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歴史の中の『万葉集』。歌の拡がりを示す、出土した考古資料。民俗学が教えてくれる歌の文化の本質。それらを総合することによって、『万葉集』の新しい読み方を提案する画期的な書。〈情感を伝える歌〉〈事実を伝える日記〉〈共同体が伝える物語〉。古代人は、どうやったら、これらをうまく書き表し、後世に残せると考えたのか。斬新な古代文化論、万葉文化論が、ここに出現。
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Posted by ブクログ
こんな話を高校時代に聞いてれば、古典が好きになったかも。学習要領にもないし、受験にも関係ないから仕方ないか。大学でやっと教えてくれる(先生と一緒に議論しながら考えていく)内容だね。 そういえば数学でも、当時は何の役に立つかわからなかった微分積分も、いまでは仕事で大いに役立ってます。解き方も、考え方...続きを読むも。 自己啓蒙度:★★★★★
万葉集の歌の解説ではなく、万葉集そのものから読み取れること、万葉集が後の時代、文学に対してどういう縁を「結び」繋いできたか、そんな背景や役割について掘り下げていたと思います。 読めば、日本語の成り立ちや特色についても分かるし、万葉集を作り上げてきた人たちの想いも受け取れると思います。 歌を残したいと...続きを読む思う意志があって、歌を残す技術を持つ人たちがそのために尽力した。 二つの確固たる意志があったからこそ今の時代にもこうして残っている万葉集。 ただ歌を楽しむだけでなく、万葉集が今の自分たちに繋がることに何を残してきたか、その辺りのことも掘り下げて考えてみるのも、万葉集を読む楽しみなのかもしれません。
「君の名は」を話の枕にして、万葉集の歌をきっかけに古代のありようを語っていく、おもしろく分かりやすい書。 当時、歌は非常に力を持ってい(ると考えられてい)て、耕作人を集めるために有名歌人を呼んで宴をしたり、イベントの前に詠む歌の下書きをしておいたり。著者も引用している『古今和歌集』の「やまとうたは、...続きを読む人の心を種として、万の言の葉とぞなれりける(中略)力をも入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ」の通りの世界である。そのような価値観の中、どのようにして万葉集が歌い継ぎ記し継がれていったのか。 日本人型知識人とは「言語と文化の翻訳者」のことという解釈、日本的な知性は「組み合わせ」と「ずらし」によって生まれる、という話になるほどと思った。また、「ずらしの工夫」すなわち、原語の意味や原書の内容を意図的に「ずらす」ことで、独自のものを作ろうとするのが日本型知性の特性の一つ、というのも納得した。鎌倉仏教などはその典型だし、入ってきた文化をアレンジするのは現代でも変わっていない。 竹取物語の原型となった歌のやり取りは、ラノベにも通じるようなまさかの主人公無双であるが、古代においてそれほど歌の力は強かったのだろう。 巻末の、莫言に「貴方は私に『万葉集』について、どう語りたいのかい」と訊かれて、「『万葉集』は、七世紀と八世紀を生きた日本人の、声の缶詰でしょうか」と答えたエピソードが好きだ。「この缶を開けると、香りや味が蘇ります」まさにその通りだし、古代の香りや味を逃さないよう読んでいきたいと思う。
万葉集の解説というより、表題のように、万葉集から古代を読みとくという本ですね。 これが、なかなかに面白いですね。 いろいろ、へ〜と思ったことはあるのだが、大きなところでは、日本が中国文化圏の中にあって、中国から学びつつ、中国との比較の中で、日本文化の特質ということを意識し、洗練させて行った、とい...続きを読むうことかな。 山上憶良は、官位の高くない地方役人で家庭を大切にする素朴な歌を歌う人、くらいにしか、思ってなかった。 が、実は、山上憶良は、家柄はそれほど高くないのであまり出世しなかったかもだけど、遣唐史で、当時の最先端の知識人だったんですね〜。 もちろん、家族思いのいい人で、「子供は可愛くて、これにまさる宝はない」なんていう歌に偽りはないのだけど、ここで表現されているのは、仏教的な煩悩という考えへの婉曲な反論であり、それこそ人間の自然な感情を大切にする日本的な心情だという一種哲学的な主張だったんですね! つまりは、中国とか、仏教とか、外国の偉大なものを吸収しつつも、そことの対比の中で、自分の文化を確立していくというプロセスなんだな〜。 まあ、そんな話が色々な角度から書かれてあって、最近、考えていたこととぴったりあったな。 万葉集は、天皇から庶民までの歌がのっていて、地位の差はあっても、一人一人の気持ちが表現されるのが大切にされるのが日本だ、という話があるわけだが、この話自体が、実は魏の「文選」に収められた「典論論文」の思想であるらしい。(で、この「文選」の思想が、なんだかハンナ・アーレントを想起させたりするところが面白い) あと、竹取物語の原型として万葉集に出てくる話のなんともトホホな展開に笑いつつ、ジョーゼフ・キャンベルを読んでしまった私には、日本最初の物語である竹取物語のストーリーは、中国、そして世界各国にある物語の典型的なパターンの一つで、そこにはあまり日本の独自性はないことに気づかずにはいられなかったり。 あらためて、文化というのは、単独では存在し得ず、他者の影響、他者との関係の中で生み出されていくのだな、と思った。 が、このことは、日本文化を低く見るものではなく、日本文化を世界の多様性と普遍性に向かって開きつつ、その素晴らしいさをあらためて愛でるためのちゃんとした道なんだと思う。
