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混乱を極めた一九九〇年代も今は昔。プーチンという強力なリーダーのもと、原油価格の高騰や国際情勢を追い風に、ロシアは復活した。国際社会と時に摩擦を起こすロシアは「脅威」なのか。その行方を分析するには、指導者たちの決断の背後にある、独特の「ゲームのルール」を見極めることが必要だ。若き現役外交官による冷静な観察は、偏見や怪しげな裏情報を排し、われわれの現代ロシア観を新たにする。
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Posted by ブクログ
プーチン以降の現代ロシアの意志決定について、インフォーマルな情報を排除して分析した良書。プーチンは独裁者ではなく、法的手続を重視している統治者である。ただし、プーチンロシアのルールは明文化されていないモノも多々あるが、公表されている情報を丹念に読み解く事によりそれを読み解こうとしたもの。メドベージェ...続きを読むフが後継者指名される前(正確には前の前)について居た大統領府長官という職を軽視していた事を思い知らせれた。プーチンからメドベージェフへの権力移行後の発行なので、メドベージェフ>プーチンの大統領交代時の混乱については記されていない。というよりも、もっと早く読むべきでした!
[まずは、ルールから]天然ガスや石油といった豊富な資源を背景として、主としてプーチン大統領の指揮下の元、政治的にも経済的にも影響力を強めてきたロシア。そんなロシアが、近年の成長の背景で確立しつつある自国の論理と長期的な戦略を読み解いた作品です。著者は、モスクワ国立国際関係大学院で修士課程を修了された...続きを読む外交官、武田善憲。 主に90年代後半からのロシアの動きがまとめられると同時に、その動きの軸を作り上げる大本の考え方が示されているため、近年のロシアについて知りたい方にはぜひオススメの作品。昨今のウクライナ情勢の悪化前に執筆された一冊ではありますが、その情勢に対するロシアの行動を考察する上でも、本書で指摘されるルールは有用なのではないかと思います。 大国として振る舞うことができる「実力」のみならず、それに伴う「意志」が確固としていることにも注目する必要があるなと実感。また、ロシア政府から眺める景色はずいぶんと日本が見慣れている景色と異なるんだなという点にも気づかされました。 〜ロシアは存在感を増し、地政学の中心的存在になった。そして、何よりも重要なのは、この国がプランと、それを実現するためのゲームのルールを持っているということである。〜 わかりやすい記述もイイ☆5つ
現代ロシアをその「ゲームのルール」に基づきクールな筆致で概観。コンパクトにまとまった良書だと思う。ちなみに日本との関係については終盤で1ページちょい触れているのみ。 ・序章 ロシアの見方 クレムリノロジ―の限界、ゲームのルール ・第1章 内政 -与えられた職務に専念せよ 「決定するのは大統領...続きを読む」(弱いエリツィン⇔強いプーチン) 憲法・ルール・手続きに沿った統治 オルガリヒ(新興財閥)の排除 大統領府の重要性 ・第2章 外交 -多極主義と実利主義 政治的イデオロギーとしての「多極主義世界の追求」、バランス・オブ・パワー CISとの関係=「影響圏(sphere of influence)」 ・第3章 経済・エネルギー -天然資源による国力増強 「政治的野心を抱かず、正しく納税し、国家の発展に貢献せよ」 国家資本主義 ユコス事件 天然資源を最大限活用した国力の増強 ・第4章 国民生活 -「ロシア的」と「西洋的」の両輪 「豊かな精神性のうえに立つ豊かな国」 優先的国家プロジェクト(教育、保健、住宅、農業、人口) ・終章 これからのロシア 「普通の豊かな国へ」
とかくイメージやバイアスの入った見方ありきのロシア関係の著作群にあって、このレベルの新書はとてもバランスよい見方を取っている。法秩序を守る形であったプーチン・メドベージェフ政権の内実、ロシアが実施しようとしている戦略やプロジェクトに関する記述が新鮮である。一部では、「新冷戦」という言葉さえ囁かれるロ...続きを読むシアだが、バランスのよい定見があることで外交のブレを少なくし、互恵関係へと結びつくであろう。
