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Posted by ブクログ
文化3年(1820)十一代将軍家斉の世。
江戸城の料理人・鮎川惣介は、丸顔で人がよい。
夫婦になって十五年、二人の子供がいる妻とは他愛もない夫婦げんかをしている。
惣介は天性の鋭い嗅覚を持つ。
四十人いる料理番の一人だったのだが、将軍・家斉に気に入られ、直で会うことが出来る稀な立場になる。
「台所人に身をやつしたお庭番」などと囁かれるが…
あたたかいお汁や、煎り立ての黒豆、その場で淹れる宇治の青茶など、お毒味の後の冷め切った料理ばかりではさぞつまらないでしょうから、こっそり、こんな差し入れが貰えたとしたら楽しかったでしょうね。
当時、将軍はあまり評判の良くなかったような。
しかも、家斉は、跡継ぎの息子と上手くいっていないんですね。
跡継ぎは「西の丸様」と呼ばれている。
老中になろうという野心を抱く水野が27歳という時期。
大奥で小袖の盗難事件が起きる。
難事件かと思われたのに意外に早く白状した娘があって、里に帰されることになる。
江戸城を出た父娘の跡を付けたが見失い、後に遺体で発見される。心中とされるが、疑いを持つ惣介と隼人。
幼なじみの親友・片桐隼人は、御広敷の添番という近い役職にある御家人仲間。
長身で美形で引き締まった身体、腕が立つという憎らしいような男。
名コンビを組んで、事件に関わっていきます。
曲亭馬琴が登場、時には相談役ともなります。当てになるとは限らないけど。
馬琴の仕事もしている北斎を慕う安藤広重が安藤重右衛門といい、定火消同心で、町火消しの役もしていたとは。のんびりした人柄が微笑ましい。
江戸では火事騒ぎが続き、付け火が上様のやったことという流言まで。
自首して出たのは、う組の火消しの息子で、腕の良い櫛職人の竜吉。はたして?
京都から来た謎の人物・桜井雪之丞も加わり…
跡継ぎ・家慶の正室が京都出身なのですね。
展開の予想が出来ないので新鮮でした。
惣介の人の良さが救いになっています。
Posted by ブクログ
江戸城の台所人・鮎川惣介が天性の鋭い嗅覚で様々な事件の謎解きに挑むシリーズ第一作。
久しぶりの再読だが、改めて読むと様々な発見があって面白い。
まず惣介も相棒の御広敷添番・片桐隼人も家庭内はギスギスしている。惣介の方は言いたいことを言い合っての喧嘩だけに救いがあるが、隼人の方はかなり重い。この時代、結婚して十年経っても子どもが生まれないというのは奥様にとってかなりの重圧だろうが、それだけではない疑心暗鬼を妻に対して抱えているようだ。
確か後の作品では好転していたように覚えているので、それを楽しみに見守る。
また上方から来た料理人・桜井雪之丞がこんな怪しい登場だったというのも忘れている部分だった。
このシリーズは惣介のぽっちゃり体型と食べるの大好きなキャラクターからほんわかした雰囲気を予想し勝ちだが、事件は意外にもシリアス。
大奥の権力争いに端を発した盗難事件が殺人に発展したり、連続無差別殺人が起きたり、付け火による連続火事。
特に火事の事件は惣介が仕える将軍・家斉が指示したという噂が流れる。しかし惣介は時折直々に出来立ての料理を食べてもらう機会に家斉の本音を聞いているだけにそんなことをするとは思えない。
ここで思い出したのは今村翔吾さんのぼろ鳶シリーズ。あちらは家斉の実家・一橋家の陰謀で様々な火事が起きていたが、こちらではその息子・家斉にこんな疑惑が掛けられている。
第一作通してのテーマは親子や家族関係の難しさ。惣介のように言いたいことを言って喧嘩しているうちはまだ良い。言いたくても言えない、言っても届かないということが積み重なるともうどうにもならない事態になってしまう。特に家斉のような将軍家になると親子が面と向かって話をすることすら難しい。
そこに様々な野望や陰湿な思いを抱えた者が周りを固めていたら、事は更に複雑になる。
惣介の思いが家斉と家慶親子に届くのか、次回に期待。
書き忘れたが、曲亭馬琴がなかなかのクセのあるキャラクターでこちらにも注目。
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小説・文芸
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