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群雄が割拠し、しのぎを削った戦国時代。飢饉と戦争で疲弊した百姓は公然と「世直し」を求めた。生き延びるために、ときに大名の戦争に参加し、また隣村との境界争いなどにも武具を携えて参集した。一方、大名は百姓に礼を尽くした施策を講じて領国の安定を図った。庶民の視点から権力構造と社会システムをとらえなおす。
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Posted by ブクログ
面白かった。今までは教科書に書いてある、通り一遍的な理解しかしてなかったが、住民との関係で領国経営のあり方を描いた本を初めて読んだ。ただ、資料が北条氏に偏っている(北条氏しかない?)のは残念。
2020/3/5 戦国大名の統治について、百姓や農民の視点からそのあり方を述べた一冊。 戦国大名たちからの視点ではなく、百姓、農民からの視点であるというところが画期的、 内容はかなりコアなために難しいものもたくさんあったけど、大筋は2つに分かれていて、1つは、百姓、農民の世界では室町時代あたりからは...続きを読む常に飢饉に晒されることが多くて隣村や近隣の村とのトラブルが絶えない戦争状態が長く続いていたこと。2つ目は、そうした村同士の争いに次第に権力者が介入していうことになっていく。その過程で、北条氏の統治方法に目を向けながら、幕府の権力に従うのではなく、領国を統治する戦国大名に従っていくという構図がどうして出来上がっていったのかを検証していく、というものである。 当時の百姓たちは惣を形成していたというのは学生の頃に勉強する内容ではあるが、それが具体的にどういうことなのかというのがこの本に書いてある。 川の水や山の資源を巡っての諍いはかなりあったようで、権益を得るために仲間集めに必死になったり結構大変だったんだなあと。 また、北条氏の統治方法を見ていくと、そうした村の争いを大名に判断を委ねる仕組みである目安制を作ることで争いをしない方向に持って行くことや、戦国大名の領民から、御国という概念を生み出して、大名のために、国のために、という思いが人々の間に生まれるようになっていったり、現代の戦前のような感じなっていたり…ということにも深く解説がなされている。 新しい視点を持たせてくれる内容である。
室町が楽しい!時代の前提がわかると社会現象に説明がつくし、一つ一つ腑に落ちると面白味が深くなる 飢餓⇒食料確保⇒争い(戦国時代といわれる背景) 徳政も出される背景を考えれば納得ですね
前半が深刻な飢饉を背景として、戦争や戦争中の略奪が頻発する話。後半は検地、裁判、楽市など大名が領国経営を発展させていく話が北条氏におもに注目して論じられている。 著者は明言してないが、深刻な飢饉・戦争が経営ノウハウを発展させる土壌になったということだろうか。「では、なぜそれができたのか」ということが...続きを読むさらに気になった。
戦国の百姓ってなるほど、戦争と背中わせだったのねと。そういう世の中を終わらせたのが信長から家康に至る三傑の偉大さであり、かつ自由をも奪ったのがわかる。
戦国大名を、個々人の事績ではなく社会システムに埋め込まれた器官として紐解く。重層的な構造の中に位置付けることで見えてくる戦国大名の姿は、いわゆる歴史小説的なイメージとは一線を画す。 近年の戦国研究の進展は目覚しいものがあり、フィクションの世界との乖離はどんどん大きくなっている。そうした研究の成果を新...続きを読む書の形で読めるというのはとても良いことだと思う。
戦国時代を、底辺(とよく言われる)の農民の目線で見てみる。「村」という単位で見てみる。 戦国時代は、飢饉の連続の時代だったという。それに加えて(なのか、こっちが鶏なのか?)大きな権力がなかったので、戦争が頻発する。 大河ドラマでは描かないけど、どの大名も、戦争となると、戦場地域を荒らし、農作物を略奪...続きを読む、女性はレイプ。 それどころか、ニンゲンを、その昔の黒人奴隷のように「商品」として拉致して売りさばいている。 北朝鮮の拉致問題どころの騒ぎじゃない(笑)。 というか、そういう、「簒奪」という経済活動だったと言っても良い。 その戦争=紛争をブレイクダウン。細分化してクローズアップしてみると。 結局のところ、村と村との、「水=川=水源」や「山=山からの収穫」という「食べるものを得る権益」の奪い合い。 要は細かい境界争い。 例えば、武田信玄さんは、とにかく戦争が強かった?甲斐の国の統治が名君だった? その裏には。 日常的に恒常的に、常に他国領地に侵略戦争を行った。打って出た。 そうすると、甲斐の国は戦場にはならない理屈。 そうすると、甲斐の村は簒奪されない理屈。 なるほど納得。 上杉謙信は、秋に関東に打って出て、快進撃。越冬して春に越後に戻る。 秋に打って出れば、収穫物を簒奪できる。 そこで大軍を食べさせる。 自国の厳しい冬の食べ物を節約できる(笑)。 