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博物学への憧憬と好奇心を携え、生きものに魅せられた怪しい男が、近所の裏山から地球の裏まで徘徊する。博物学とは、好奇心とは何だ。昆虫学者が綴るフィールドの「怪」進撃。
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Posted by ブクログ
著者の子ども時代、すげえなあ。小さい時から虫に取りつかれている。こうでなくっちゃ、虫博士にはなれんよなあ。虫についての著者の奮闘、すさまじく面白い。はああ、って感心、茫然って感じ。内容、豊富で濃密、すごいよすごいよ。日本学術振興会のお仕事の後の勤め先が見つかることを祈っています。
いやー,面白い本だった。 著者は,「好蟻性昆虫」を主な研究対象としているようだけど,本書の題材は,その研究に付随しながら,著者の好奇心のおもむくまま,もっと多岐にわたる。 で,そんなマイナーな研究をちびちびとやっている話かというと,そうじゃない。 文章が上手だからなのか,「研究が大好きだ」と言うこと...続きを読むが伝わるのからなのかは知らないが,この極めてピンポイントでしかない話題を,たのしくドキドキしながら読ませる力がある。 文章力があるんだろうなあと思う。研究者然としない文体は,とても好感が持てて,「おれも研究者になりたかったなあ」って思ったりもした。 著者の小さい頃を知っている知り合いの話では,その頃から「研究者にでもなるんかな」と思っていたというから,こりゃ,本物だ。 「私が,私の知識欲を満たしたくてやるのだから,そして何より,そうした研究のなかにこそ科学という言葉の本来持つ重みが隠されていると,私は思うのである。(p.262)」 いい言葉だ。
昆虫研究者である小松貴氏の著書、彼の専門はアリに寄生する生き物「好蟻性生物」なのだそうだ。多くの生物学者と同じく、小松氏も子供の頃から生き物好きだったらしい。しかも二歳の頃にアリの巣に住み着くコオロギを発見するなど、好奇心だけではない鋭い観察眼の持ち主だったようだ。 今でも小松氏が研究対象としてい...続きを読むるアリヅカコオロギにはいろいろな種がいて、アリから直接餌を受け取るスペシャリスト型や、アリに嫌われながらもアリの巣に住み続けるジェネラリスト型など、見た目はほとんど変わらないのに非常に興味深い生態である。 近年、外来生物による生態系の破壊が問題になっているが、小松氏が解説するところによると生態系が健全でしっかりしていれば、外来種が繁殖する隙が無いのだそうだ。いとも簡単に外来生物が住み着いてしまうという、環境を作ってしまった我々にも問題があるのだ。 マイナーな生物を好む自らのことを奇人と称しているが、このような人のニッチな研究によって、世界が救われる日が来るのかもしれない。小松氏には今後も更なる奇人っぷりを発揮していただきたい、非常に面白い作品でした。
バードウォッチングや植物観察のような比較的知名度の高い自然観察でも、普通?の人から見ると、「鳥を見てどうするの」といわれることも多い。道ばたの石をひっくり返して蟻の巣の中に同居している生きものたちに夢中になっていれば更に変な人あつかいされるのは、同類項としてよくわかる。でも研究者でなくても、世界中の...続きを読むどこにいても、当たり前と思われている生き物を眺めていても楽しめる人はしあわせだと思う。変人バンザイ。
傑作。後半になるにつれて文章がノッてくる。昆虫についての記述も面白いが、真顔で入れてくるギャグ、著者の私生活や信念がたまらなく楽しい。このあとどうなったのか続きが読みたくて仕方ない。
アウトドアマンや猟師、隠遁者を描いた話が好きなので、タイトルに惹かれて手に取る。 本を開いたら、口絵にいきなり「シジュウカラの雛に寄生するハエ」とかの写真が出て来て、あ、やっちまった(いけない本を開いてしまった)・・・と思ったのが第一印象。 著者は昆虫学者(博物学者)で、「アリヅカコオロギ」を中...続きを読む心に、日本の裏山にいるような(と言うとありふれたつまらないものと最初は思うわけで)虫たちの生態や苦心の発見譚をめんめんと綴る。学術書ともエッセイ集ともつかない。まさに裏山の奇人(著者自身のこと)の書である。 学名や詳細な参考文献リストが載った本でありながら、「どういうことですかバアサン」とか「マルヤマ? 誰だそいつ(と共同研究者をつかまえて言う)」とか「虫採りの楽しさを知らない人間には、逆立ちしたって一生わかるまい」とかざっくばらんな表現が躍っていて、サイコーに楽しかった。 研究者になる(である)ためには、そのテーマが三度の飯より好き、ってのがないとダメなんだろうなあというのがサイコーに伝わってくる。ところどころに登場する「美少女ゲーム」より好きかどうかはともかく。 「アリヅカコオロギ」に関心がなくても、最後まで一気に読ませられた本であった。
『裏山の奇人』ということで(一体どんな奇人なのかしら///)とゲスなときめきを抱いて読む。 腐心してカラスの仲間になることに成功し、心満たされた翌日にはカラスに攻撃されたくなり攻撃対象になるように努力したりと、奇人といえば奇人なのかなと思う。 でも文中のそこかしこに(こんなことするオレって奇人だろ...続きを読む?)っぽい雰囲気が漂っていてそこが個人的に残念です。 真性の奇人かどうかはさておいて、昆虫や動物に対する愛情のほとばしり方が素晴らしいです。 私も幼い頃に野生動物にちょっかいを出しては玉砕し続けた過去があるので、著者の忍耐力には脱帽しました。到底かないません。 動物や虫の習性を逆手にとって観察・推理したり遊べたり、こういう人が研究者でなんだか嬉しいです。 最後に向坂環さんにきちんと感謝していたところが好ましい。
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フィールドの生物学14 裏山の奇人 野にたゆたう博物学
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小松貴
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