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男性中心の労働環境のため女性が活躍しづらく、少子化が深刻な日本。仕事と家族のあり方は限界にきている。一方、「大きな政府」を代表するスウェーデンと「小さな政府」を代表するアメリカは正反対の国と思われがちだが、実は働く女性が多く、出生率も高いという点で共通している。それはなぜか。歴史的な視点と国際比較を通じて日本の現在地を示し、目指すべき社会を考える。この国で働き、家族と暮らす全ての人へ。
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Posted by ブクログ
仕事と家庭の両立について、国際比較と歴史的背景の両面から詳細に調査し、日本がこれから選択するべき道筋をまとめた良書。ここで示された方向性が正解とは思わないが、平易な言葉で議論に必要な情報がまとめられているので、これをもとに今後を考えるのは有効だと感じた。
日本がなぜ働きづらく、産みにくい社会なのかについて書かれた本。当方のこの本からの学びは以下4点 ①日本の労働環境は未だ男性、正社員が優位であること ②総合職制度、職能給が日本独自の働き方であること ③未婚化、晩婚化は経済的要因ではなく、女性の高学歴化による目指すキャリア像と家庭との両立に困難がある...続きを読むこと ④低福祉の代表国であるアメリカ、高福祉の代表国スウェーデンは共に日本より出生率が高い(1.9程度)
少子化や女性の労働問題などを扱っているひとたちには絶対読んでもらいたい本。 少子化問題を論じる本で提案される対策はどれもピントがずれているというか、表面上の解決方法しか提示されないことが多いけれど、この本で主張されていることはとてもすんなり受け入れることができた。 すなわち、少子化や女性の活躍を阻...続きを読むむ根底にあるのは、日本特有の「長時間労働」や「無限定性」という主張である。 これらを見直していかない限り、いくら育児休業制度や保育所の充実を図ったとしても、根本的な解決にはならないのではないかと思った。
p93 1990年代に25歳から34歳までの女性の就業率が増加したのは女性の「未婚化」によるものである。大学を卒業して就職し、結婚相手を探したところ満足のいくパートナーが見つからなかった。続く2000年代における女性の就業率の増加は、既婚カップルにおいて、女性が男性の所得低下を補うべく非正規雇用に就...続きを読むくようになったものである。女性の高学歴化や経済不況が女性の未婚化と就業を促したものであり、「両立しやすい環境が整った」わけではない。制度的要因というよりは、構造的な容易によるものである。 P111 男女雇用機会均等法は基本的に「職種・勤務時間・勤務地について限定されない総合職正社員」の採用において女性を差別することを禁止している法律である。しかし、男性と女性がともに対等な立場で働くことができる環境の実現には、男女ともに日本のそうごうしょくてきな働き方を抑制する必要がある。 p120 転勤のない「限定総合職」は、女性労働力の活性化という観点では望ましい方向であるが、「転勤がない」という1点のみで総合職と同じ職務内容をしていても、昇格や昇給が制限される可能性がある。共働き社会のじつげんのためには、男性的な働き方の典型である総合職が変わることが重要である。 p171 家事負担の平等化はなぜ進まないのか。共働き家庭における男女格差は日本が突出している(週10時間以上)。 p180 女性には、たとえ苦手でも家事を覚えるべきだという社会的圧力があるが、男性にはない。そのため、男女間でおおきなスキル格差がある。フルタイムの共働きだと、妻の側が相当無理をして家事を担当する子kとになり、夫が家事をすることができないとなると、妻は働く時間を増やす気を失う。
<「結婚、共働き、子育て、家事分担、うまくいかないのはなぜ?」を各国比較の横糸と、歴史を辿る縦糸で編み描く> タイトルから「仕事と家庭の両立」といったテーマを想像したが、内容はもっと幅広い。 その中でもメインの軸は、現在の日本社会において女性が置かれている労働参加の形に対する批判的な姿勢にある。...続きを読む なぜ日本の女性は働きにくく、結婚、育児がしにくいのか? これについて著者は、女性の労働参加を日本の男性的労働世界に引っ張り込むことによって成し遂げようとしているから、という指摘をしている。 つまり、旧来の男性的な働き方のほうを見直すべきではないか、という主張である。 著者は計量社会学を専門とする研究者だ。 「計量」、つまりデータを分析することによって社会を読み解いた結果、著者がそのような結論に至った流れを、本書を読み進めながら追うことになる。 データというと難しく感じるかもしれないが、数式は登場せず、グラフなどむしろ見やすく直感的に分かりやすい。 データは、各国比較という横のデータと、各年代による縦のデータが用いられている。 各国比較の面では日本・アメリカ・スウェーデンを軸に展開される。 よくある「日本と欧米」という対立軸ではない。 それは、女性の労働参加と出生力の維持を、アメリカとスウェーデンが全く異なる、もっというと逆の方法で成し遂げているからだ。 具体的な内容は本書を読んでいただきたいが、簡単にまとめると以下のようになる。 アメリカは、市場原理主義であり、社会保障などの少ない「小さな政府」である。 その中で、女性は男性と差別されることなく、実力に応じて民間企業で管理職などに登用される。 そのような社会においては、男性も一定以上の範囲の労働は難しい。 少なくとも日本的な「残業あり、転勤あり、配置転換あり(ただし雇用は一定保障されている)」という働き方では家庭は成立しないだろう。 アメリカで女性が活躍できるのは、男性がジョブ型雇用であり、労働範囲はそのジョブに限定され、日本のように無制限な労働を強いられないという面が大きい。(その代わりに失業や格差といった問題を抱えているのは周知の通りである) 一方、スウェーデンというと高福祉で男女平等といったイメージがあるが、単純にそうとも言えない。 