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「反貧困」を掲げ、格差社会に異議を申し立てた著者渾身の民主主義論。議会政治とは非効率的なシステムでありつつも擁護すべきとの立場から「おまかせ民主 主義」「強いリーダーシップ待望論」に警鐘を鳴らす。文庫化にあたり補章を追加。なぜ私たちは政治家に失望するのか。そして、なぜ私たちは主権者なのに主 権者でないように振る舞うのか。「一強」「暴走」という言葉が目立つ現在の政治状況だからこそ、読みたい一冊。
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Posted by ブクログ
傑作。こういう本が書きたかったね。 でも、湯浅さんほど社会運動していないから、私には無理か。 私が言いたいことを代弁してくれている本なので、学生たちには絶対にしっかり読ませたい。
民主主義の面倒くささ(利害調整の拒否)を放棄するところに、強いリーダーを待望する心象が作られる。自分が何ができるか、できるところから始めなければ、上が変わればという誘惑、堕落は常に押し寄せてくる。はっと目の覚めた文章でした。 ・政府も個人もやる気や意欲の問題にするのは安直で見せかけの回答。 ・直視...続きを読むすべきは、自分と仲間うちがいかに限定された、ごく限られた人たちにすぎないか、全く理解できないという気持ちになるのは、他の多数の人と大きく意識が乖離してしまっているか、という距離の問題。 ・あるテーマに強い執着を持っている人ほど、自分はわかっていると強い自信を持っているだけに、異なる意見を落ち着いて聞くことができない。 ・これからの日本はより競争を激化させる方向では個人も社会も元気にならない、かえってより停滞する。必要なことは競争環境をより過酷にすることではなく、人と人をつなぎ、その関係を結び直す工夫と仕掛けを蓄積すること。 ・すりよった、とりこまれたという評価の仕方が好きな人たちは、もしかしたらその人自身が俺のいうことを聞けといった一方的なコミュニケーションしか知らない。 ・時間と空間の問題は、言い換えれば参加の問題。 ・アウトリーチしても説教では意味がない。 ・自殺のキーワード。ごめんね、まさか。 ・誰でも支えられるよりは支える側に回りたい。 ・なぜ政治家は私たちの声を聞かないのかではなく、より本質的な重要な問いはなぜ私たちは主権者なのに、主権者でないように振る舞うのか、という点。
関係調整のコストを担う存在が必要。 ヒーローを求める集団の心理を想像すること。 現実的で、地に足の着いた支援を重ねてこられた方の言葉だと思いながら読みました。
年越し派遣村の村長をしたことで知られる社会活動家で、内閣府参与として政府入りした経験も持つ湯浅誠氏による民主主義論。 民主主義は面倒くさくて疲れるものだ。その事実を直視した上で、どうすべきか考えよう。民主主義の活性化のためには、対話が必要であり、そのための時間と空間が必要だ。それらをデザインする力を...続きを読む身につけることが必要だ。本書の大きなメッセージはこのようなものである。 本書の内容には、かなり共感しながら読み進めた。自分が漠然と考えていたことをうまく言い表してくれていることが多かった。特に政策実施には、異なる意見の人との意見調整が必須であり、その調整コストの負担が必要(政府のやる気の問題ではない)、最善を求めつつ最悪を回避するという態度が求められる、という指摘には膝をうつものがあった。「”溜め”のない社会」になりつつあるという懸念にも同感である。結局、人任せではなく、一人ひとりが直面する課題に向き合い、他者と対話して、一つずつ前に進めていくということを積み上げていくしかないのだと感じた。
引用に残ったことば。 ・壊す時には壊す前のその建物がなぜ建てられたかを考えてみよ。(ヨーロッパの格言) ・なぜ私たちは主権者なのに主権者でないように振る舞うのか。 ・民主主義は時間と空間、及び、その場の設計、参加とデザイン。 ・船長の源泉はイノベーションです。イノベーションは「参加」や「場のデザイン...続きを読む」という衣装ダンスの中にたくさんの服(手法)を入れ、そのコーディネートの試行錯誤を重ねる中で生まれます。対人関係や各種のコミュニティの運営、社会や政治のあり方はまさに衣服を増やし、コーディネート経験を積む実践の場です。それが民主主義を活性化する。
本書は、「日本では、主権者であるはずの国民が主権者として振る舞っていない」という問題≒国民の政治への無関心を、政治不信を理由に無関心を正当化する一部の国民への批判や、無関心が故に生まれるヒーロー待望論の解説を交えつつ論じ、積極的な政治参加を促す啓蒙的な作品。 しかし、議論が基本的な国内における要因...続きを読むのみを考慮して展開されている点(例えば、著者は日本国民の政治離れの一因を議会制民主主義の特徴である合意形成までの議論の煩雑さに求めているが、同じく議会制民主主義を採用している国でも日本より政治への関心が遥かに高い国はあるのでは?と疑問に感じた)や、あくまで著者の貧困支援という経験に基づいた視点に立っているため提言(国民が議論できるプラットフォームの開設など)の実現可能性に疑問が残る点など、一般論として論じるには不十分だと感じた。 他方、ヒーロー待望論についての考察は興味深かった。作中ではヒーロー=切込隊長の資質として、①悪=既得権益を名指しする力、カリスマ性、②反対意見を無視する大胆さ、③即断即決力の三点を挙げつつ、その具体例として小泉元総理や橋本元大阪府知事を挙げていたが、2021年現在においては、河野行政改革担当大臣が上記の資質の全てにぴたりと当てはまっていると思われる。 そして、著者がヒーロー待望論の危険性として警鐘を鳴らす、ヒーローが何が既得権かを断定してしまうため、一度既得権の烙印を押されてしまったら議論が行われずに悪者扱いされてしまう可能性がある点についても、押印廃止の一件で問題になったとおりだと感じた。
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