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死体にも「格差」がある――。解剖台の上の遺体には、その人が生前、どのように生きてきたか、その痕跡が数多く残されている。老い、孤独、貧困、病…一つ歯車が狂えば、誰もが“悲しい死”を迎える可能性がある現実を現役の法医学解剖医が明かす。
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Posted by ブクログ
この本を手に取る人は多分死というものにある程度興味があるんだと思う。 人が死ぬ原因から死体検案書を発行するまでの格差、人の格差、組織の格差など。 あちらこちらで格差が出ていて、死でさえ平等ではないのかと愕然としてしまう
■人間の体温は28℃程度にまで下がると心臓に不整脈が出て死亡するとされる。 ■凍死した遺体は服を脱いだ状態で見つかることがしばしばある。 ・法医学では「奇異性脱衣」と呼ぶが投資する直前,人は「暑さ」を感じるようになる。 ・体温のコントロールという生命維持装置の誤作動から生じるtこの現象は「矛盾脱衣」...続きを読むとも呼ばれる。 ■法医学で行う解剖には4種類ある。 ①司法解剖 犯罪死体やその疑いがある死体について犯罪捜査を目的として行うもの。刑事訴訟法に基づく。解剖には強制力があり解剖実施するのに遺族の承諾を必要としない。 ②調査法解剖 身元不明の遺体や犯罪に関係のない遺体の犯罪の見逃し防止を目的に行う。死因・身元調査法に基づく。基本的に配属の承諾を必要としない。 ③監察医解剖 監察医制度施行区域(東京都23区,大阪市,神戸市という日本のごく限られた地域)での,犯罪に関係ない遺体の死因究明を目的とする。死体解剖保存法に基づく。基本的には遺族の承諾を必要としない。 ④承諾解剖 監察医制度施行区域外での犯罪に関係ない遺族の死因究明を目的に遺族の承諾をもとに行う。全国の大学法医学教室が担当。死体解剖保存法に基づく。 ■被害者が精神疾患患者であった他殺事件の場合,加害者の8割以上が親族。精神疾患患者本人だけでなく,その家族のおかれた環境が社会の中でいかに孤立しているかが数字から見えてくる。 ■大学で行う解剖の種類 ①系統解剖 学生の解剖学の学習のための解剖。解剖学教室が担当。 ②病理解剖 病院で亡くなった方の診断の確認,治療の効果を調べる解剖。病理学教室が担当。 ③法医解剖 犯罪捜査と死因究明を目的とする解剖。法医学教室が担当。 ■最も多い殺害方法は「頸部の圧迫」。頸部圧迫の分類。 ①縊頚 自らの体重を利用して固定したロープなどで首を吊る方法。 ②絞頚 ロープなどひも状のもの(策状物)を使用して首を絞めて殺害する方法 ③扼頚 手指で首を圧迫して殺害する方法 ■警察庁が発表した法医学解剖の実施率は都道府県ごとに大きく異なる。 ・2015年は神奈川県が39.2%で最も高く,次に兵庫県の33.4%,沖縄県の30.8%,東京都の18.2%,大阪府の15.0%と続く。 ・解剖率が低かったのは,3.8%の群馬県,3.1%の大分県,2.7%の岐阜県,最下位の広島県は1.5%にとどまる。
よくネットで特殊清掃員の人の記事を読んだりするので これももしかしてその先がわかるというか 格差ってこんなとこにもあるのかしら、という 興味本位で読んでみたけど思いの外 かなり、重い。 書いてる人は解剖して死因を追求する先生なんだけど 孤独死って一言では語りつくせぬその人それぞれのドラマがあって お...続きを読む金がなくて病院に行けないとか、明日食べるのも大変だとか 外的ストレスで自ら命を絶ったり 余りにも悲しい現実がたくさんある。 もちろん寿命が来てピンコロ亡くなるのが1番いいけど 今の世の中そうはいかないのかもな お通夜とかお葬式で見る遺体と こうゆうお一人でひっそりと格差問題で (独り身で誰もいないとか、金銭問題とか)亡くなる方は すぐ虫が湧いたり匂いがきつくて 何日も何ヶ月も経って緑色になって亡くなるってのが もう人間じゃないみたいで、悲しい。 こーゆーことも知っとかないとなって思う