実はスウェーデンの女性の就労は特定分野に偏っている。 それは公務員だ。 スウェーデンは典型的な高税負担、高福祉の「大きな政府」であるが、それは政府が労働を生み出していることも意味する。 本書に掲載されているデータによれば、スウェーデンにおける「女性の公的雇用」の比率はなんと50%を超える。 逆に言えば、スウェーデンの女性は公的雇用以外の職業の選択肢が極めて少ないことになる。 一方、アメリカの女性の公的雇用の比率は20%程度であるが、日本はというと10%にも満たない。 実は男性でも、スウェーデンの公的雇用は30%、アメリカが20%程度なのに対し、日本は10%程度である。 日本は世界でもとりわけ公務員が少ない国なのだ。 市場主義で「小さな政府」の代表格ともいえるアメリカよりも少ないというのは驚きだ。 これについては前田健太郎『市民を雇わない国家』(東京大学出版会)という本がサントリー学芸賞を受賞するなど注目されている。 ちなみに以前、『世界の海賊大事典』の書評において北欧の平等主義について触れたが、本書のデータを踏まえれば、海賊に船長、航海士、船医、料理人などの役割があるように、北欧文化では男性には男性の、女性には女性の役割が充てられている、という見方のほうが正確かもしれない。 また、女性の就労と出産の関係についてもデータが示されている。 結論から言えば、各国比較において、女性の就労率が高いほど、出生率が高いという関係が明確に表れている。 これは日本における一般的な直感とは異なるのではないだろうか。 実際、日本、イタリア、ドイツといった国は女性の就労率は様々だが、出生率は一致して極めて低い。 例えばドイツはアメリカやスウェーデンと同程度の女性就労率でありながら、出生率は低い。 つまり女性の就労率が高くても、社会構造などなんらかの障害により出生率が上がらない場合があることを示唆している。 これについて詳しくは本書をお読みいただければと思う。 次に、縦のデータ、つまり時系列のデータについていくつか紹介すると、主にあらゆる先進国が経験した「工業化からサービス化への変化」に関連して述べられている。 実は、アメリカやスウェーデンは工業化に伴い出生率が低下し、サービス化に伴い出生率が向上している。 もっというと、工業化社会では女性の就労は出産にマイナスの影響を与えていたが、サービス化した社会ではプラスに働いていることがデータで示されている。 ところがやはり日本、イタリア、ドイツといった国はサービス化した社会でも女性の就労が出生率にプラスの効果を見せていない。 本書では、他にも正社員と非正規雇用、格差の再生産、同棲、移民政策、家事労働(各国の男女の分担状況)といった広い範囲に渡ってデータをもとに問題提起されている。 著者は、女性の就労や出生率増加のためにアメリカ型が良いかスウェーデン型が良いか、という結論は出していない。 というよりも、両国とも日本とは文化的価値観や社会構造が異なっているから、簡単にマネができるわけではない。 安易に他国を真似るのではなく、日本の社会の特徴を把握した上で、日本ではどのような政策が有効かを丁寧に細かく見ていく、本書の表現を使えば「テクニカルな」対策の必要性を説いている。 今の日本の労働と家族、出産や社会保障などの状況を広く概観し、他国と比較しながら、超少子高齢化を迎える日本がどのような社会をつくっていくかについて、みんなで知恵を絞り合意形成することを本書は提言している。
高齢化社会、少子化、そして、労働人口の減少といった大きな課題を抱えている日本。 日本がこれからどのような「共働き社会」(など)といった労働環境を目指していくのかを考えさせられた。 小さな政府の代表例のアメリカ。 大きな政府の代表のスウェーデン。 ともに、女性の労働人口が増えているが、おなじように出...続きを読む生率も増えている。 つまり、単に、女性の社会進出が少子化を招いているということではないのがわかる。 それぞれの国において、女性が出産し、働きやすい労働環境が整っているのだ。 (日本とドイツは、女性の労働人口は増加すれども、少子化が進んでいる…) 日本の労働のありかたに、「(男性社会の)労働のあり方、職務内容の無限定性、勤務地の無限定性、労働時間の無限定性にある」という指摘に納得。 日本の労働環境を大胆に(同一労働堂賃金など)改革する必要があると思った。 筆者の説明がわかりやすく、今後の労働と家族のあり方を考えるためにも役に立つ良書だと思う。
新しい見方ができるようなデータが豊富で理解し易い。より良い社会を作るためには、とにかく働く、ということが大切。だから、どんな仕事にも意義を見出せる。
少し読みづらさはあるが、現在の働き方そのものが、働いていない人に仕事以外のこと(家事、育児)を任せることを前提にしている、ということは大発見だった。もっと注目されていい。
◯合計特殊出生率は上がることなく、むしろ下がりつつあり、一番重要な出生数は90万人を切るかもといった報道がされている現代日本においては、まさしく他国の真似ではない、実態に即した少子化対策が必要であると感じた。 ◯また、今までの施策は、やはり海外の模倣であり、日本という社会に合っていない上に、場当たり...続きを読む的な施策が続いており、グランドデザインを描いた上で、速やかに対応する必要性を感じる。 ◯本書では結婚に関する個々人の理由を詳細に分析し、働き方改革が声高に叫ばれる前から働き方に関する視点が盛り込まれ、家族内での家事分担に至るなど、着眼点が新しく、面白い。 ◯最終章が、本書の要約として大変分かりやすい。議論の大筋を理解するために先に読んでもいいかもしれない。
タイトル以上に日本の問題点(少子高齢化、女性の社会進出)を深く掘り下げていた。晩婚については、男女のアンマッチが原因だと個人的に考えていたが、歴史的背景含め複数案が考えられており、興味深かった。アメリカ、スウェーデン、など国際比較しつつ日本について意識していけそう。
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