキツイ。...続きを読む もっと大人になれば、精神的にも経済的にも親と自分を分離できるようになるのだけれど。 主人公たちの心の重苦しさは充分に伝わってくるけれど、淡々とした筆致のせいか読み心地は決して重くなく、さらりと読めます。
私はもう主人公たちの親の年代ですが、中学生のセキコに感情移入しながら読み進めました。 すぐに仕事を辞めてくる父親、それを許す母親、要領の良い妹、イライラしているのは自分だけ……。 「心配しなくていいのよ」「情けない親だって思うわよ」とセキコの母親は耳触りの良い言葉だけを並べ立てるけれど何の解決にも...続きを読むなってないし、働きに出てもいない父親からいっぱしの父親ぶった上から目線の批判をされると反発もしたくなるというものです。 ちなみに、子供に親の性行為を見せるのは虐待にあたるんですよね。 表題作も、もう1つの『サバイブ』も、一見「まとも」に見える家庭でも様々な問題を抱えている……。 どちらもスッキリした結末ではなく、登場人物のある1人が言うとおり「まともな家庭なんてないもんなのか」と再認識するだけで読後感は決して良いとは言えません。 ですが、セキコの苛立ちを「反抗期w」などと笑い飛ばさず、彼女たち思春期の少年少女の気持ちと真正面から向き合う事は大切なんだろうな、と考えさせられました。
違和感…そりゃそうだよね。 まともかどうかなんて、分からないんだから。 自分ち基準で判断するんだから。 そして今日も我が家は緑色のドリンクが 出てくるのだ。うーん、なんて健康的‼
同世代だった時にじぶんが見ていた風景が脳内に広がって、読んでいるのが苦しいほどに14歳の苦悩が詰まっている。 だけど、彼女らの気づきや動きにわたしもちょっと感化されて よーし!と走り出したい気持ちになった。
強気なタイトルに惹かれて手にとりました。 私の両親、とりわけ父親もまともではなく、家庭という小さな社会がとても居心地の悪い場所だったので、主人公に10代の自分を重ね、「普通の家庭の子」をうらやましく、時に妬ましく思う、そんな自分さえもあの頃は嫌だったことを思い出しました。 家族の事って周りに相談...続きを読むし辛いので、この本を通してあえて言わないけど同じように悩んでいる人がいる。と気付いたり思えることで気持ちが軽くなるのではないでしょうか。 ひとつ気になったのは、宿題を写す事に躍起になって時間を使っていたこと。学力は武器やスキルなので、レベルアップ出来るチャンスを自ら棒に振るなんて勿体無い。
なぜかこの本だけ読む気がなくずっと残ってた津村作品、静かに過ごす年末年始に取り掛かる。最初はあまり物語の世界に入り込めなかったが中盤からなるほど…と思えるようになってきた。 こういう家族、イラつくだろうな。しかし中学生ぐらいだとまだ自分の家が正しいもの、あるべきものだと思っていた自分にとっては主人公...続きを読むはずいぶん達観しよその家族まで冷静に見ていられるなと。
中編「まともな家の子供はいない」とそのスピンアウト短編「サバイブ」の2編。 表題作について出版社の紹介をそのまま転記すれば「『一週間以上ある長い盆休みはどう過ごせばいいのだろう…気分屋で無気力な父親、そして、おそらくほとんど何も考えずに、その父親のご機嫌取りに興じる母親と、周りに合わせることだけはう...続きを読むまい妹、その三者と一日じゅう一緒にいなければならない。…』14歳の目から見た不穏な日常、そこから浮かび上がる、大人たちと子供たちそれぞれの事情と心情が、おかしくも切ない。」と書かれています。 この主人公、中学生のセキコ。反抗期という事も有るのでしょうが、とにかくネガティブ。弾まない。もともと私が得意ではないヌルッとした文体で描かれる主人公に魅力が感じられずなかなか前に進みません。ちょっと読んではダウンの繰り返し。そのせいで津井さんらしい「おかしさ」も感じられません。 確かに思春期の子供って「こんな感じだよな~」と思うし、上手いな~とは思う(作品としての質の高さを感じる)のですが。 先日、朝倉宏景の『あめつちのうた』の感想に「面白いか?問われたら、間違いなく面白い。でも、良いか?と聞かれたら答えに詰まります。 」と書きましたが、この作品はその反対「良い作品なのだと思うけど面白くは無かった」。 良し悪しで判断するか面白さで判断するかで評価が割れそうな作品でした。
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まともな家の子供はいない
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津村記久子
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