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フランスが世界に誇る「花の都」パリ、そしてヴェルサイユ宮殿。これらを形作ったのは、ルイ十四世の治世に花開いた「グランド・デザイン」の思想だった。当時のフランスは、世界を席巻していたバロックに背を向け、徹底した計画志向の下でニュータウンを建設し、パリの街並みを整備し、ついにはヴェルサイユ宮殿を造営した。駆け引きに満ちた宮廷政治と、個性豊かな建築家たちの物語を通して、近代都市の源流に迫る。
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Posted by ブクログ
[冠たる都市の冠たる設計]卓越した都市計画の上に成立し、今日においても世界中の人々を魅了し続けるパリ。リシュリューやルイ十四世の時代にその淵源を求め、建築に関する数々のエピソードを紹介しながら、グランド・デザインの背景を探っていく作品です。著者は、フランス政府から学術交流の業績に対して学術教育功労勲...続きを読む章を受章している三宅理一。 都市計画に関する技術的側面のみならず、その背骨を形成した思想や価値観まで掘り下げて解説してくれているところが白眉かと。どのような歴史的推移を経てパリという街が成立したかが図面とともにわかりやすく解説されており、パリやフランスに興味を持つ人にとどまらず、広く建築に興味のある方にオススメしたい一冊です。 建築家が当時の宮廷グループの一員をなしていることが多かったこともあり、パリをめぐる「人間臭い」エピソードが魅力的なの点も本書の魅力の一つ。ただ建築的な才のみならず、コンペや役職を獲得するために政治的手腕を必要としたことや、土地取得のための利権絡む手続など、今日に置き換えても「ありそう」と思える話の数々が、本書を無味乾燥な解説書とは一味異なったものに仕上げていると思います。 〜ルーヴルから始まった一連の君主のための宮殿計画の行き着いたところが、世界の絶対中心としてのヴェルサイユなのであり、その後の時代はその絶対的秩序を緩やかに崩し、ロココ的な分散空間へと移っていくのである。〜 普段自分があんまり読むことのないタイプの本でしたが☆5つ
花の都と呼ばれる大都市・パリの、都市計画の源流をみていくのが中心の本。アンリ四世からルイ十六世まで、ざっと五代の王の時代の建築と都市整備をたどります。まず本書は、リシュリュー枢機卿という人物からはじまります。鉤鼻で、権謀術数にたける策士といった風貌で、デュマの『三銃士』では悪役として描かれていますが...続きを読む、まあ、実際は権力争いで苦労しながらも生き延びた人でもあるようなので、実際、政治力があった人物なのでしょうが、その名もリシュリューという小さな町をつくっていて、その街のすぐれた美的であり機能的であるデザインこそが、その後のパリの都市整備(当時は「美装」と呼んだそうですが)の源流と位置付けられそうなのでした。いわば、結果的に、リシュリューは、その後のパリの都市計画にむけた先駆的なイメージを持っていた。建築も都市整備も、そこに住んだり行き交ったりすることになる人々の動線を考えるし、建物や街並みのデザインの美しさ・芸術性も考えて、などなどいろいろな面をミックスして、建築家の思う「これだ!」という良いところで落とし合わせて案として完成する。そして建築アカデミーの会員たちのそういった案を集めたコンペ(設計競技)で、実際に施工するデザインを決めているのですが、そこには、権力争いや利権も絡んでいる場合もあったようです。読んでいてふと思い浮かんだのは、20年くらい前までが最後だろうか、いい車を持っていることがステイタスっていう価値観がありましたよね。そういうのを遡っていくと、王様だとか宮廷貴族による宮殿などの建設、つまり建築こそが、ステイタスを誇るいちばんの手段というところに行き着くなあと。でも、一呼吸置いて再度、あたまの中をめぐらしてみると、ステイタスを誇ることは確かにあっても、芸術をそこに作りあげる欲望、美的な渇望があるなあとわかってきました。
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