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【少女の命を医療改革の闇が呑みこむ】17歳の少女を襲った突然の異変に苦悩する医師と 周囲の人々。だが現場の医療には、医療改革が不気味な影を落としていた。効率化を求め、 利益を追求する医療は、患者を救うことはできるのか? 破綻に瀕した健康保険制度を守るため政府主導で医療改革が実施された近未来を舞台に、現役の医師が、行き過ぎた改革が招く医療の危機を鋭く指弾する衝撃のストーリー!
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Posted by ブクログ
世界のどこの国よりも質の高い医療が公的健康保険で受けられる日本は、それゆえ、国民医療費増加の勢いが激しく、税金投入などで保険組合や制度が破綻しないようにしている。 だが、社会保障費全体の増加を考えると医療費の公的負担にも限度がある。そこで、高度な医療や高額の治療費などは自由診療にして、民間の医療保険...続きを読むを活性化してはという議論が生じる。 本書は、そこに焦点をあて、官僚出身の院長を戴く自由診療病院、癌に関する画期的新薬を開発した製薬会社、そして、医療保険を販売する外資系保険会社がトライアングルの形でそれぞれの利益獲得を目指して過激に動く様子を描く。 新薬投与により体に異変が生じる17歳の少女と、どうしても彼女を救いたい恋仲の高校生の恋愛仕立てで読みやすくしているものの、東大医学部出身の現役院長が書いているだけに骨太の主張が伝わってくる。 公的保険により、フリーアクセスで医療を受けられる我々国民は、軽い気持ちで大病院にかかったり、いくつもの病院で同様の検査を受けたり、薬を服用せず溜め込んだりすることが多々ある。ひとりひとりが医療費と医療資源の無駄遣いをしない心掛けを持たなければとあらためて思った。 また、著者があとがきで医療者側の視点で論じている効率的な医療提供体制の整備への協力も大事だが、地域の反発もあり、計画的再編整備は難しい問題だ。 専門医の診療能力を向上させ無駄な検査を減らす、総合診療医を養成し不必要な専門医受診を回避するといった指摘については、いずれも医療資源の浪費を減らすことにつながることから、ぜひ尽力してほしい。病院収入のため、入院期間を必要以上に長期化させることを防止するDPC(包括医療費支払制度)の拡充にも努めてほしい。過剰な延命治療に対する言及もあったが、リビングウィルの普及や倫理観といった根深い問題が高い壁になるだろう。 医薬品業界においては、早期の保険収載を目指すあまり、副作用が認められた際、それを隠匿することのないようにし、その上で迅速な対応措置にも努めることの重要性も、この小説から学んだ。
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岡井崇
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