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火宅と化したわが家を救ってくれたのは、「彼女」の眼差しだった。妻との間に生じ始めた亀裂、仕事で出会った女性との心ときめく逢瀬、やがて迎えた家庭の崩壊。その中で二匹の犬との言葉を超えた交情が得難い安らぎをもたらす。だが、別離の時が訪れて……初老を迎えた男の心の危機を繊細に、赤裸々に描き切った哀感極まる私小説。
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Posted by ブクログ
主人公は妻とうまくいっていなくて、子供がいなくて、犬を飼っている中年男・・・。全く同じ状況である自分にとっては激しく共感できた。妻に詰問されるシーンなど、リアルすぎて背筋が冷たくなった。 ただ、そういった状況にない人が読んでも、ただのヘタレたオヤジがグジグジ言ってるだけの話なんだろう。
登場する人間たちには全く共感できなかった。 多分ごく普通のありふれた人物像だったからかも。ウジウジした不倫関係とか、険悪な夫婦関係、ドラマのヒーローやヒロインのようにスパッとはいかないもんなんだろうな。 そんな中で、犬との関係、犬たちの描き方は、読んでるだけなのに手触りを感じることができそうなくらい...続きを読むだった。 猫派の私だが、犬もいいなと思った。 犬好きの人が読むと、「分かる!」と心踊る部分もあるだろうけど、犬にしろ猫にしろ、いずれ飼い主に待ち受ける試練はキツイな..。 で、結局、「妻の犬」は、「私と妻の犬」でありたかったのでは? 人間の場合と同じだと思った。
タイトルどおりの作品だが、小説なのか随筆なのかと思う作品。浮気が原因で家を出て暮らすことになった著者は、経済的な理由で8年後に家に舞い戻ってくる。妻と妻の飼っている犬との、二人と一匹の生活を描いた作品。浮気相手の女性との会話も赤裸々に語られている感があって、妙なリアリティがある。
じわじわ来る。 身勝手な中年男の退屈な話を延々と聞かされているような感覚だったのに、そのやるせない悲哀にいつの間にか同情すら覚える。 浮気というよりむしろ本気だった女性との関係が妻の知ることになり家を出た大学教授。 8年の時を経て経済的理由から妻の元に戻る男。 もちろん穏やかな日々が待ち受けるわけ...続きを読むではなく、妻との関係も修復されないまま。 そんな夫婦の間の緩衝材の大きな役割を果たした二匹の犬。 犬を持ってくるのは反則だろう、とも思うが私小説と言うのだから仕方ない。 掛け値なしに愛おしい存在の犬達。 この描き方が抜群にうまい。 徹底して客観的に描くと恋人や妻と異なり、切ないまでの思いが犬に注がれる。 なんて身勝手な。 杉山氏はノンフィクションライターとのことだが、小説も抜群に面白かった。 他の作品も読んでみたい。 一つだけ引っかかったのは、恋人とは最後までプラトニックだったけれど、これはフィクション?ノンフィクション?と下世話な疑問が残ってしまった。
小遣い稼ぎにカルチャー教室の講師をしている大学教授が、 そこの生徒と浮気をし、いい歳をして骨抜きになってしまう。 ほどなくして浮気がばれ、氷のような妻の態度に耐えきれず家を出るが、 その8年後経済的に立ち行かなくなり妻の元へ帰る。 このなんとも気まずい夫婦の間を取り持つように、尖った空気を和ませる妻...続きを読むの飼い犬。 どんよりとした不倫話の中、愛くるしい犬の存在がひときわ輝いている。 中途半端な態度を責められ、浮気相手に愛想を尽かされるがそれでも未練たっぷりで、 「メイの前の飼い主がもし彼女だったら…」なんて、 思春期の中学生のような妄想を膨らますオジサンに鼻白む。 それにひきかえ、妻に対しては罪悪感があり気兼ねはするものの、 愛情はほとんど読み取れない。そりゃあ捨てられて当然ですな。 これ私小説ということですが、全く男ってのは…。 とにかく主役はまぎれもなく2匹の犬だ。 まるで人の心を読んでいるかのような仕草や表情が愛おしくていじらしい。 読んだら間違いなく犬を飼いたくなりますよ。
壊れていた夫婦の関係にやってきたのは、ラブラドールのななだった。 おてんばで活発な性格のななの存在に、 冷え切った夫婦の関係に変化をもたらせしてくれたのも束の間 大学教授である私は、1人の女性と親密な関係になっているのを妻に知られ、家を出ることになったのは ななが来てから2年余りのことだった。 ...続きを読む 8年後に経済的な理由で別居生活を解消して 久しぶりに戻った家で再会した10歳になったななは すっかり老犬になり、わずか3ヶ月後に亡くなった。 ななの死後、保護犬だったメイを妻が引き取り 再び犬との日々を、過ごした時間。 耳が聴こえないメイが、どんな環境でどんな人に飼われていたのか追跡してよみがえる、ななや、あの女性のこと。 犬っていうのはなんと純粋で無垢で健気なんだろう。 犬はいいんだけど、 夫婦の関係がジメジメしてて、なんだか犬も不便で、 暗い話でつらいわー。
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