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Posted by ブクログ
サブタイトルは「ドイツ的とは何か」。
本書はドイツの特異性として、以下を指摘しています。
-ドイツ民族は、ヨーロッパの中央にあるという特異な位置だけでなく、その発端はゲルマン諸部族にあり、それはドイツという表記には直接つながらない。他のヨーロッパ諸国の言語を見ると、フランス人とフランス語のように、それぞれの国の言語は国や民族を示す固有名詞から名付けられている。
-現代の移民政策にあるようにアジール(庇護権)の理念は近代以降も呪術的なものを抱え込みながら生き残っている。
-中世のドイツは帝国としてヨーロッパの中で優位に立っていた。しかしまさにそれ故にドイツは国家形成において他のヨーロッパ諸国からおくれをとった。他の諸国が中央集権国家を形成していくときにドイツでは逆に中央集権国家が解体していった。
著者の阿部謹也さんはドイツ、ヨーロッパの民衆史が専門。他に「『世間』とはなにか」で著したように「世間」をキーワードに、個人が生まれない日本社会を批判的に研究し独自の日本人論を展開、言論界でも活躍しています。本書でもドイツ民族が中世から現代に至る過程で いかに個人が誕生し、国家より領邦が重視された世界の中で個人が形成されて行ったかが論ぜられています。
今回、久しぶりにドイツ通史に触れて、非常に複雑な歴史であることを思い出しました。したがい、本書も「物語シリーズ」の中では、読みにくいものとなっています。それでも、叙任権闘争、神聖ローマ帝国、宗教改革、領邦国家、三十年戦争、ビスマルク、ヒトラー、東西冷戦、ドイツ再統一と波瀾万丈の物語を楽しむことができます。ただ、本書が出版されたのは1998年。欧州連合の中のドイツの立ち位置まではカバーしていません。しかし、ドイツ基本法にあるアジール法の問題を掘り下げてゆくと古代・中世にまで視野を広げる必要があることは理解できました。やはり、読んだ方がいい1冊と思います。
Posted by ブクログ
カロリング朝から現代にいたるまでのドイツの歴史を解説している本です。
中世ヨーロッパ史の研究者であり、日本史研究の網野善彦とともにわが国における社会史的な観点からの研究を牽引したことで知られています。本書は、ドイツの歴史の全体像をえがき出すことをねらいとしており、文化史について触れられているところがありますが、社会史との結びつきについての言及があるところに、本書の特色が見られるように感じます。
また、本書のサブタイトルになっている「ドイツ的とは何か」という問いかけについては、最終章で現代のドイツが直面している難民問題に言及しながら、考察のいとぐちが示されています。著者は、いわゆる賤民と呼ばれてきた人びとについての研究を手がけているということもあり、政治的亡命者を受け容れることを規定したアジール法に触れつつ、こうした問題が現代のドイツにおいてあらためて考えなおされる必要があるということを説いています。
新書一冊のヴォリュームにドイツの歴史を圧縮してまとめているので、個々の問題について突っ込んだ考察が展開されているわけではありませんが、ドイツ史の全体像を簡潔に示しつつも、著者自身の関心にもとづく視点がところどころにうかがえるようで、興味深く読みました。
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