ロシアに関する知識がほとんど無かったが理解が進んだ。政治的思想の良否は別にして、ロシアのゲームのルールは理解すると非常に明確であることがわかる。しっかりしたビジョンを持ち、ぶれない価値観を持っている。それを強烈なリーダーシップでもって推し進めてきたプーチン。横暴と考えられることもルールを基に考えると...続きを読むやり方はともかく一貫したものを感じる。国の特徴として理解するだけでなく、組織運営などにも展開できるのではないか。
プーチンが独裁者になろうとしている。新ロシア帝国の誕生。本書はそのようなことを幻想だとする。プーチン、メドベージェフは法律家、法律に則った政治をしている。では、なぜ上のようなことが言われるのか。筆者はロシアのゲームという考えを提示している。ゲームが海外と異なっている。そこに外国とのイメージの齟齬が生...続きを読むまれている。変な報道、イメージに流されない論を知りました。
現代ロシア入門書としてバランスの取れた良書。それにしても、オリガルヒにペンを投げつけサインを迫るプーチンは怖い。
恐らく著者は、プーチン政権登場辺りからの様子を見詰め続けてきているのであろう。数々の動きが、判り易く整理されていた。他方、1990年代の混迷との違いに関して、もう少々の“生々しさ”が在っても善かったかもしれないと想いながら読んだ…とは言うものの、少し未来の人達が「2000年頃からの10年程度の動き」...続きを読むというようなものに関心を寄せたような場合、本書は格好の解説書になり得るであろう。 「2000年代のロシアは何をしていたのか?」について、本書は教えてくれる。多くの人が共有して然るべき知識であると思う。そういう意味で本書を強く推薦したい…
現在ウクライナと戦争状態にあり、何かと国際政治の舞台に、日々のニュース報道に登場するロシアは、元々ソビエト社会主義共和国連邦という複数の社会主義共和国からなる連邦制国家であるあった。だが、1991年にソ連は崩壊し、中核となるロシア、ウクライナをはじめ、その後同じく軍事的衝突を起こしたグルジア(現ジョ...続きを読むージア)、バルト三国、ベラルーシ、スタンという国家名がつくイスラム系諸国などに分裂した。分裂したと言っても経済的、政治的、軍事的に強固に結びつく体制を持つベラルーシや実質的にロシアの一部と見做される国も多くある。その一方でラトビア、エストニア、リトアニアのバルト三国の様に西側諸国と強く結びつき、EU、NATOに加盟するなどして、特に軍事的にロシアの脅威となった国も存在する。ソ連の時代真っ只中に、私はまだ学生として授業で学んでいた頃だから、アメリカと並び大量の核兵器を持つ国として、いつ核戦争が起こってもおかしくない様な緊張感、世界各地で発生する紛争の背後でアメリカ・ソ連が紛争当事者を相互に支援するような代理戦争など、世界を動かしているのは、実質的にこの二つの超大国なんだろうと漠然と感じていた。正に世界の頂点に位置する強力な存在であり、双方の指導者のいずれかが間違いを起こせば、世界は核戦争で滅び、当時流行ったアニメである「北斗の拳」の世界になるものと思っていた。勿論そうなる前に、東西ドイツの統一や、ソ連の崩壊など、世界中に吹き荒れた民主化の波で世界地図自体が大きく変わり、緊張状態もある種一旦リセットされた様に感じたのも確かだった。その後のロシアの没落を見て、暫くはそうした「超大国の脅威」と言ったイメージも無くなり、言い方は悪いが主流から外れた感覚を持っていた。 それを大きく覆したのは、本書の主人公と言っても良いプーチンの登場だろう。ソ連崩壊後ロシアとなって初の大統領であったエリツィンは、なんとなく酒飲みのおじさんと言ったソフトなイメージを持っていたが、切れ目で強権を振り翳し、時にはお偉方を集めて激しく叱責するプーチンは怖い指導者そのものだった。柔道の背負い投げで相手を投げ飛ばしたり、筋肉隆々の太い腕をテレビであえて映すなど、正に強いイメージを世界に見せてきた事で、世界中の人々の多くは、強い指導者プーチンの元で、いずれロシアが世界の主流に舞い戻ってくることを薄々感じていただろう。 崩壊したとは言えロシアはユーラシア大陸に跨る世界最大の領土を持ち、未開発地域に眠る鉱物資源、エネルギー資源も含めると、まだどれ程国力を増大させるかも想像がつかず、何より世界が注目する北極に面して、将来的にどこまで発展するのか、裏返せば世界の脅威となるのか正確に推し量ることが難しい。核を始めとした戦争兵器開発の技術、それを発展させた宇宙開発技術も世界トップクラスにあるのは間違いないだろう。