名作「はみだしっ子」の完結後、円熟期に入った三原順の、白泉社時代の後期傑作集。「はみだしっ子」のサイドストーリーともいえる、ジャックとロナルドの友情を描いた「ロング アゴー」、原発問題とそれにまつわる人間模様を描いた社会派異色作「Die Energie 5.2☆11.8」、そして「自殺」という悪魔の誘惑に取り付かれた人々がテーマのセルフ・マーダー・シリーズ「あなたの子守歌」「朝になるまで」「夕暮れの旅」ほか、個性あふれる珠玉作9編を収録。
「Die Energie 5.2☆11.8」が読みたくて再読。チェルノブイリの数年前に描かれていた作品だが、まさに今、日本が直面している原発事故に対する電力会社の姿勢やリスクを負わず電力の恩恵だけを求める社会…などのエネルギーに関するあらゆる問題を30年前に指摘しているわけで…。「ムーンライティング」や「X-Day」に出て来るコンピューター犯罪や「Suns」の企業買収なんかもそうだけど、社会のあらゆる事件を眼にするにつけ三原順の凄さを改めて感じる昨今。