で、厳しい冬が終わると、母国に帰る。 うーん、納得。 内政的には、強い権力がなくなったせい?で、頻発する村同士の諍いを調停する。 戦争=殺し合いはいちばん、経済的に不合理だから。 それが一歩進んで、調停ではなく、裁判官役になる。 一歩進んで、「俺に訴えろ、戦うな」という法制になる。 そこからさらに進むと、「戦ったものは理非問わず罰する」。 更に進むと、「もともと、刀や銃を持つんじゃない」。 それはそれで、中央集権の支配を受け入れることになるけど、「村」から見ても、「戦う自由」を手放す代わりに、「とりあえず突然殺されたり犯されたり奴隷にされたりすることはない」という平和を保証されることになる。ギブ&テイク。 ある観点から見ると、大名は百姓=村を支配しているのだけど、 別の観点から見ると、大名は百姓=村の生産、つまり平和を維持するために、場合によっては武力行使せねばならない。 「権力=殺す権利」を持っている人と、「生産手段」を持っている人。 お互いがお互いを必要としている。役割がある。だから、戦国を紐解くと、「徴兵制」的に大名のため、権力のために命を捨てる百姓は、ほぼいない。 みんな平気で、強力な人が来たら寝返る。秀吉が、家康が来たら寝返る。 ここ、一歩踏み込むと。 おらが村、の、水や山などの死活問題なら、隣村と殺しあう。 だが、統合した領地を、裁判官として束ねて他国からの武力行使を抑止してくれる権力。その権力の成り立ちのために殺しあうことはしません。 そういうことですね。 ここ、つまりは… 「そりゃ家族が飢えて死ぬかもなら、殺しあわねばならぬ。 だけど、例えばだけど。 アメリカが戦争するから、アメリカと仲良くしている日本としては、付き合いで戦争せねばならぬ。 だから、アメリカの費用節減のために、日本人も戦場に行って、他人と殺しあう。 そりゃ、ナンセンス。いやです」 とまあ、そういうことなんですね。 そこまでこの本はハッキリ言及していませんが、そこまで香りを漂わせようとしているなあ、と。 その辺はなかなか、「へー、面白いじゃん」と。 一方で、ちょっともやっとしたのは。 「じゃあ、室町時代、鎌倉時代は、村と、より大きな権力の関係は?どういう社会だったのか」 「戦国が飢饉だった、と特記して言えるのか」 「村の基幹が農業ならば、農業の技術進歩とも大いに関係があるはず、だがそこの考察はない」 というあたりでしょうか。 戦国時代っていうのが… 中央権力の化けの皮がはがれて、いっとき、弱肉強食が剥き出しになった時代。 ユーゴスラビアじゃないけど、タガが外れて、極論、村々レベルで弱肉強食仁義なき戦いの奪い合いになった時代。 それまでのモラルやルールがご破算になった時代。 そこで徐々に勝ち抜きトーナメントのように、ゼロベースから「合理的な権力と生産者の共存」が構築された時代。 そう考えることができるのかもしれませんね。 大河ドラマとも、司馬遼太郎ともちょっと違う。 敢えて言えば、カムイ伝の日置村の、前史的なオハナシの本というか。 割と、悪く無かったです。
「『大名主体の社会構造』の下で搾取され蹂躙される『被害者』の百姓」という、一般的なイメージが今更ながら覆される。 村同士の争いに領主を巻き込み、飢饉が起きれば「世直し」としての大名の代替わりを要求…戦乱と飢餓の時代に生きるために戦う、そんな百姓の姿がよくわかっておもしろい。 大名は「支配者」...続きを読むとして以上に「社会システムの器官」として存在し、領国支配が大名と百姓の双務契約で成り立っていた、というのは知らなかった。 それにしても、「ここ二十数年におよぶ戦国大名研究の成果の到達点として、また今後における研究の出発点」とまで筆者が言う本が新書で出るってのは、歴史好きにとって幸福だと思う。
戦国時代において,村が慢性的な飢饉を背景に形成・維持され,村同士の用益をめぐる紛争に繋がっていたという指摘に驚いた。 有名な武田・上杉間の幾たびにもわたる戦争を事例に,領主間の戦争が村同士の紛争の延長上にあるとし,戦争の実態を明らかにしている。
[ 内容 ] 武田、上杉、北条…数々の群雄が割拠し、しのぎを削った戦国時代。 飢饉と戦争で疲弊した百姓は、社会的危機には公然と「世直し」を求めた。 生き延びるために、ときに大名の戦争に参加し、また、隣村との境界争いなどにも武具を携えて参集した。 いっぽう大名は、百姓に礼を尽くした施策を講じて領国の安...続きを読む定を図った。 庶民の視点から乱世期の権力構造と社会システムをとらえなおす。 [ 目次 ] プロローグ 代替わりと「世直し」 第1章 飢饉と戦争の時代 第2章 村の仕組みと戦争 第3章 地域国家の展開 第4章 大名と村が向き合う 第5章 戦国大名の構造改革 第6章 大名の裁判と領国の平和 エピローグ 戦争の時代の終わり [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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