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「この手紙が阿南さんに届くなら。俺のことを思い出してください」――阿南、34歳の冬の事件。再生。九月に入ったばかりの暑い朝。少女は誰にも何も告げず、屋上から飛び降りた。その死の後、高校三年生の少年が突然失踪する。彼は家出前、元警官・阿南に手紙を送っていた。「人間は間違ってはいけない」という阿南の信条を引いて“自分の間違いを正そうと思う”と書き残して消えた少年を捜すため、阿南は調査に乗り出す。鮮烈な余韻を残す著者の初期最高傑作、ライフワーク・シリーズ第2弾。解説=坂東齢人
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Posted by ブクログ
阿南シリーズは2冊目。この作家さんの「藤森涼子シリーズ」は大好物で、のっけからその藤森涼子が登場したものだから、歓喜、歓喜。
読みごたえがあった…! のにも関わらずすらすら読めてしまうのは、太田さんの文章力! 「関係」を書く小説って、どうしても感動するほうこいうに持っていきがちだが、この太田忠司の「Jの少女たち」はその手の感動はない。感動して終わり、というのは確かに心に響くかもしれないけれど、その感動が得られた時点で終わっ...続きを読むてしまうのだ。物語の終わりとともに、共感した部分、突きつけられた自分の甘さも、同時にほとんどの部分が完結してしまうのだと思う。 「Jの少女たち」ではそうではなくて、もちろんステレオタイプ的な親子関係だったりが登場して、子どもの側から自分が親に抱く不信感や苛立ちなどに共感する場面もあるのだが、もっとこう「現代の子供たち」の問題となっている自己完結してしまうような部分が取り上げられていて、それを阿南が「何か違う」と彼の強い言葉で言われると心がずん、と重くなっていくのだ。 インターネットが普及した今、あくまで個人的な書評である、と明文化してあるのにもかかわらず、人気作家の本に批判的なコメントを書くと攻撃される、というような現象がある。匿名性云々があるのだろうが、自分の好きなものこそ絶対だ、という価値観がやはり根底に根付いていると思うのだ。もちろん昔から自分が好きなものを他の人にも好きになってもらいたい、という思いはあっただろう。だが、「あいつはけしからん」「わかっとらん」などと思っても、人を傷つけるようなことはあまりなかったと思う。だが現代はブログ炎上などというように、許せないものに対して過剰なまでに反応する人々が確かに存在するのだ。そこらへんの描写がこの本では痛いほどに書かれていて、そして自らを省みてしまうのだ。 阿南ほど強い人間はなかなかいないだろうし、いかにも「正しい」っていう感じの人は彼が自分でも感じている通り窮屈だと思う。それをな直そうともしないのだからなおさら。だから阿南は好きではないが、彼みたいな人って--人と真摯に向き合える人って、目をそらしたくなるような、でも心にずっと引っかかってしまうような強さがある。だから高校生君も彼と話したかったのだろう。 推理小説としても全く見えない状態から、断片を拾っていく様は楽しかった。すごい本だ!
社会から距離をとって生活する阿南の元に警察時代に知り合った男子学生の手紙がきっかけである事件へと関わっていく話。別シリーズより藤森涼子さんも登場していて嬉しかったです。そしてまさか前作からの流れでやおい談義になるとは予想外すぎました。この本が最初に刊行されたのが1993年ということを考えると斬新過ぎ...続きを読むです。流石にやおいのよさまでは解りませんが、百合なら少しは読んでいる僕としては、おそらく自分の性別への嫌悪感や自分が関わらない世界への憧憬といった要素が多少なりともあるんだろうなと思っています。次巻にも期待。
主人公が魅力的すぎます。 自分のルールを、厳格に守り続ける主人公の、生き方がまっすぐで素敵です! 主人公の寡黙で不器用な魅力を直接描写することなく、行間で伝えるのは本当に凄い!
阿南シリーズ2作目。 1作目で警察官を辞めた阿南は町工場のアルバイトで生計を立て、自分を罰するかのように世間から孤立した生活を送っていた。そんな中、1作目にも出てきた少年が阿南に手紙を残して失踪する。阿南は新米私立探偵の藤森涼子とともに少年の行方を追う。 JがJUNEを表していたのが、読んでいる...続きを読む中で分かり、意外に思った。初版は93年の本だが、そんな時代からJUNEなり、コミケなりが存在していたとは知らなかった。少年少女の危うさだったり、人物描写が上手い。阿南は相変わらず格好よくてスキ。
警官を辞め孤立して生きる阿南。「間違いを犯してはならない。ならば、間違いを犯した者はどうしたらいいのか」自分の信念が持つ独善的な側面と対峙する阿南の姿や誰に罵られても自分が創るものにポリシーを持つ豊田。弱いものと強いものについて考えさせられる
「刑事失格」に続く阿南シリーズ第2作。 3年前にふとしたきっかけで知り合った少年が、阿南宛てに手紙を残して失踪した。勤めていた町工場を退職し、私立探偵の藤森涼子と少年の行方を追う阿南。 「やおい」という言葉は知っていたけれど、(当時の)実態はよく知らなかったので、とても勉強?になりました。1992...続きを読む年当時の世相や流行、音楽なども懐かしい。
「刑事失格」から三年、警察を辞めた阿南の元に一人の客が訪れる。かつて知りあった少年の行方を探してるという。行方を追ううちに自らの過去に向き合う彼は、人としての道、間違いを犯してしまった人間はどうすればいいのかという命題への答えを探し続けます。警察を辞めても色褪せない生き方にぐっときました。合わない仕...続きを読む事を辞めたり、関係者に突っ込んだ質問をしたり…、いやー、いちいちカッコいいんですねー。誘いを断って中華料理店に向かう場面が個人的には好きです。男はかくあるべき、そう静かに教えてくれる一冊です。
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Jの少女たち
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太田忠司
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