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ある日「永劫回帰」の思想がニーチェを襲う。この着想をもとに一気呵成に書き上げられた『ツァラトゥストラはこう語った』は、二〇世紀の文学者・哲学者の多くを惹きつけ、現代思想に大きな影響を与えた。文学の伝統的手法を駆使しつつも、ときにそれを逆手にとり、文体の実験までも行うニーチェ。一見、用意周到な筋立てや人物造形とは無縁と思われるこの物語は何を目論んでいるのか。稀代の奇書に迫る。
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Posted by ブクログ
2部構成。第1部でニーチェの文体について論じ、第2部で『ツァラトゥストラ』を読解する。 岩波文庫版の『ツァラトゥストラ』には訳注が無かったが、本書はその役割を十二分に果たしてくれた。 以下は本書無しには読み取れなかった数々の「謎」の一部。 ・古代ギリシアの風刺文学のスタイル「メニッペア」を模した表...続きを読む現技法 ・綱渡り師と道化師のエピソードが暗示する意味 ・ツァラトゥストラが説く駱駝⇒獅子⇒幼子の「三様の変化」と、ヘーゲルの弁証法との違い ・全篇をとおして現れる聖書のパロディ ・自分が見た悪夢にそれらしい解釈を与える弟子を、ツァラトゥストラが一度は歓迎しながら最後は首をふって否定した理由 ・「重力の魔」が語る永劫回帰と、ツァラトゥストラの永劫回帰との違い ・ツァラトゥストラが擬人化された「生」に耳元でささやいた言葉(『ツァラトゥストラ』のテキストでは明示されない) ・ツァラトゥストラを誘惑する2人の女として擬人化された「知恵」と「生」の葛藤の意味 ・ツァラトゥストラが泣く泣く「生」と訣別する理由
数あるニーチェの本の中でも村井則夫氏(明星大学准教授)の本を手に取ったのは新書にしては深い洞察と新しい発見が多い中公新書から出版されていたことと、帯にかかれた「血をもって書かれたものだけを私は信じる」というニーチェ自身の言葉の強烈さに圧倒されたからという理由が大きいように感じられます。 過去に自...続きを読む分がやったテレビゲームに、「ゼノギアス」や「ゼノサーガ」といったRPGがありました。制作者である高橋哲也氏が盛り込んでいたニーチェの思想が、テレビゲームという媒体を通じて断片的に知るだけでしたが、発狂する前にニーチェがたどり着いていた「永劫回帰」の発現のプロセスを追うことができたのもこの本から得ることのできた成果でした。 この本を読み終えても何一つ解決しませんし、すっきりともせず、ニーチェが残した思想世界の泥沼にはまりこんでいく空恐ろしい感覚を抱きながら本を閉じることになります。それは自称の理解を促す一方で、実は誤解である可能性があるという危険性と常に隣り合わせであるという緊張感にあります。ニーチェが発狂して人生の最期を迎えたように、彼がたどりついた永劫回帰の意味を知ってしまうと、自分の思考も訳が分からなくなり混乱する、つまりニーチェを体験するかのような感覚に陥る怖さがあるんですね。 そんな中であっても、悩みを笑いの題材にできるパロディを奉じる精神や、異常と正常の区別をなくしてすべてを平等として受け入れる発想をニーチェから導きだせたのは新鮮な発見でした。ニーチェそのものの人生が常人には理解できない足跡を残しており、実生活から紡ぎだされた思想故に魅力的なんですね。虜まではいきませんし、ニーチェ自身の著書を手にできるほどのレベルにさえ達していませんが、挫折せずに次へ迎える気持ちでいるのは自分に何か面白いと思えるものがこの本を通じて残ったからでしょう。 ★が5つなのは、村井氏の解説がやさしくここからニーチェを読み広げていくには良書だろうと思うからです。しかし、実際に読後感として去来するのは、ニーチェの思想を理解するに私の脳が追いついていない恥ずかしさでした。私のせいで評価そのものを軽んじる理由は無いのでこうさせていただきました。
ニーチェは最も好きな哲学者だ。この解説書はいままでのどの解説書よりもなるほどと思わされた。ただ、それでも永劫回帰の説明はよくわからなかった。
