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喀血に襲われ、世紀末の頽廃を逃れ、サモアに移り住んだ『宝島』の作者スティヴンスン。彼の晩年の生と死を書簡をもとに日記体で再生させた「光と風と夢」。『西遊記』に取材し、思索する悟浄に自己の不安を重ね〈わが西遊記〉と題した「悟浄出世」「悟浄歎異」。──昭和17年、宿痾の喘息に苦しみながら、惜しまれつつ逝った作家中島敦の珠玉の名篇3篇を収録。
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Posted by ブクログ
いろいろ思い入れがあって、たぶんこういうレビューを書くのに適さない。悟浄とスティーブンスンが好きになる中篇。講談社文芸文庫は注釈がないので、ある意味読みやすく、ある意味つらいカモ。
自分とは何かという疑問を持ち、高名な碩学たちに答えを求め続けた沙悟浄。五年が過ぎても明確な回答は見出せず、愚かではあっても確固としてあった自己をすら見失う。まず動くことが大切なのでは、との予感を得たのち観世音菩薩が現れ、やがて出会う悟空から学ぶことは多いと告げられる。 その悟空には思慮や判断が行動の...続きを読む中に溶け込んでいて、文字に拠らない知識があることを思い知らされる。 また、三蔵法師の身体の弱さの中にある、正しく美しく尊い精神の強さ、猪八戒の楽しみを楽しむ才能をも学ぶべき対象となる。 悩める沙悟浄の造形が新しく感じられた。
光と風と夢・・・主人公=作者自身の、作家としての苦悩と精神活動の物語。 客観的に見るということは対象を良く知ることと、対象から離れることが必要である。
『宝島』で知られているスティーブンスンの書簡を元に日記形式で再構成した『光と風と夢』。南洋へ実際に行ったことがある中島敦だから書けた、生々しい島の自然の描写と、支配する側(白人)とされる側(島民)の関係。 西遊記に出てくる沙悟浄を主人公に置いた「悟浄出世」「悟浄歎異」。 光と~も悟浄~も、どちらも苦...続きを読む悩しそれを独白する主人公の影に作者本人の苦悩が反映されているようで、読んでていろいろ考えちゃいます。
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