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著者は現象の背後に実在を想定する二元論の仮構を否定する。そして自らが見て触れて感じている現実世界にどっしりと足をつけ、それを超越しているかのごときものをどう捉えたらよいのか問い進めてゆく。独自の哲学「立ち現われ一元論」のエッセンスが詰まった、大森哲学の神髄ともいえる名著。
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Posted by ブクログ
大森荘蔵さんのさんの本は以前読んだときあんまり面白くなかったのだが、これは違う。断然違う。超一級のおもしろさを持つ哲学書だ。 もとは別々の論文であったものを、著者自身がうまくまとめ直して一冊の書物にしている。とはいえ、後半の方とか、トピックは様々だ。 私が非常に興奮させられ、感銘を受けたのは第1部「...続きを読む物と心」である。この部分は難解さも心地よく、常識的な見方を覆すような、それでいてケレン味の無い緻密な論述に心奪われる。 大森は「感情、情念、気分といったものはわれわれを含めた世界の状況の中にあるのであって、その世界から分離された、しかもべったり世界にまといつく「心」にあるのではない。」(P120)と断じる。 彼は心(主体)と対象、対象と表象といった二項対立を徹底批判し、ものについては「立ち現れ」なる概念を提起する。もっともこの「立ち現れ」という概念につういては、おおよそわかるようでいて、敷衍の記述が物足りなくて完全には把握できない気がした。 また、そうした「近代の二元論」を超克しようとした著者なのに、なぜかうっかり「心身二元論」に簡単にはまってしまっている箇所もあった。 しかし「同一性」は必ずしも「同一不変性」が含まれるわけでは無いとして、変容を含みうる術語として「同一体制」なる概念を提起する辺り、なるほどと感心してしまった。 ということで、特に第1部は圧倒的に素晴らしく、また読み返したくなるような、知的魅惑に満ちた本である。いつかまた読みたい。
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