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Posted by ブクログ
鮎川哲也の長篇ミステリ小説『人それを情死と呼ぶ~鬼貫警部事件簿~』を読みました。
アンソロジー作品『線路上の殺意 鉄道ミステリ傑作選〈昭和国鉄編〉』に収録されていた『早春に死す』を読んで、鮎川哲也の作品を読みたくなったんですよね。
-----story-------------
人は皆、警察までもが、河辺遼吉は浮気の果てに心中したと断定した。
…しかし、ある点に注目した妻と妹だけは、偽装心中との疑念を抱いたのだった! 貝沼産業の販売部長だった遼吉は、A省の汚職事件に関与していたという。
彼は口を封じられたのではないか? そして、彼が死んでほくそ笑んだ人物ならば二人いる。
―調べるほどに強固さを増すアリバイ。
驚嘆のドンデン返し。
美しい余韻を残す長編。
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『週刊文春』の1961年(昭和36年)1月23日号から3月6日号に連載された中篇を長篇化したもので鬼貫警部シリーズの作品です。
■一 見知らぬ女
■二 山の宿
■三 失踪のはて
■四 論理の軌跡
■五 意外な発見
■六 庫裡(くり)の灯
■七 海の宿
■八 狩猟家は語る
■九 夜くる客
■十 疑惑の否定
■十一 夢をみた男
■十二 鏡の説話
■付録1●あとがき 鮎川哲也
■付録2●人それを情死と呼ぶ 鮎川哲也
■エッセイ●街角のイリュージョン―鮎川哲也小論 芦辺拓(作家)
■解説●鮎川哲也とセンチメンタリズム 山前譲(推理小説研究家)
失踪したサラリーマンが箱根の山中で白骨死体で発見され、浮気相手との情死と思われたが、妻と妹は現場での違和感から偽装工作を疑い、夫が関与していた汚職事件を調べ始める… 読みながらどんどん物語に惹き込まれていき、ページを捲る手がとまりませんでした、、、
面白かった! 二転三転する痛快なストーリ―展開やアリバイ崩しの面白さ、汚職事案とは無関係の意外な動機、そして結末の美しい余韻とタイトルが印象に残る素晴らしい作品。
昭和30年代のノスタルジックたっぷりな雰囲気も大好きです… 犯人の告白による事件の全貌が描かれる哀愁感溢れる最終章が泣けますね。
Posted by ブクログ
こういう作品を読んでると本当に自分が何故昭和30〜40年頃をメインに生まれてこれなかったのだろうと悔やみたくなります(笑)。
それほどこの時代の雰囲気が好きです。
などと余計なこともほざきつつ以下ネタばれ感想です。
円満な家庭に舞い降りた汚職事件の捜査の手、そして真面目実直だったはずの夫がある日突然失踪、後にとある女性と心中をして…という話ですが、前半は汚職事件絡みの捜査メインの記述、後半は一転して心中した女性の側の事情を追求していったらそこには…という展開です。この反転のところがうまいな〜と思います。
こういう眼からウロコ的な展開が大好きです。
あと文庫解説にも書かれてましたがラストの描写が美しい。
追い込まれた人間の弱さ儚さと一縷の強さというものが自然な筆致で描かれていると思います。いいなあ鮎哲。
トリック的にはやはり「2月5日」の二重トリックが印象的です。
証言者の誰もが嘘を言っていないのに、実はそこにズレがあるという発想が面白い。実際にやろうと思ったら結構難しそうですが(笑)、やはりミステリはこうでなければね! と思うのです。
そして情死した(ことにさせられた)遼吉さんの妹御の由美さんが素晴らしく頭の切れる素敵な探偵役です。
でも鮎哲作品て(まだ三作品しか読んでませんが)登場人物の誰もが探偵役になれる可能性を秘めているというか、場面場面によって探偵役が移り変わるので一概にこの人が秀でてるとかないのが面白いと思います。鬼貫警部も快刀乱麻を断つよりもまとめ役ぽいもんなあ。由美さんの嫂(あによめ、つまりは遼吉さんの奥さん)の照子さんも素敵な女性でした。
しかし最後に出てきた粋な姐さんはてっきりまた警察官のおとりかと思ってたんですが、本当に単なる恐喝者だったのですね…。ああびっくりした。
そういえば最初の頃に久子さんの葬式の場面で出てくる大学生のことなんてすっかり忘れ去っていたんですが、実はかなり重要な人物だったんですねえ。
すべての伏線が絡まり合ってさっと解ける瞬間ていうのはやっぱり心地いいです。ミステリ万歳。
Posted by ブクログ
松本清張『点と線』を頂点とし、長らく隆盛を極めた日本特有の社会派ミステリに対して、孤高の本格ミステリ作家:鮎川哲也が放った鬼貫警部ものの代表作。<アリバイ崩し>という、ある意味で大技のない地味な印象を与えるプロットながら、読者の予想を次々と覆す展開がビンテージの貫禄に相応しい一編だ。情景描写・心理描写・説明描写の練り方がすばらしく、折り目正しい文章を読むだけでも心地好い。名探偵役による快刀乱麻の推理・解決を楽しむのではなく、謎を秘めた事件そのものの構造が丹念に開示されていく過程を楽しむ。主役はあくまで事件なのだ。タイトルに込められた意味が重層的な余韻を残し、読後の印象を哀しいセンチメンタリズムで包み込む。まだ戦争の傷跡が癒えきらないミッドセンチュリーの日本への慕情を感じながら、こうしたオールド・ミステリに酔うのもまた良いものである。
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小説・文芸
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