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※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 開放的でありながら閉鎖的で、膨張と内破を繰り返し、分割と排除の果てに侵食・増殖して人々を飲み込む都市-。ロサンゼルスの変容の軌跡に大胆かつ繊細な思索を重ね合わせ、ありふれた場所でありながら非‐場所である“場”としての都市の本質を把捉する。
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Posted by ブクログ
上京して間もない頃だった。神楽坂の毛細血管のような街で迷子になった。 歩いても歩いても、目的地らしいものは見当たらず、ケバケバしいパチンコ屋のネオンと音に溢れている通りの前で、ため息を吐くことしか出来なかった。彷徨うほどに街は拡大し、その場に住む人を置き去りにする。 細い路地を昇ったり降りたりを繰り...続きを読む返すうちに、僕は、神楽坂に嫌われているような気になったのを覚えている。かつての街の名残を微かに残していると言えばそうかもしれない。けれど、それらの景色は、もはや街の抜け殻でしかない。 「年はあらゆる方向へ向かう。交通網の中にと、それによって追いやられ、汚染によってと、それによって追いやられ、都市自身の動揺の只中での果てしない吸収合併の中にと、それによって追いやられて。」 目的地にたどり着けないまま、僕は再び地下鉄に乗る。家へ帰るのだった。「都市自身の動揺によって」かどうかは定かではないが、毛細血管のような街のなかで、少なくとも僕は、僕自身の動揺によって、神楽坂から追いやられた。だが、そこに、その場所の名が与えられた時から、神楽坂は、既にそれ自身によって、追いやられていたのかもしれない。もはや、かつての何分の一もの重要性をなくした神社の境内と、細くて車の入ることの困難な路地。腰を曲げた老女がビニール袋からねぎをはみ出して歩いている。 地下鉄によって追いやられた僕は、また別の区域へと異動を続けるしかないのだった。
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