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1888年、フランスに滞在していた画家のゴッホは、己の右耳を切り落とす――現在でも語り草になっているこの衝撃的な事件はなぜ起きたのか? イギリスの気鋭の歴史学者が世界各地の調査をもとに新事実・新資料を発掘し、「狂気の画家」の知られざる一面に迫る!
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Posted by ブクログ
多くの謎を持つゴッホの「耳」だけを取り上げて、当時の報道や書簡をひとつひとつ丁寧に掘り起こし取材して書かれた一冊。ゴッホそのものは勿論だが、当時のアルルの街の閉鎖的な様子や彼を精神異常者として糾弾した人々の偽証されたかもしれないサインの件等、研究論文と言うより物語としても読み易い。オーヴェル・シュル...続きを読む・オワーズの最期をどんな気持ちで過ごしたかを思うと胸が掻きむしられるようだ。
原田マハさんの たゆえども沈まず を読んで ゴッホに興味が湧き、お試し版から読み始め 結局止まらず本編を購入しました 多くのアーティストがそうであるように 心の葛藤や精神衰弱を抱えたゴッホ。 くらいの感覚でいました。 しかし、この本を読んで、星の数ほどある論文から 丁寧に丁寧に炙り出したゴッホの姿...続きを読むについて 苦しみを抱えながらよくもまぁ あんなに彩豊かな作品を猛烈に描けたもんだなぁ と、尊敬の念を抱かざる得ませんでした そしてその人生の深さ、彩りを鮮明にしてくれた 著者の執念とも言える調査力には脱帽です。 一つの点としての論文は数あれど それが説得力を持って紡がれた糸は極太でした! 文章はストーリー仕立ての部分もあり 非常に読みやすく 著者の調査過程や苦労、悔しさ、喜びを一緒に味わえるものになっています。 この本を読みつつ、ナショナルギャラリー展を訪れ ゴッホのひまわりを目にすることができたことは わたしにとって幸運でした。 ギラギラとまるで、そのものが光を放つような そんな文面の魅力も感じながら本物に触れ合えました。
ゴッホに関して知っていると思っていたこと。例えば、アブサンの飲み過ぎで精神的におかしくなっただとか。ゴーギャンとの関係は愛憎悲喜交々であったとか。そのような話が如何に後から脚色された虚飾であるかを、膨大な資料を文字通り掘り起こし系統建て積み上げた事実に基づいて質す。その執念のような仕事ぶり。美術史家...続きを読むでもなく伝記作家でもないイギリス人の著者が、ゴッホが切り取ったとされるものが耳たぶのみなのかそれとも耳の大部分なのかを解き明かそうと試みる。徐々に明らかとなるゴッホの人生の一部についても当然興味深いが、著者の積み上げる断片的な資料が徐々に形を成し百年以上昔のフランスの片田舎を活き活きと蘇らせる様そのものがとても興味深い。推理小説から感じる興奮とよく似た感情の高ぶりを覚える。 夥しく挿し込まれる注釈の殆どは一次資料への参照であり、一般的な読者には無機質な文字の羅列のようにしか思えない。しかしそのことが正に著者バーナデット・マーフィーの積み上げたものの確かさを支えている証拠でもある。特にアルルの市井の人々の実在を教会や病院の記録から立ち上げ、署名を一つ一つ突き合わせて真贋を見極め、コッホに係わった人々のその性格のようなものまで詳らかにしようとする徹底ぶりには唖然とさえする。そして、ゴッホが耳を届けたとされる女性に関する事実の解明に関する下りにはよく出来た法廷ものの小説を読むような興奮すら覚える。ラシェルなのかギャビーなのか、何故その混乱が起きたのか、その女性は本当に娼婦だったのか。もちろん最後の最後まで何故ゴッホが耳を彼女に渡したのかという問いに対する確実な答えには辿り着くことは出来ないのだが、手渡した耳とされるものが何であったのかを含め諸々の伝聞を事実に落とし込み解明する。何度も言うがその徹底ぶりには脱帽する。 ゴッホ〜最後の手紙、世界で一番ゴッホを描いた男。何だか最近ゴッホに引き寄せられているようだ。
