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Posted by ブクログ
今年退官の藤原氏の講義録。論点を提示するスタイル(おそらく授業で討論?)。保護する責任と沈黙の陰謀は初耳、人道的介入は戦争回避と矛盾するがそこが課題。
アメリカと同盟を結ぶ各国の存在から勢力均衡ではなく公共的覇権国の意義を見出すが、筆者はその意義を疑問視。覇権国による恣意的判断には不満が募るが、強制力に疑問符がつく多国間協調よりは実効性があるのではないか。
民主主義による文民統制が平和を生むという仮説を三浦瑠璃の議論から反論する。民主主義は国際関係よりも国内社会を優先するため両者の調整には外交官が不可欠だと思う。
権力移行論については両者が合理的行動を取れば覇権戦争は起きない立場をとっているが、筆者は勢力が同程度の場合を見落としている。勢力均衡だから大丈夫ということだろうが、この場合は成長速度に有意に差があるので成立しないと思う。割愛したのだろうが、場合分けをしているのだから説明してほしかった。経済(生産力)と軍事が一体化する近現代において分離して考えるのは違うと思った。
領土対立については、国益増進における国土の重要性が減ったという理屈には概ね首肯できる。民族意識に基づく国民国家の思想と国際法の矛盾(棚上げ最適?)が対立を起こしているのも理解できた。歴史問題について、国内被害者・兵士・国外被害者の三者に双方が目を配れていないことが問題と語る。ナショナリズムと結びつき、増々拗れてしまう。
そのナショナリズムであるが、民族自決に基づく分断回避のための自己欺瞞として「国民」の中に包摂することで共通の歴史を創造するものとして評価している。今年の東大入試に出題されたが、日本人としては歴史的資料から日本は古来より一体の国であったといいたいが、中々難しいものではある。
最後に核開発について、軍事行動・経済制裁・国際対話から手段を選ぶが、結局は主観的リスクと相手の信頼だと喝破する。そこから平和の条件として勢力均衡・絶対平和主義の止揚としての戦争違法化と好戦国排除を提案するが、実効性・正当性を齎すには課題山積である。玉石混交の国際政治で玄人の貴重な意見に触れられてよかった(タイムリーでもあったし)。
2022/3/5
Posted by ブクログ
戦争がどんな場合に起こってしまうのか、それがタイトルと私なりに判断したが、著者は結びで戦争を避けるための条件、それでも戦争に訴えなければいけないときに満たす条件という2つの意味が込めているらしい。とにかく戦争を避けることは絶対条件であるという認識で、いろんなケース事例ごとに、A国、B国、C国と言う呼称を使って読者に考えさせるという本が明らかに米、ロシア、中国、北南朝鮮、イスラエル、イラン、旧ユーゴスラビア各国、その他の国々を想起させる。世界中から専制主義国が消えて民主主義国になれば戦争は無くなるという理想が本当にそうなのか?民衆が戦争を望んでいる場面がある!(かつての日本そして…)という残念な事実を思わざるを得なかった。領土問題での衝突を避けるために棚上げ(先送り)することの有効な意味については、初めて理解できた。大切な考え方だ。
戦争の記憶についての解説は日本において、広島の語り、空襲の語り、そして靖国(つまり戦死した日本兵士)の語りが中心で、南京の語りが飛んでいたということについては全く同感!。この著者の「戦争を記憶する」など巻末に紹介されている30冊にはぜひチャレンジしたい!
Posted by ブクログ
「A国に軍事侵攻されたB国が、第三国Cに派兵を求めてきた。C国はどのような行動をとるだろうか」という様に、固有名詞を避けた問いかけを軸にして国際政治について考えてゆく一冊。
様々な考え方を披露するものの、結論があるわけではなく、「まさに現代国際政治のジレンマそのもののなかに読者を放置したまま、この章を終えることとしたい」などと突き放してしまう。読んでいる途中は、正直言って疑問を感じていたが、「結び」を読んだ瞬間、著者のこの突き放しの意図がわかってスッと落ち、星の数もひとつ増えた。曰く「教育問題と並んで、国際問題は素人の発言が専門家と横並びにされる領域である。…(中略)…国際問題について行われる議論の多くは、白い鳥を集めて鳥は白いと言う人と、黒い鳥を集めて鳥は黒いと言う人との間の争いに過ぎ」ない、と。なるほど。
この本は、まず「結び」を読むのが正解だ。
Posted by ブクログ
著者は国際政治学を専門とする東大教授である。本書は、A国やB国などさまざまな仮定の状況を設定し、どのような対応が起こるかを考察するという形式を繰り返して、国際政治の初歩を考える、という書である。本書を自ら読もうとする人ならば、専門家でなくてもすんなり理解できるような内容であり、そんなに難解な内容ではない。
最近のマスコミや識者の論調には、自論に合った現実を提示し自説の正しさを強調するものが多く見られるが、その一方、反対者も同様なので議論は深まることなく互いに罵るだけ、という見苦しい状況にあるように感じているが、そのような不毛で本質に遠い論議にさらされている人やうんざりしている人にこそ、国際政治の初歩としての本書を読んでほしい。
世界の現実と歴史を目をそむけずに客観的に学んでこそ、平和の実現の第一歩なのだから。
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ビジネス・実用
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