ツァラトゥストラを自力で読んでも、何て偏屈な人なんだろう…自分には難しすぎる(涙)で終わってしまっていて 今回村井氏の解説を読むと、ゾロアスター教のシンボルの事や、 パロディの精神のことなどまるで知らず、 ニーチェは実に真っ当な事を行っている様な気がした。 むろん難解と言われるニーチェの考えを自分が...続きを読むしっかり理解出来ているとは思えないが、 ざっくり感じたのは、自分の生を、自分の意志でちゃんと生きる、 という当たり前のことだった。 右へ倣え精神が染み渡っている日本人である私には中々出来そうも無いけれど、 ただ闇雲に周りに合わせないこと、 妄信的な集団が出来て来たらそれを解散させることなどは、 もし勇気を持ってそれが出来れば、日本もずっと良い国になる気がするし、恥ずかしいくらい日々、自分の考えを巡らせる時間等持たずに、入ってくる情報で頭を満タンにしていたことに気付いた。 この本を読んで再度ツァラトゥストラにチャレンジしてみようと思う。
非常に参考になる本だったが、著作の芸術的価値という面から見れば、永井均のニーチェ論の後塵を拝している。
本書では『ツァラトゥストラはこう語った』に焦点を絞って解説していることもあって非常に具体的にニーチェの著作を批評しているという点で素晴らしい。少なくとも一般の新書の哲学入門書の中では奥行きの深い書籍という風に言える。
高校の頃と大学の最初に、何の基本も知らずに読んでいたものをより深く理解するために。いくつもの全く思いもしなかったことと、あぁ自分の読み方は正しかったんだということがあり、悪くない読書だった。あの頃にどう読んでいたのか、つまびらかには思い出せないけれど、強烈に覚えていることもある。『超人思想』と「これ...続きを読むって聖書のパロディなのかな?」ってことだ。あとは、読みながらほのかに覚えていたことをぽろぽろと思い出した。 半端な読みにも関わらず、俺が最初に読んだ頃から超人思想やいくつもの言葉に引き摺られて生きてきたのは、俺の影響されやすさだけの問題ではない。今の俺の志、考え方、行動に明らかに直結しているのだから。それだけ、ニーチェの言う『血で書かれた文章』の力は燃えている。 俺の教養不足だけでなく、この時代に生まれた凡人にはこのような地図が必要だと思う。執筆以前の必須教養とその時代にされていた思考や思想、それらを確かに掌握していなければニーチェの意図にはたどり着けない。その時の思想や本まで書いてくれているこの本は、その意味でも大きな仕事だと思う。そして以前から興味のあったゾロアスター教についての本や、ダンテの『神曲』を改めて読む気にさせてくれたという点でも、俺にとっては良かった。ツァラトゥストラ自体を読んでから、また読んでみようと思う。
[ 内容 ] ある日「永劫回帰」の思想がニーチェを襲う。 この着想をもとに一気呵成に書き上げられた『ツァラトゥストラはこう語った』は、二〇世紀の文学者・哲学者の多くを惹きつけ、現代思想に大きな影響を与えた。 文学の伝統的手法を駆使しつつも、ときにそれを逆手にとり、文体の実験までも行うニーチェ。 一見...続きを読む、用意周到な筋立てや人物造形とは無縁と思われるこの物語は何を目論んでいるのか。 稀代の奇書に迫る。 [ 目次 ] 第1部 ニーチェのスタイル(世界を読み解く技法 舞踏する精神) 第2部 『ツァラトゥストラはこう語った』を読む(思想とパロディ-序説 賢者からソフィストへ-第一部 分身たち-第二部 ツァラトゥストラの帰郷-第三部 高等な人間たち-第四部) [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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ニーチェ―ツァラトゥストラの謎
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村井則夫
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