著者はイギリス生まれでプロヴァンスに住む美術史教師だったが、病気をして暇ができたのを機に、ゴッホの耳切り事件のことを調べてみようと思い立った。ゴッホは耳を切ったというが、耳を全部切ったのか一部だったのか。切った耳を誰に手渡したのか。いったいなぜそんなことをしたのか。 専門家もびっくりの執念深い調...続きを読む査で彼女が明らかにしたことは3つ。1つは、いくつかの資料が伝えるようにゴッホが切り落としたのは「左耳の一部」なのか、ゴーギャンが言っているように左耳全部なのか。これについては、耳を切ったゴッホを最初に診察したレー医師が後年、『炎の人ゴッホ』の著者アーヴィング・ストーンに耳の切り方を図解したメモを発見する。事件から40年以上もたってからのメモだが、これは記憶違いをするような事柄ではないのでかなり信憑性があるとみていいだろう。 第2に、ゴッホが切った耳を近隣の娼館の娼婦ラシェルに手渡したと当時の新聞に書かれているのだが、この人物を特定したこと。それは娼婦でもなければラシェルでもないのである。 第3は、アルルの人々がゴッホを危険な狂人だとして騒ぎ立て、当局に嘆願書を提出して彼を追い出し、そのために彼はサン−レミの精神病院にはいることになるのだが、この嘆願書がアルルの人々の総意ではなく、ごく一部の人の利害に基づく、一種の隠謀だった証拠を発見したことである。 肝心のなぜゴッホが耳を切ってそれをラシェルならぬ、娼館の小間使いをしていたガブリエルなる少女に渡したのかである。しかしこれはゴッホの内面に関わることであり、彼がその内心を吐露した手記でも見つからないかぎり何ともいえないことである。著者の推測によれば、それはとても利他的な意図を持った行為であり、しかも誰にも理解されないような論理に駆動された行為なのである。著者の推測が当たっているかどうかはわからないが、それなりに説得力はあると思う。まるでゴッホは宮澤賢治的に思えてくるのだが。 ともあれ、ミステリを読むような面白さであった。
私は今までゴッホが自らの耳を削ぎ落としたのは、耳の一部、耳たぶだと思っていた。が、著者は丹念な情報収集によって、ゴッホを診察した医師が書いたスケッチ、耳のほとんどを切って耳たぶが少し残っている状態を示しているものを見つけ出した。
まず、こんなにも謎が多く、そして謎解きつくされた人をまた謎解こうとした著者に感服。 もう正しいことでは無く好きか嫌いかで言えば、この本のゴッホは好きです。
地道な作業から積み上げて,ゴッホのアルル時代から自殺までの事件を解き明かす.耳全体か耳たぶか,アルルの人々がゴッホを追い出したのか,ゴーギャンはゴッホを冷たく見捨てたのかなどの疑問点に答えを出してすっきりさせている.そして何より傷つきやすくプライドの高いゴッホが,人の温もりを求めながらも手に入れられ...続きを読むなかった様子が描かれています,ここにゴッホが生きて苦しんでいるのを見るようでした.労作だと思います.
繊細で神経質ゆえ、苦悩した画家ゴッホ。 その謎にせまった本書。彼の真実はきっと永遠にわからないのかもしれないけれど、その色使いや筆遣い、作品に込められた思いの熱さは時を超えて響きます。日本を愛した画家。
ゴッホが自分の耳を切り落とした事件を詳しく検証.その時の様子やら果たしてどの程度耳を切ったのかとか.物語は運命の瞬間に向かってじりじりと進んでいく.資料集めなど筆者の苦労話が多く,別に結果だけ書いてくれても良かったんじゃない?
ゴッホといえば、ヒマワリの絵と耳を切り落とした狂気の人という印象は誰にでもあるだろう。そのゴッホの耳はなぜどのように切られたのかを徹底的に調べ上げたのが本書。 アルルを訪れ、公文書館で当時の膨大な記録を一つ一つ調べていくという地道な調査を積み上げ、少しづつゴッホに近づいていく。そして、少しづつ見えて...続きを読むくる当時のゴッホとその周辺の人々。ゴッホを支え続けた弟テオ、ゴッホを見捨てたと言われるゴーギャン。それぞれの新たな姿を探り出し、ゴッホの病の深刻さが読み取れる。 著者がエピローグでも書いているが、一つ一つは大きな発見とは思えなかったものの積み重ねが、新たなゴッホ像を構築していく。 ゴッホの画集をそばに読むとより面白さが増したかも。 今公開されているゴッホの絵が動くというゴッホの映画、見てみたくなった。
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ゴッホの耳─天才画家 最大の謎─
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バーナデット マーフィー
山田美明
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