いにしえの声の缶詰。 万葉集は、古今和歌集と比べて歌のタッチが地声な感じがする。その理由の1つとして、詠われることが前提だったということが挙げられていてなるほど納得。 伝えよう、遺そうとする者がいて、語り継ぐ者がいる。 日本語というある意味やりたい放題な言葉自体も古代の人の悪戦苦闘の賜物なんだなぁ。...続きを読む ソトの事物を吸収してこそ咀嚼する力と知恵がうまれるというのも面白い。
万葉集て、日本生粋ってイメージだったけど、表記やら思想やら色々と取り込んでできたものだったんだなぁ、と。 忘れてるけど、日本語自体どこから出来たんだ、って話だし。 和歌に対しての見方が改まってよかったです。
語ればその瞬間から消えていく運命にある。消えていく運命にある言葉や気持ちを語り継ぎ、残していく営みの中で、万葉集は出来上がっている。それを現代の私たちが読むことで、1,300年前の人が富士山を見て感動したり、孫を亡くして悲しんだり、子供を慈しんだりといったことを一緒に感じることができる。 そういう、...続きを読むある意味では普遍的な営みをイメージするのにはとても良かったと思います。万葉集への興味が深まる一冊です。
万葉集を基にした古代論。 ①歌とは人の心を一つにする ②歌集の成立要件は、作りてと受けてと流通が整っている必要がある ③法会の時に使用した木簡に歌が書かれているのは、みんなと歌を共有するためである ④日記文学が成立した背景
元号が「令和」となって、書店に「万葉集」本の紹介コーナーのようなのが増えている。改元はちょっとした「万葉集」ブームを引き起こしているようだ。 しかし、本書はそのブームの前に出された本で、著者は「本書は、普通の『万葉集』の入門書ではない」と述べており、本書は「古代社会において歌とは何か、『万葉集』と...続きを読むは何であったか」を考えるヒント集、提案集としている。 まず最初に面白いなっと思ったのは、歌の流通チェーンの話。そもそも、今から1300年前の歌が現在もこうして読まれ、語られていること自体不思議な感じがするが、それが著者のいう、この流通チェーンによるものと考えられる。 古代の歌は、「歌を作る」人だけでなく、「歌唱する人」「歌を伝える人」「歌を記す人」「歌を理解し批評する人」たちに支えられているという。当時はそういう役割の人(職業的にその役割を担っている人)がおり、歌を後世に残していく努力をしていた。万葉集が現在も語られているということは、これまでの期間、連綿とそういう役割をしてきた人たちがいたということだ。 次に興味深かったのは、出土された木簡。木簡とは細長い板のようなもので、そこには歌が書かれている。その文字が漢字の羅列であったりするが、それが当時の日本独特の言葉の伝達方法だったということを知ることができた。日本の言語文化という視点でみても面白かった。 本書では、聖武天皇の奈良の大仏建立や、遣唐使壮行の場面なども登場する。本の扉をめくって1300年前にワープしたかのような感覚だ。 当時は、そういうイベントにおいて、必ず宴の場があったという。そして宴では歌が詠まれるというのが決められた様式のようでもあった。そこには、必ず「作る人」「歌う人」「記す人」「批評する人」たちがいたのだ。 本書には、著名な二人の歌人、山上憶良と大伴家持がと登場するが、これらの二人についての記述も非常に興味深かった。 山上憶良は、儒教、仏教、道教、老荘思想に精通した天平時代を代表する知識人だったと著者は述べていた。なぜだか野菜のオクラをイメージしていた私は非常に失礼なことをしてきた(笑)。 また大伴家持の歌日記についても、とても興味深かった。家持はビッグイベントで歌を披露するチャンスに最高のパフォーマンスが出せるよう、事前に歌日記を用意していたという。 出席するイベントがどういうものか、出席した天皇を喜ばせるには、他の参加者を唸らせるには、といったことを十全に事前検討し、いつ指名がかかっても大丈夫なように歌を事前準備していたという。非常にビジネスライクだと感じたし、家持は優秀なプレゼンテーターだったのだなと思った。 そういう家持もせっかくの準備が没ったこともあったり、それでもそれらの情報の蓄積を次回に生かすツールとしたりと、なかなか天平の時代も大変だったのだと胸の内で苦笑いをしてしまった。 著者の「万葉集は、七世紀、八世紀を生きた日本人の声の缶詰」、「万葉集は、言葉の文化財」という言葉が印象的だ。
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万葉集から古代を読みとく
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