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サッダーム・フセインを放逐し、イラクに救済者として降り立ったアメリカは、民主主義という福音がこれほど無力とは思っていなかったろう。なぜ戦後復興は泥沼に陥ったのか。宗派や民族の対立、いびつな国土という混乱の種は、イラク誕生時すでに蒔かれていた。一九二一年、暴発した排外運動を封じ込めようと、苦肉の民政移管でこの人工国家を生み出したガートルード・ベルの苦悩を軸に、イラクが背負う困難を照らし出す。
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Posted by ブクログ
ニーダーマイヤーとかガートルード・ベルとかトーマス・エドワード・ロレンスとか。一度目は読み物として、二度目は資料として。
安部重夫「イラク建国」(中公新書) 第一次世界大戦でイギリスはオスマン帝国を解体した。メソポタミアの地にハーシム王家のファイサルを招いてイラク王国を建国するにあたり尽力したのがガートルード・ベルというイギリス人女性である。本書は半ばガートルードの伝記であり、半ばイラクがなぜ統治困難な国なのかの説明で...続きを読むある。ガートルードは1837年にイギリスの富裕な家庭に生まれ、オックスフォード大で学ぶが当時のイギリスに高学歴な女性の居場所がなく、テヘランに駐在していた叔父を訪問したことから中東にはまっていく。中東ではローレンス(アラビアのロレンス)やその師の考古学者ホガースとも出会う。その頃、ドイツではウィルヘルム2世が中東進出を目指しベルリン・バクダット鉄道の建設を進める。イギリスはドイツのペルシャ湾進出を阻止すべくクウェートを保護下に置く。またロシアとの対立を解消し、イラン北部をロシア、南部をイギリスの勢力圏に分割し、またアフガニスタンをイギリス勢力圏とする。ドイツは親イスラム路線を打ち出し、イラン内での対英蜂起やアフガニスタンの反英化を目論む。そうこうするうち1914年に第一次世界大戦が始まる。 1915年、考古学者ホガースは海軍に応召しカイロにアラブ情報局を開設し、ローレンスとガートルードを呼び寄せる。彼らはアラブ人たちにオスマン帝国への叛旗を翻そうと工作に取り組む。一方で同じイギリスのインド植民地政府のハーディング総督はイランからメソポタミアに影響圏を広げようとしており対立する。ホガースはガートルードをデリーに派遣し戦略を調整する。その後、ガートルードはエジプト、メソポタミアを往来し、アラブ各勢力に楔を打つ。ローレンスはハーシム家の王子とともにオスマン帝国からパレスチナからシリアを解放する。 第一次世界大戦終了後、イギリスはアラブ人への独立の安請け合い、ユダヤ人へのパレスチナ入植の許可、フランスとの勢力圏分割など多くの矛盾した約束に苦しむ。イラクの地は当初、委任統治領としてイギリスが直接統治にあたるが相次ぐ反乱や膨れ上がる統治コストに耐えかね、アラブ人を国王に立てることを模索する。当地の高名なスンナー派法学者の息子も候補に上がるが、ガートルードはその人間性に信頼が置けず、結局はメッカの太守ハシーム家の四男ファイサルを招いて国王に招くことを提案、ローレンスやチャーチルも合意した。このようにして1921年にイラク王国は建国された。その後まもなくガートルードはイギリスに帰国するが健康を害し、睡眠薬の過量服薬で死去する。 その後のイラクは、国王の殺害、バース党政府樹立、サダムフセインの台頭、そして国家崩壊に至るが、著者は国民の半分を占めるシーア派の存在が無視されたこと、同じスンニー派でも言語や文化の異なるクルド人地域を含めたことから統治不可能な国になったのだとし、湾岸戦争後の米国もかってのイギリスの過ちを繰り返していると評価している。
第一次世界大戦前後のドイツ、イギリスの争いと、 その後のイギリスによる統治に至るまでを 主要人物を軸にドラマチックに描く。 やや演出に過ぎ、どっしりとした大局観に欠く 印象を受けたが、魅力的な人物らの所業によって 建国されたイラクの矛盾は興味深い。 個々の事象や人物について、 もっと腰を据えて知りた...続きを読むいと感じさせる秀逸な導入書。
[ 内容 ] サッダーム・フセインを放逐し、イラクに救済者として降り立ったアメリカは、民主主義という福音がこれほど無力とは思っていなかったろう。 なぜ戦後復興は泥沼に陥ったのか。 宗派や民族の対立、いびつな国土という混乱の種は、イラク誕生時すでに蒔かれていた。 一九二一年、暴発した排外運動を封じ込め...続きを読むようと、苦肉の民政移管でこの人工国家を生み出したガートルード・ベルの苦悩を軸に、イラクが背負う困難を照らし出す。 [ 目次 ] 第1章 東方へ!―アラビアのローレンスと「砂漠の女王」 第2章 反英蜂起―ヴァッスムスの暗号帳 第3章 それぞれの聖戦―炎上する中東の回廊 第4章 「千夜一夜の都」陥落―アラブの反乱とミス・ベル少佐 第5章 アワズの遺産―イギリスが埋め込んだ分断のDNA 第6章 イラクという空中庭園―クルド国家の挫折 第7章 「豚の国」―フィルビーの反乱 [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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イラク建国 「不可能な国家」の原点
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