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Posted by ブクログ
姫川玲子、勝俣健作、倉田修二、葉山則之――それぞれが関わる、一見無関係な事件。別々に見えていた物語が少しずつ結びつき、やがて一つの大きな輪郭を浮かび上がらせていく。
面白かった。勝俣、倉田、葉山が違和感なく主役級に物語を背負えるところに、このシリーズの登場人物の厚みを改めて感じた。
勝俣はたっぷり出番があり、その存在感を存分に味わえる。姫川玲子を嫌っているようでいて、完全に彼女を意識し、対抗している。その様子を見ていると、むしろ好きなのではと思ってしまうほどで、この二人の関係性も面白い。
倉田は登場こそ短いものの強烈な印象を残し、個人的には『シンメトリー』のとき以上に興味を持った。葉山も、これから本編でどう成長し、どんな活躍を見せるのか楽しみになった。
そして不思議なのは、これだけ周囲の人物が濃く活躍しているのに、姫川玲子が前面にいないことを寂しく感じることだ。それだけ玲子というキャラクターの存在が強い。スピンオフでも十分に濃厚で重厚。それでもやはり、姫川玲子シリーズなのだと思わされる。
タイトルの「感染遊戯」とは、正義そのものが感染していくことなのだと感じた。情報や印象の与え方ひとつで誰かの正義感を刺激し、自ら手を下さず、その人自身に「裁くべきだ」と思わせる。何より怖いのは、悪意ではなく正義感が利用されること。自分では正しいことをしているつもりだからこそ、その感染には気づきにくい。
復讐したいという感情そのものまで悪だとは思えない。けれど、復讐という行為を正義と呼ぶこともできない。憎んでいる相手と、知らず知らずのうちに同じことをしてしまう。そんな人間の皮肉まで含めて、「何が正義なのか」を考えさせられた。
『シンメトリー』のような短編集にせよ、『感染遊戯』のようなスピンオフにせよ、本編とは違う角度から人物や世界を楽しめる。その振れ幅こそ、このシリーズのエンターテインメント性なのだと思う。
姫川玲子シリーズの懐の深さと、正義が凶器にもなり得る怖さ。その両方を堪能できる一冊だった。
Posted by ブクログ
感染遊戯
姫川玲子シリーズ五作目。玲子の活躍というよりもガンテツが中心のスピンオフ。姫川のもと部下だった葉山、そして以前短編で登場した倉田を主人公にした短篇から、最終的に大きな事件の核心に集約していく。ガンテツ、倉田、葉山目線があるため、彼らの深掘りがされており、より感情移入ができる様になる。
それぞれ短篇が一話完結になっているが、過去、現在がつながり、現在発生している元官僚殺しに集役する。一見、其々の事件の犯人は独立しており、共通点も見出せないが、とあるミッシングリンクをきっかけに真相が発覚していく。
それぞれの事件は復讐や正義を掲げている犯人や登場人物達が描かれるが、一様に正義とはなにか、悪とはどういった事かを考えさせられる。
倉田の事件について、玲子は必ず彼の息子を守ると言っていたが死んでしまう。玲子は倉田を疑っているが、読者は真相を知っている。倉田の現在の行動規範や、ガンテツと出会ったことによる変化とこれからの登場は楽しみであり、ダークヒーローたり得るのかが実物である。葉山についても、玲子の元を離れたが、チームメンバーとは交流もあり、またガンテツにまで気にいられている様子で、今後も更に活躍しそうだ。
発表当時ののネット環境やリテラシー、そして何者かわからない恐ろしさは懐かしいと思う反面、今の時代に読むと少し大袈裟に、滑稽に見えてしまう。
最後のガンテツと玲子のやりとりがとても面白い。ガンテツも疲れる事があるんだなぁと思いつつ、おそらくわざわざそんな時に電話する玲子もさすがだし、玲子の口喧嘩もガンテツと遜色なくなってきたなぁと愉快に思ってしまった。
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