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スパイMの奸計により逮捕され共産党から転向した小松修吉は、Mを追って満洲に渡り、終戦後、捕虜となる。昭和21年早春。ハバロフスクの日本新聞社に移送された修吉は、脱走に失敗した軍医の手記を書くよう命じられた。面談した軍医は、レーニンの裏切と革命の堕落を明かす手紙を彼に託した。修吉はこれを切り札にしてたった一人の反乱を始める……。著者の集大成。遺作にして最高傑作。
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Posted by ブクログ
レーニンの手紙にそんなに価値があるのでしょうか。手塚治虫の『アドルフに告ぐ』のヒトラーの出生証明みたいなもんだけど…。でも、『東京セブンローズ』の対ソ連版みたいな感じで面白かったけどね。
今年の4月に亡くなった井上ひさし氏最後の長編小説。場所は昭和21年のシベリア。ソ連極東赤軍の捕虜となった元共産党員小松修吉は、その過去を買われて日本軍捕虜の思想教育の一環として発行されている新聞社に協力を要請される。そこで取材するうちに、収容所から脱走し3千キロ逃走の末、捕まった入江軍医将校からレー...続きを読むニン直筆の手紙を入手する。この手紙にはソ連の体制を根底から揺るがすような秘密が書かれており、小松はこの手紙を武器に極東赤軍と闘争を開始する。入江の脱走劇も小松と赤軍高級将校らとの戦い、レーニンの手紙の行く末は如何にと、ハラハラドキドキの実に面白い冒険活劇となっている。登場する日本人捕虜、赤軍幹部、女性将校らが実際そこに居るかのように生き生きと浮かび上がっている様がすばらしい。また、シベリア抑留は悲惨な話であるが、ドイツ人捕虜には、あのように壮絶な話は無かったことが不思議であったが、その理由の一面もまた理解出来て大変勉強になった。本来はこの連載に加筆され単行本になる筈だったが、作者が亡くなられてかなわなかった。実に残念である。今年一番面白かった小説である。
読み終わった日が、ソチ五輪の開会式。かの日のソ連と今日のロシアでは大きく異なるのは承知。あの頃、ソ連がなくなるなんて思ってもいなかったなあと感慨。大きくなりすぎた国のひずみと、それを塗りこめる強引な手法は、現代の隣国を見るに必然なのか。その適応力と厚顔無恥は、小さな島国に閉じこもる我々には見習うべき...続きを読むなのかもしれない。ただし作中では、当時の日本の愚かさが繰り返し語られ、公平さにおいて抜群のバランスを保つ。著者の見識の賜物だろう。 理想主義な自己中男はどうなろうが知ったことかと思うのだが、周囲の人物たちが魅力的で、その運命にはらはらさせられる。教養に裏打ちされた、極上のエンターテイメント。
もう少しロシアの事、戦時の日本について勉強して読んだら更に面白いのではないか。 登場人物のキャラが非常に分かりやすく、その掛け合いも見事。 いつの間にか引き込まれていた。
井上ひさしの長篇小説『一週間』を読みました。 『東慶寺花だより』、『モッキンポット師の後始末』、『イソップ株式会社』に続き、井上ひさしの作品です。 -----story------------- 最後の長編小説。 昭和21年、ハバロフスクの収容所。 ある日本人捕虜の、いちばん長い一週間。 『吉里吉...続きを読む里人』に比肩する面白さ! 昭和21年早春、満洲の黒河で極東赤軍の捕虜となった小松修吉は、ハバロフスクの捕虜収容所に移送される。 脱走に失敗した元軍医・入江一郎の手記をまとめるよう命じられた小松は、若き日のレーニンの手紙を入江から秘かに手に入れる。 それは、レーニンの裏切りと革命の堕落を明らかにする、爆弾のような手紙だった……。 ----------------------- 2010年(平成22年)に刊行された井上ひさしの遺作長篇です。 ■月曜日 1 ハバロフスクへ 2 日本新聞社 3 食堂の賄い主任 4 哲学者撲殺事件 5 正午 6 昼休み 7 午後の試験 8 Mの噂 9 セザンヌ大画集 10 徐波という店員 11 二つの大事件 ■火曜日 1 出張聴取 2 脱走計画 3 スープをすする廃帝 4 入江軍医中尉の脱走談 5 入江軍医の回心 6 痒みの原因 7 レーニンの背信 8 楽園駅で ■水曜日 1 偽脱走記 2 春がきた ヴィスナー・プリシュラー 3 恋文 4 自画像 5 裁判 6 先生の手帳 7 賭け ■木曜日 1 取引き 2 鏡の架かった壁 3 ソーニャ 4 集団銃殺刑 5 賭ける 6 オロチ人の看守 ■金曜日 1 ザイツェフ閣下 2 街で一番の仕立屋 3 旧友交歓 4 のこる理由 5 この世でもっとも恐ろしい拷問 6 レーニンの手紙は破かれた 7 逆戻り ■土曜日 1 手紙の値打ち 2 オロチ人の立場 3 待ってるわ ジャッタンドレ 4 屋上楽園 5 剃刀の刃渡り ■日曜日 ■小説家井上ひさし最後の傑作 大江健三郎 スパイMの奸計により逮捕され共産党から転向した小松修吉は、Mを追って満洲に渡り、終戦後、捕虜となる… 昭和21年早春、ハバロフスクの日本新聞社に移送された修吉は、脱走に失敗した軍医の手記を書くよう命じられた、、、 面談した軍医は、レーニンの裏切と革命の堕落を明かす手紙を彼に託した… 修吉はこれを切り札にしてたった一人の反乱を始める……。 