プーチンを中心とする政治体制も、国民の大きな支持のもと当面は盤石であろうし、本書の2人目の主人公とも言えるメドベージェフ(3代目大統領)などはまだ50代と若く、プーチン1人の強さが目立つものの、後継者になり得る様な人材も多くいる。 何よりそうした強い国の基盤部分を技術的にも法制度的にも整備を主導してきたのがプーチンであり、国家の強さを決める資源や食糧分野、教育、医療などの要素について、自国の強み弱みを把握しながらの重点主義に徹して長期間じっくりと強化をしてきた。西側諸国であれば、政治体制は「結果をすぐに出さない政府」に対して人々が直ぐに替える答えを下してしまうから、ある意味、国家百年の計などは夢の様な話であり、実現に中々至らない。その点、中国やロシアは違う。勿論結果を出さなければ民衆の支持は得られないが、長期間強固に団結した一つの政治体制が、ある種、独裁的に物事を進めることができ、政治家にとっては中長期のプランを描きやすく、腰を落ち着けて取り組める安心感があるだろう。そうしてソ連崩壊でリセットされ、どん底からやり直せる機会はそう多くないから、やりやすいと言えばやりやすい。太平洋戦争敗北後の日本の様な感じだ。これ以上悪くはならない、責任をそれまでの政治体制のせいに出来るというのは大きい。 だが真に恐ろしいのは、そうした西側諸国のルールや戦後日本の状態とは違い、プーチンという人間そのものである様に感じる。冷戦時代の米ソ2大国で世界を主導する体制はいずれどちらかが息切れして崩壊する事を予測し、世界の至るところの国々と多極的に結びつく事でリスクを抑制する。一方でドイツの様にエネルギー分野で強固に関係を築いたかと思えば、それが崩壊しても影響を抑制できる様、次のプランに大胆に切り替える。寧ろ、相手の依存度が高まる程、ロシアにとっては有利であり、弱みとして使える事を理解しながら物事を進める。使えなければ、遮断して周到に準備されたバックアッププランに切り替え、経済的な損失を限定できる。今、正にウクライナ戦争で西側があらゆる経済措置を加えながら破綻しないロシアの姿や、大国がどんなに国際的な会議の場で非難しても、中国、インド、アフリカ諸国がロシアを非難しないようなシーンに見えてくる。ロシアの徹底した強靱化政策の賜物だろう。 中長期戦略、重点主義、網羅的なリスク管理、強力な推進を可能にする体制とルールの整備、何より緻密な計算と果てしない想像力で、先手先手で策を打ち続ける強いリーダーとしてのプーチン。ウクライナ戦争が世界に与えた衝撃は大きく、人々に自分が殺戮者の様なイメージを与えたプーチン。国民の支持も捏造されたものだろうと勝手に想像し、そのうち暗殺でもされるのでは、と密かに期待をかける人も多いだろうが、中身はもっと我々が想像する以上に盤石で強固で、彼らにとってはこの上なく素晴らしい政府・リーダーなのではないか。そうなるとウクライナ戦争の行く末も、ロシアにとって南下政策の道筋さえ確保できれば、後はキリを見ていつでも終わらせられるし、そちらに世界が目を逸らしているうちに、更に重点政策で国力を強化し、宇宙開発などで世界を圧倒する日が近々(もう、既に)来るだろうと予想する。 ロシアの、プーチンの真意がどこにあり、何を目指しているか、本書は10年以上前に書かれたものではあるが、国家レベルの長期戦略の結果が出るまでには何十年もかかる。だから答え合わせをしながら読むことができる。加えて、現在の世界の中で理解し難い行動をとるロシアが何故その様に振る舞うのか、そしてこの後どの様な決断でどこへ向かうのか、その考え方を少しでも理解するのに役立ちそうだ。そうでなくても、対外的に公開される情報を絞り込み、得体の知れない恐怖感を植え付け続けるロシアである。見えない、漠然とした懸念と不安の中で、ロシア相手に正しい対応はできない。期待も希望も全て裏切る(我々が勝手に期待するだけで、ロシアにとっては何ら過去から予定された行動)国だからこそ、考え方を知る事は重要だ。
プーチンがどうやってロシアを復活させたかの本 経済・競争のルールを定め、強いリーダーシップにより国家資本主義として成長したということ
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ロシアの論理 復活した大国は何を目指すか
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