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「外出の用を控えた人や働く方たちには、こう云っては失礼だけど、四時とも、私は雨が大好き……」(「雨のゆうべ」)。自然に風土に、生活に食に芸能に、そして思い出に――生活に根ざした随筆にこそあらわれる、もうひとつの鏡花の世界。多彩な題材と執筆時期の全55篇を収録。現代の読者のために詳細な注を付す、初の文庫版随筆集。
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Posted by ブクログ
夏に鏡花を読むと涼しい。ましてや随筆は。頰を撫でる薫風にも似た凛として歯切れの良い文章が心地よい。流れゆく季節への想い友人達との交流、食についてなどなど鏡花の美意識とエッセンスが濃縮された一冊。師匠の紅葉譲りの擬古文の随筆もあるが王朝時代の古典よりはつっかえずに読み進めることができた。口語体の鏡花に...続きを読む触れることができる貴重な機会な気もする。友人を記した随筆で「煙管を持たせても短刀くらいに女が殺せるほどいなせな切れがないといけない(大意)」という表現には痺れた。関東大震災の随筆が鏡花らしからぬリアリズム。
本文は泉鏡花の随筆を集めたものながら文章世界の源泉、創作への姿勢が伺え、また小説と変わらぬ美しい言葉。聞き書きらしきものには周囲の人が伝えた語りの上手が特に感じられる。巻末の解説は勿論、人物索引が嬉しい。解説は随筆と小説の繋がり、発表の時期からの考察は分かりやすく、また様々な人々の文章からの引用で収...続きを読む録されている鏡花の随筆の魅力が広がる。表紙の露草は鏡花の短くも愛らしい随筆に寄り添う。本文以外も嬉しい一冊。
鏡花さんの、凛々しい文章から可愛いのから、お茶目なのから、――全部随筆で。その中でもおおざっぱに分けるとすると、草花や虫の音などに関する自然のこと、文壇や出版の人間模様、役者評、序や讃、思い出、といったところか。 文章は口語体の物が多いが、序や讃については凛々しい文語体。全体に短い物が多く、読みやす...続きを読むい。 「番茶話」が好みであった。蜻蛉の話が良い。「煙管を持たしても短刀くらいに」「火の用心の事」も良い。
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