シベリア抑留の苛酷な現実… 奇想天外な大脱走… スパイMの正体… そして、レーニンの秘密、、、 昭和21年早春の月曜日から日曜日までの一週間の小松修吉の滑稽で奇想天外な権力との闘いを描いた著者の集大成… 遺作にして最高傑作。 面白くてページを捲る手が止まらず、650ページを超える大作でしたが長くは感じなかったですね、、、 入江軍医の脱走劇やレーニンの秘密を巡る攻防等、冒険小説としての愉しさやワクワク感を持ったエンターテイメント要素と史実に基づいたシベリア抑留者の辛く厳しい生活の悲壮感が伝わるノンフィクション要素の両面を併せ持つ作品でした。 印象に残ったのは、シベリア抑留の問題を改めて考えさせられたノンフィクション要素の方かな、、、 多くの兵士たちが酷寒の地で飢えて凍えて死んでいった悲劇の原因は、戦後復興に向けた無償の労働力を得るための無法なソ連の蛮行としか認識してませんでしたが… 食糧難や住宅事情から国内の人口を増やしたくないという背景もあり、ソ連の要求にやすやすと応じた大日本帝国の無責任さや、収容所に軍隊の秩序を持ち込んで自分たちの優位的な立場を継続するだけでなく兵士の食料を巻き上げていた関東軍の参謀や上級将校(しかも彼らは強制労働の対象外…)の身勝手さなど、日本側にも多くの問題があったことに気付かされ、悲しみや怒りを感じましたね。 戦争に負けることや捕虜になることを想定していなかった日本軍が戦時国際法に関して無知だったことも状況を悪化させた要因だったんでしょうね… 井上やすしは、本作品を通じて、それらのことを告発したかったのかもしれませんね、、、 エンターテイメント要素の方は、終盤までハラハラドキドキさせられましたが… 最後は現実的で哀しい結末でした。 この締めくくり方には賛否両論あると思いますが… 個人的には受け入れられる内容だったかな、、、 たった一人でも無慈悲な権力と闘う強さ… 自分も、そんな力を持ちたいと思いました。
ソ連の捕虜となった主人公がどうにかして日本へ帰ろうとするはなし。歴史の題材はとても深刻なものを扱っているのに、ユーモアがあって面白い。全体を笑いのオブラートで包み込んでいるような感触。最後の終わり方が唐突であるように感じたが、落とすところは何気なく落としておいて、笑わせるところは笑わせるような語り口...続きを読むにいつのまにかはまってしまっていた。結局Mは誰だったんだろうか。当時の歴史的背景を知らなくても、分かりやすかった。むしろ、背景を知ることができる。もっと周辺知識があればもっと面白そう。中国語やロシア語がわかれば尚更。WWⅡ後の裏歴史も盛りだくさん。知らなかったことが多すぎる。学校ではこんな切り口で学ばなかった。知らなかった。主人公の人生は当時の大きな出来事も余波を大きく受けている。そのためか、個人の視点から歴史の流れをリアルタイムで見ている感覚もあった。戦争文学読みたいな。参考文献の量と、著者の博識に頭が下がるばかりだった。自分の知識の薄っぺらさを思い知る。もっと学ばなきゃ。
かなりいろいろなものが詰まった作品。戦争を起こした人たちの愚かさ、俘虜のつらさなど詳細に語っている。
井上ひさしさんの遺作。連載小説であったとのこと。戦時中共産党員出会った主人公が、自分を陥れようとしたスパイMを追ってロシア二割ったところ終戦を迎え捕虜となる。捕虜となったある日呼び出されると、捕虜向けのプロパガンダとして作っている『日本新聞』なるものの編集室で働かないかと呼び出されるところから物語は...続きを読む始まる。そこを監修するロシアの将校たちがまた日本語が達者という設定でやり取りに引き込まれ思わず笑ってしまう部分も多い。遠くまで脱走したが残念ながら捕まった従軍医師の取材を命じられたところから物語が大きく展開をみせる。荒唐無稽なお話の展開なのだが、あっという間に引き込まれた。日本語が美しいです。こんなに力がはいっていなくて美しい文章はなかなかないかも知れない。名作だと思います。
息もつかせぬどんでん返しの連続。 故井上ひさしの連載小説をまとめたもの。 井上ひさしは通常、連載小説が一冊の本として刊行される際には修正、書き下ろし作業を行なったそうだが、 本作は遺作のため連載時のまま。 ラストがあっさりしているのは、そのせいかもしれない。 もし彼の寿命が伸びていたら、と考えざる...続きを読むを得ない。 しかしその悔しさを抜きにしても、非常に面白い物語である。 第二次大戦後の日ソ関係について興味がある人は必見。ところどころ物語を面白くするための誇張やお遊びはあるが、その隙間に垣間見えるリアルさが印象に残る。
井上ひさし最後の長編小説である。舞台設定が何ともユニークである。後半、息詰まるようなどんでん返しの連続で、ジェフリー・ディーヴァーも真っ青である。ちょっとした、お色気もあり、ユーモアもあり、歴史や政治の勉強にもなる。最後は拍子抜けであるが、何か意図があるのだろう。
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