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日本社会全体に閉塞感が漂っている。経済は停滞し、年金や医療など社会保障問題も深刻化するばかりだ。大震災の復興財源もおぼつかない。経済成長こそが復活の鍵であるが、日本はもうそれを望むことはできないのだろうか。本書は、日本経済を取り巻く四つの難問-デフレ、財政難、円高、少子化-を社会学の目で整理し、どのような方法でそれらを解決し、経済を成長させることができるかを提示するものである。
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Posted by ブクログ
・日本経済の四重苦「デフレ不況問題」「財政難問題」「国の債務残高問題」「少子化問題」 ・日本経済を復興していくために…プライマリーバランスの悪化を覚悟し国債増発、財政支出を行い一定の成長軌道確立→成長の妨げにならないタイミングと範囲で増税→国債発行を減らしていく
真っ当なことを提言していると思う。やはり問題は、こう言ったマトモな提言が世の中で理解されないこと。これは、TV.新聞を中心としたメディアの責任が非常に大きいと思う。 特に、国債発行に対する無理解?は、TVに負うところが大きいのではないだろうか。今のメディアは煽るだけ煽って何も提言してない。いたずら...続きを読むに国民を不安に陥れているだけのように感じる。 そもそも、今の国民が、貯金の一部を消費に回せばかなりの問題が好転するのではないだろうか。その責任の一部は、マスメディアにも有ると思う。 筆者が繰り返し主張しているように、少子化に一定の歯止めをかけ、高齢化に伴う社会保証制度を確立し、教育と科学技術の国際競争力を維持すれば、日本の未来は格段に良くなると言う主張には説得力がある。 これらのことを、様々な政策で実現する責務が政府にはあるし、メディアも後押しをする必要があると思う。
社会学者による本であるが、社会学のみならず、経済学の視点も踏まえて、社会保障の財源をどのようにまかなうか、増税はどのタイミングで行うかを考察した良書。ベスト候補。
絡みあう四重苦=財政難、デフレ、累積債務問題、少子化 無駄削減だけでは経済成長はしない=何に使うかが問題 失われた20年の犯人はプラザ合意以降の円高 潜在成長率とは後付の理論 規制緩和は需要が伸びることによって活力源となる=携帯電話とタクシー業界 国債の日銀引受と市中引受の効果の違い 小さな政府は誤...続きを読むり=社会保障などの分野は大きな政府が必要 生産性の向上は投資から生まれる 政府の投資によって民間の需要が喚起されないとケインズ政策は生きない まずはデフレからの脱却=そのためには国債の増発=一時的な財政赤字が必要
学者、行政、政治家、アナリスト、マスコミ、評論家らが、日本のクアドリレンマ 四重苦 に対する解を出せずに経済論戦を繰り広げている。円高とデフレ、財政難、債務残高問題、少子化についての巷の議論を総括。筆者の解は竹中平蔵氏のそれに似る。 本書の考察は、これまで私が読んできた巷の経済論の分析、総括ともなっ...続きを読むていた。とても納得感があり、かなり真実に迫ってきているのではないかと感じる。
「行政改革の遅れが、日本経済の弱さの原因のひとつである」という“常識”が、我々の政治や経済を眺める上での潜在意識の中に刷り込まれているように思う。この本はその行政改革の必要性を否定している。 次に、「失われた20年」の犯人探し。これまでに経済学者が述べている要因を並べてくれているので、これだけで...続きを読むも頭の整理になる。 その後に浮かび上がってくる真犯人の姿。“そうだったのか!”と言手を打つ感じ。 全体として、デフレを支える構造を俯瞰することが出来る、いい本だと思います。
のっけから暗くて沈んでしまう感じの本です。 筆者いわく、 日本経済は脱出不能の四重苦の中にある。 【デフレ。財政難。膨大な債務残高。少子化。】 どれか1つに対応する策を立てると、他の1つが悪化するという、同時解決不可能状態。 デフレから脱却するには需要の拡大が必要。 ⇒需要の拡大には減税や政...続きを読む府支出を直接増やすことが必要。 ⇒だが、そのためのお金はない。 ⇒借金をするにも国債はすでに膨大な金額だ。 ⇒政府の歳出を切り詰めたとしてもそれはその分需要の減少となる。 ⇒増税すると消費を控えさせてしまう。 ⇒少子化による人口減少は需要そのものを減少させる。 ⇒それは避けたいが、出産と育児の充実にあてるお金もない。 ⇒若年層の所得向上につなげるにはデフレ脱却が必要 ⇒それには需要の拡大が必要・・・・・・ と、全般にわたってこのように「もはや打つ手なし」な感じで書かれているので、日本の将来に希望が持てなくなってしまいます。 ですが、いわゆる世間で言われている「噂」みたいなものを、「そうじゃない」「根拠がない」とバッサバッサと切っていくところは、爽快な感じがしました。 以下はそのうちのいくつかです。 ・「無駄の削減で景気回復」は神話であって、政府が支出しなければならないものまで削ることは望ましくない。そもそも何が無駄かは、人によって、また社会によって異なる。スパコンは無駄かどうか。宇宙探査は。 ・「日本は十分豊かになったのでもう需要が伸びない」なんてことはない。 ・1985年のプラザ合意により「1ドル約240円から約120円」という超円高となったその時からすでに、産業の空洞化は進み、国内の仕事は減少してきている。Made in Chinaが増えたのはこの頃。 ・本当は当時からの「分不相応」の円高による不況が20年続いているのに、バブルがあったことで、バブル崩壊の後遺症による不況だと間違って認識されるようになってしまった。 ・「GDPが増大しないのは労働者の生産性が上がらないから」はウソ。インドとスウェーデンのバスの運転手の賃金は50倍も違うが、それをもって生産性が50倍高いとはいえない。