『不格好経営』の外伝といった趣きの本。
同じ出来事でも人が違えば見方が違うので、ひとつの会社がいろんな困難を乗り越えて大きくなっていく過程を複数の視点で見ることができるのは面白い。
また、こちらの本では DeNA ベイスターズ成立への過程が語られていて、プロ野球・スポーツビジネス関係に興味のある人にも面白いと思う。
野球界に参入した時のこと,自らの銀行員時代, DeNA へのジョインと様々な事件簿,そしてベイスターズのこれからのこと,という構成.
銀行員時代の話はよくある経営者の自叙伝といった「よくある感じ」は否めず.
DeNA の成長する過程は,いろんな事件がありながらも総じて勢いのあるなかで王道を突っ走ったんだなという印象.当事者として綴るのが苦しい部分も読み手にわかりやすく伝わっていることも含めて,読んでて面白かった.
ベイスターズ買収については,当初積極的に「モバゲーベイスターズ」とサービス名をチーム名に冠することを検討していたがかなわず,「DeNAベイスターズ」としてでもベイスターズを買収するべきかと検討したこと,その結果として DeNA という企業のブランディングをそれまでに無い深さで検討した,という話が非常に興味深かった.
「上手く行かなければすぐ売り払っちゃうんでしょ」という声に対し,長期保有でしぶとく,そして地域に貢献した経営をする姿勢を見せれば DeNA という企業に対する世間の見方も変わってくる,というのも球団保有のメリットの一つだという.
なるほど,さまざまな成長痛を伴いながら,そしてあまり理解の得られないような「モバイルでのゲーム」で大きくなってきた企業からみた日本プロ野球の魅力にはそんなものもあるんだな,と興味深かった.
ただ,「横浜にとっては利益にならないから交流戦を減らした」など,一人の野球ファンとして疑問に思えるような発言も少なからず見受けられて,なんだかなぁと思ったシーンも多い.そこも含めて包み隠さず言っちゃうのがこの企業の,この人のよいところだとも思うんだけどね.