法医解剖医の著者が死体解剖の経験に基づく、自身の体験と「死」に対する想いを綴った書籍です。 貧困・孤独・老い の三つの観点から死体を語る3つの章(1~3章)と、「死後格差」(第4章)、解剖医として働く傍ら日々感じていることを綴る「解剖台の前から」(第5章)、「事件の死体」(第6章)「幸せな死体」(...続きを読む第7章)という構成になっています。 死体の解剖というと、TVドラマなどでよくある科捜研での死体解剖をイメージしますが、著者の所属は大学なので我々がドラマで目にするものとは少し違うようです(事件ありきの解剖ではなく、事件性が疑われている段階のものや、遺族の承諾を得て(事件性のない)遺体の解剖も行う)。 「嬰児の遺体を解剖する際、生まれてから亡くなったのか、生まれる前から亡くなっていたのか知るための方法」「介護する側が先に逝き、される側である認知症の老人の命も危ぶまれるという現実」、「カフェイン中毒での死」や「死後も衰えない結核菌の恐怖」、「室内での凍死」など、実際に仕事をする中で目の当たりにしたからこそ見えてくる現実が記されています。 特に印象的だったのは、貧困にあえいで生前風呂にも満足に入れずに亡くなったご遺体の内臓は赤々と美しいのに対し、裕福で贅沢な暮らしをしていた人のご遺体は内臓に脂肪がからみついている(場合によってはいつ心筋梗塞を起こしてもおかしくない状態である)という主旨の記述でした。 様々な意味で、人間は外からだけでは何もわからないものなのだなぁ、と思いました。健康そうに見えるから健康というわけでもなければ、裕福そうに見えるから何一つ不自由ないというわけではないようです。
法医解剖医が「格差」をテーマに死体解剖を語る。テレビドラマの法医解剖医とは違い、事件にはかかわらず死の原因のみを解明する。 通常は知ることがない職業なので、興味深かった。 死体とかかわり、その原因を探るからこそ見えてくる生がある。 男の孤独死(長尾和宏著)の最後に対談として登場し、紹介されていたの...続きを読むで読んでみた。 以下は読書メモ: 貧困の死体 心臓の左側の血液が右側より赤い。ヘモグロビンは温度が低いほど酸素と結合する度合いが高く赤くなる。 栄誉がとれないと熱産生が十分に行われず体温が徐々に低下する。貧困による凍死。 法医学で行う解剖は4種類 司法解剖 事件性が疑われるとき 調査法解剖 事件性がなく身元不明 監察医解剖 承諾解剖 事件性がなく遺族の承諾 孤独の死体 夜間の熱中症 独り暮らし→脳出血→動けなくなる→凍死 アルコール依存症の人で急性アルコール中毒で死亡した人は少ない。ケトン体上昇、酔って池に落ちて溺死、道路で寝て轢かれる、駅のホームから転落など。独りでなければ防げたかも。 老いの死体 認知症の死因で多いのは溺死、凍死、転倒転落死、交通事故死 死後の格差 死斑、死後硬直、体温低下 早期死体現象 腐敗、ミイラ化、白骨化 後期死体現象 頸部(首)圧迫は日本で最もポピュラーな殺人方法 特徴は顔面のうっ血、結膜の溢血点、頸部の皮下組織の出血 縊頸(いけい)自らの体重で首を吊る 絞頸(こうけい) ひも状のもので首を絞めて殺害する 扼頸(やくけい) 手指で首を圧迫して殺害する 解剖台の前から 怖いのは結核。空気感染するから。日本は先進国の中では罹患率が高い。 事件の死体 時津風部屋の時太山の事件 カスパーの法則 遺体の腐敗速度は水中では1/2,土中では1/8まで遅くなる 他殺の場合は死因が明確でも必ず司法解剖となる。 幸せな死体
犯罪が疑われる司法解剖とは違う、死因がはっきりしない遺体を解剖する調査法解剖を行なっている、大学の教授が書いた本。 解剖の仕方も書かれているが、主になぜ死因がはっきりしない遺体なのかということが書かれている。 貧困が多く、貧困のために孤独死だったり、精神疾患があったり、こんな街中でこんな死に方しない...続きを読むだろうという死因で亡くなる遺体が多い。 貧困が調査法解剖を増やしていると言っても過言ではないだろう。 題名の死体格差はまさに一言で内容が想像できる。 筆者は「格差」をテーマにすることに抵抗があったようだ。 解剖する遺体に格差を感じたことはないからだという。 しかし、読者側から見ると、解剖をしなければならない遺体が増えることと、精神疾患、アルコール、自殺などの直接の原因が貧困とつながっているということが見えてくると、やはりと思う部分もあるし、びっくりする部分もある。 死因から、貧困の問題がより見えてきて、今後の対処方法につながっていくのではないだろうか。 まだ統計は取れてないと書かれていたが、しっかり統計もとって、将来のために活かして欲しい。 将来的に間違いなく高齢化社会で孤独死も増えるのだし、貧困が原因で命を落とす人のために、そうならないために何をしていけばいいのかがわかっていくはず。
