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「実存哲学」は専門知を利用しながらそれを超えた思惟と説き、その思惟を手にして人は人になるとする現代「実存主義」の基礎文献。
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Posted by ブクログ
『精神病理学原論』で出発したカール・ヤスパースはいつの間にか哲学者に転身してしまい、1931年にこの大著『哲学』を著す。ハイデガーの『存在と時間』刊行よりも4年あとだ。 この訳書は、ヤスパース『哲学』全3巻のうち真ん中の第2巻「実存解明」だけを訳したもので、しかも最後の方はかなり省略されている。 ...続きを読む このため、ヤスパース哲学の全体像をここで知ることはできないのだが、翻訳の生硬さも手伝って、かなり難解で論理的にもある意味たどたどしいこの文章は、読むのに骨が折れた。 この本を読むと、サルトルはハイデガーよりもずっとヤスパースに影響されたのだということがよくわかる。ハイデガーには欠如している「他者」が、ヤスパースに哲学にはしっかりと組み込まれている。また、どこか文学的な主観性がただよう思考内容は、サルトルの「まさしく文学者」な頭脳の中で一層濃密になったわけだ。 実存主義は哲学の主役を「主体=実存」に置くがゆえに、まさに主観的にしか見えない。この一群の哲学者たちは、フーコーのいう「主体の死」へと連なる時代のカタストロフの中で、あえて「主体」の最後の燃焼を試みたのだろうか。無論彼らはそんなこと考えていなかったのだが、現在から見るとそんな感じがする。 ヤスパース(とサルトル)の言う「自由」は私にはちょっと疑問だし、実存主義が立脚する「意識」なるものが、いったいフロイトの無意識を包含しうるものなのかどうか、大いに疑問なところ。 しかし、「悪」についてのストレートな分析(282ページ付近)はなかなか面白かった。 「自殺」についてせっかく語り始めたのに、関連の章が翻訳・収録にあたって省略されてしまっているのは非常に残念だった。
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