「車1台作るのに100人必要なのか50人でできるのか」という生産性の話と、GDPにおける生産性の話は違う。 ・お金が増えても貯金に回してしまう状態の「流動性の罠」は、個人レベルの話。企業は貯蓄するのではなく「設備投資に見合った利益(需要拡大)が見込めないから投資しない」だけである。超低金利でお金が借りやすくなっても借りずに設備投資が増えないのは、儲かる見込みがないから。 ・「潜在的成長率」といったものは架空のもの。正確なものは誰にもわからない。 などなど。 それで、結局、筆者としては、四重苦から抜け出すためには、 今後数年間は国債発行により政府支出を増やし需要を確保し、経済の安定的拡大が見込める状態になれば消費税を増税する。 という方向が望ましいらしいです。 内容が正しいかどうかは全くわかりませんが、経済の基本がなんとなく理解できるような気がする本です。これを読んで以来、新聞の経済関係の記事をよく読むようになってます。この先どうなっても、一日一日を一生懸命生きていこうと思いました。
本書は社会学者による経済書とのことだが、日本経済の混迷をわかりやすく解き明かしているように思え、高く評価できると感じた。 「失われた20年」ともいわれる日本経済の現状については多くの経済学者が著書のなかでそれぞれがそれぞれの主張を行っており、まさに百花繚乱の状況のように思える。そのなかでも本書の...続きを読む主張は、うなづける箇所が多いと感じた。 「日本が抱える四重苦」では、(a)デフレ不況問題、(b)財政難問題、(c)国の債務残高問題、(d)少子化問題を取り上げ、この4つの問題を「この4つの課題を同時に解決したいのだが、ひとつの課題を解決しようとすると他の課題の状況が悪化してしまう」とし、「クァドリレンマ(四重苦)」と表現している。まさにそのとおりではないかと思った。 本書は、その課題の内容を一つ一つ詳細に分析し、その問題をどのような優先順位で解決すべきかを主張している。その結論は「まずはデフレの脱却から」というものなのだが、説得力があると思った。 また、本書の「潜在成長率」についての主張は興味深かった。日本経済の成長率が低迷していることへの供給を重視する経済学者の見解として、潜在成長率の低下が原因であり、それへの改革がなければ、いくら需要を増やすために財政を投入してもいずれは潜在成長率のレベルに収斂してしまうから規制緩和が必要だという主張がある。それに対して、本書では「潜在成長率とはフィクション」であり、「それまでのトレンドを外挿して推定したものに過ぎない」と明確に断言しており、こちらのほうが説得力があると思った。 ただ、本書の最後に「具体的な戦略政策」のシュミレーションが載っているが、4㌫の名目成長率の想定は甘すぎるのではないかと思う。また現実の経済戦略には世界経済の動きやマクロ経済をも視点に入れた戦略が必要だろうから、本書のようにデフレ対策を最初に行えば、すべてうまく 四重苦が解決できるほど単純ではないだろうと思った。 しかし、本書は混迷する日本経済を見る視点として、読みやすく、わかりやすく、問題をすっきり整理できる良書であると思った。
問題提起の仕方、問題の分析・整理の仕方、分かりやすい解説の仕方、どれをとっても素晴らしいし、マクロ経済という一般的には退屈な分野の話をとても面白く語ってくれている。 ただ、まとめの部分がいただけない。 日本経済が陥っている四重苦、デフレ不況・財政難・国の債務残高問題・少子化問題に対する処方箋を提示...続きを読むする部分なのであるが、結局、一時的に国債発行額を増やして景気を刺激し、税収を増やす。また、景気が回復した時点で消費税を含む増税をする。これらを工程表としてあらかじめまとめておき、提示した上で実行する。かいつまんで言えばそんな内容だと理解した。 そのこと自体は目新しいアイデアではない、例えば亀井静香でも言っている。目新しいアイデアではないけれども、別に悪いアイデアでもないと思う。そうなれば良いよね、とは思える内容だ。 ただ、工程表の中身が甘いのと、実証的でないところが、がっかりの原因。 2011年に国債発行額を大幅に増加させ⇒景気を刺激する⇒結果として2012年の名目経済成長率を4%見込む、というところが出発点なのだけれども、そんなことが実現するの?実現するとすれば、どういうロジックでそうなるの?という部分が全く説得的でないのだ。 素晴らしく面白い前半と、ややがっかりの結論。 でも、問題の分析やその提示の仕方はエキサイティング。読んで損はないと思う。
アベノミクスそのものである。著者の提言と実際の政策がリンクしているのかどうか知らないが、5年と言う時間がその主張が全くのフィクションであったことを証明してしまった。円は徐々に高くなって元の木阿弥、日銀による国債買い入れも銀行の当座預金に現金を積み上げただけだ。 過去最高の企業業績も円高で簡単に吹き飛...続きを読むんだ。失われた20年の原因が円高にあったとの認識は間違いないだろう。ただ為替レートは意図したようには動かせないのだ。 未曾有の量的緩和も著者が言うように本当に害がないのなら良いのだが、『大したことではない』と言う認識のインフレが起こった時の我が身への影響を考えると恐ろしくなる。いずれにせよ著者の主張する綱渡りの工程表には何らかの決定的な誤りがあることは結果が証明しており、経済学の世界では一見もっともらしい言説もまるで信用ならないことを改めて認識した。 とは言え、家計や企業会計と国庫財政を同一視した議論が多い中で、社会政策と財政との関係がロジカルに整理されていて勉強になった。こう言う視点は社会学者ならではだろう。
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盛山和夫
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