『ヒポクラテスの憂鬱』のような法医学をテーマにした小説を読み、現実を知りたくなった。 小説は現実と乖離しているわけではないが、現実は小説をはるかに凌ぐようだ。 第一章「貧困の死体」 自宅で投資した男性の話から始まる。 昔ならいざ知らず、路上や山中ならともかく、なぜ暖かいはずの自宅で? それには無職...続きを読む、独居といった要因が関わってくる。 他人と関わらなければ、苦しみや困りごとを訴えられず、金がなければ食事も衣服も十分とは言えず、ライフライン(電気ガス水道)も絶たれてしまう。 そうなってしまえば死は確実に迫り来る。 また近年ではセルフネグレクトという単語も耳にする。 不審死の中にはそれも少なくないだろう。 その根元に格差、貧困があるとしたら私たちはまず何をすべきだろう。 孤独死する人々は決して特別な人ではない。 明日は我が身、なのだ。 191頁に気になる文章がある。 「そうした”見たくない現実”に対して現代人は過剰に距離を取ろうとしているように思えてならない。 ある種の潔癖さが、社会的に役に立たないと判断した人、関われば自分に何か損がありそうな人を排除するような状況を生み出しているのではないか。 そうして弱い立場の人たちが、ますます社会から孤立してしまっている気がしてならない。」 この言葉は日本の問題を鋭く突いている。 誰もが弱者になりうる。 それを恐れて他人を追い落とすのではまるきり『蜘蛛の糸』ではないか。 手を差し伸べられる社会を一人一人が目指せば、私たちが恐れているものが枯れ尾花に過ぎなかったと気づけるはずだ。
読みたかったのは、同タイトルの別の著者の本だった。と読み始めてから気がついたけど、これはこれで面白かった。
法医解剖について、よく知っているという人はほとんどいないでしょう。 解剖される側になる人はもちろんここにはいないし、異状な死や事件に関わることは珍しいし、極めて少ない法医解剖医は社会で声を大にして発言することが少ない。 本書はそんな法医解剖について、法医解剖医が、自身の経験に根差したリアルな法医解...続きを読む剖の実態を描いたものです。 わかりやすい言葉、柔らかいタッチで、亡くなられた方を言葉で傷つけないように注意して書かれています。 法医解剖について知りたい人(どんな人?)がまず手に取る一冊目として、良い本だと思います。 法医解剖にいたるまでの流れはざっくりいうと 異状な死 →警察の検視など(解剖の必要性の判断) →法医解剖 というもの。 本書ではその解剖される方の社会的生活的背景にスポットがあてられ、そこにある貧困、孤独、アルコール依存などが描写されます。 この社会で暮らしている実感としても、法医解剖まで至るかどうかはともかく、異状な死は貧困、孤独などの人に多いだろうと思います*。また貧困の人のほうがアルコール依存になりやすいことはすでに証明されており、アルコール依存の方がおられることもうなずけます。 *法医解剖率(法医解剖数/警察の取り扱い遺体数)は10%くらいとのこと。そのため検視から解剖に至るまでで何らかの偏りが発生している可能性はある。たとえば金持ちは異状死するけど解剖されにくい、とか(そんなことなさそうだけど)。 解剖された方のエピソードを語るその中には法医学的ウンチクも満載なのですが、個人的に印象に残ったのは •借金苦の自殺では借金額は500万前後 •凍死する遺体(都市でも凍死はおこる)は服を脱いだ状態で発見されることがある。(奇異性脱衣) ということです。 これまでもこれからも語ることができない方、 その方に思いを馳せた、貴重な一冊でした。
法医学教室での遺体解剖事例から、死者が置かれた社会状況を考察。貧困、孤独、老い、事件。格差の観点からは、都道府県ごと、解剖率、薬物検査などに大きな差がある。地域の住民サービスの一環に、法医学解剖も含まれると考える。 格差をメインテーマにテレビで紹介されていましたが、著者によると、格差のお題は編集者...続きを読むから与えられたもののようでした。死はすべて平等と思っていたところの視点転換になったそうです。
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