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人類のおかれた状況が混迷の度を深め、希望と苦悩が錯綜している今日ほど、断片的な情報ではなく、深い考察が求められている時代はない。本書はまず、国際政治の起源を近代ヨーロッパにたずね、現代までの軌跡を追うことで、その基本的な性質を明らかにする。その上で安全保障、政治経済、価値意識という三つの角度から、差し迫る課題に人間が人間を統治する営みとしての政治がどう答えられるのか、的確な視座を提示する。
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Posted by ブクログ
国際政治の、発生から現在までの変遷を含めて分かりやすく解説してある。 若干観念的に感じる部分もあるが、実際の事象を交えてあるため、よく理解できた。 とかくドラスティックな改革が支持されがちな現在の情勢下、主権国家が徐々に形態を変化していくのに伴って、国際政治も発展していく、という、保守的というよりは...続きを読む現実的な考えにも共感できた
師の高坂の著書が偉大なだけに、比較すると大きな流れとしては掴みにくかったが、随所に光る記述があった。一種の世界史として読める。 主権国家体制、国際共同体、世界市民主義という3層を記述単位として、理想主義に陥りがちな世界市民主義をリアリズムの立場から抑制を促すことに成功している。 ・国際政治の大半...続きを読むは、自己の国益と世界的な公共利益のせめぎ合いのなかで、妥協を図るという点に尽きる。 ・地図というのは何らかの搾取の前触れ ・19世紀にイギリスでdiplomacyが外交を指す言葉として使われ、国際がベンサムによって使われ、国家体系がドイツのヘーレンによって発明された。国民国家の始まり。 ・1913年、メートルとグリニッジ標準時が統一基準になった。 ・外爆発から内爆発へ ・ソローキンの戦争指標。18,19世紀に落ち込み、20世紀に大膨張する。 ・安全保障のジレンマ ・集団安全保障はあらゆる紛争を世界戦争へと転化しかねない体制。 ・軍事力には、心理的、政治的作用もある。 ・心理的圧力に屈しない程度の軍備を持つことは自衛のための最低限の軍事力として必要。 ・重要なのは、軍事的威嚇に屈せず、簡単に既成事実を作られないような程度の抵抗力、すなわち抵抗の意志を担保する軍事力。 ・相互援助や地域的取極には、自らが望まない対立に「巻き込まれる」危険と、助けて欲しい時に助けてもらえない「見捨てられる」危険が存在する。その時の元手としての軍事力が意味を持つ。 ・テロには、ガン手術には成功したが、患者が死んだという状態に陥らない注意が必要。テロとは演劇だからだ。恐怖を広める行為だからだ。 ・世界政府は魂なき専制に陥る危険性もある。 ・内戦はひとたび始まると、激烈になり、終えるのが難しい。国家に見られる痛み分けができないからだ。 ・開発は単純ではない。ある社会が自らの伝統的構造と世界経済という与えられた条件を主体的に釣り合わせ、融合させられるかだ。 ・国民としての統一性の弱さ、強さ。 ・与えると言うことは、かれらの優越性を示すことであり、また、かれがより偉大で、より高くあり、主人であることを示すことである。:モース ・国際機関やNGOは、形式的にも誰かに責任を負う存在でない。地球的利害を調整できない。 ・ローマクラブの『成長の限界』の裏切り。 ・科学と政治の結びつきの危うさ。科学の自由さの喪失。科学者の無謬も担保できない。 ・人は宗教的信念によって行う時ほど、喜び勇んで、徹底的に悪を行うことはない:パスカル ・文明(イギリス)と文化(ドイツ) ・世界市民法の制限。文化の押しつけを戒める:カント ・豊かで自由な国家は外部からの、特に貧しく、専制的な社会からの脅威に恐怖を抱く。 ・民主制と共和制:カント ・電気的メディアは「速い情報」をやりとりするが、深い人間関係を形成する「遅い情報」は伝えない:青木保 ・言語:1.コミュニケーションの道具。2.隠語やスラングを通して、内外を分ける。壁を作る。
著者は故高坂正堯氏の弟子。 国際政治について考えるための枠組を提供してくれる良書。巻末の参考文献も併せて読めば、きっと自分なりの思考枠組ができるでしょう。高坂氏の「国際政治」(中公新書)と併せてお薦めします。
故・高坂正堯門下であり、現・京都大学大学院法学研究科教授(国際政治)の中西寛の著作である。 同じ中公新書に高坂の『国際政治』という古典的名作があるが、論理体系としての国際政治学を考えるにあたっては本書の方が断然優れているだろう。 ・主権国家体制 system of sovereign st...続きを読むates ・国際共同体 international community ・世界市民主義 cosmopolitanism 国際政治におけるトリレンマが冒頭に示され、その後17世紀のウェストファリア以来の国際政治の来歴が簡明に示されている。 そして、米ソの宇宙開発競争の結果、大気圏外に人間を送ることができるようになった時点で、現時点で人類が地球の地表に居住し続けなければならないという広い認識をもたらすことになった。これが仮想地球市民である。 コスモポリタニズムが広まり世界中に平和思想が行き渡れば問題が解決するなどという安直な考えは、本書においてはっきりと否定されている。 つまり現行の国際連合は、主権国家内の治安維持は各国の行政府に委任しており、それに介入することは明らかな人権侵害や治安の騒擾が行われている時ですら極めて慎重な手続きによって平和維持活動が行われることになる。 安全保障分野に限らず政治・経済分野の活動においても、各国政府がその領域内に住まう国民に果たす働きの重さは割合として減るどころか増えている。もちろん、環境問題などについてはNGO等の市民レベルでの活動が大規模化しそれが主権国家、国際社会に少なからぬ影響を与えるという点も重要ではあるが、やはり主権国家の意見・利害を調整する国連や国際会議の場においてその趨勢が決定されるということにはかわりがない。 グローバリゼーションが地球全体を覆っている現在だからこそ、地球大での普遍性の獲得を目指す価値観の創出よりは分裂性を伴う多文化主義や地域主義が主張され、自分の属する集団・地域の利益確保を目指す動きがある。 著者が末尾において「慎重な普遍主義」が豊饒な世界市民主義には欠くことができないという主張は、玉虫色で教科書的な表現ではあるが、真に重要な点なのである。現状を急進的に改革したり、他国の主権に積極的な介入をすることで画一的な価値観(それがたとえ「平和主義」であろうと)を強制するのではない。多様な価値観を受け止めながらも、様々なレベルでのディレンマを減らしつつ合意形成を目指す姿勢こそ現実主義的な人間の住む国際社会なのである。
------- ------- 人類のおかれた状況が混迷の度を深め、希望と苦悩が錯綜している今日ほど、断片的な情報ではなく、深い考察が求められている時代はない。本書はまず、国際政治の起源を近代ヨーロッパにたずね、現代までの軌跡を追うことで、この基本的な性質を明らかにする。その上で安全保障、政治...続きを読む経済、価値意識という三つの角度から、差し迫る課題に人間が人間を統治する営みとしての政治がどう答えられるのか、的確な視座を提示する。 ----- ----- 内容はすごくよかった、 よすぎて、まとめきれないくらい。。 時間がじっくりある時にでも書こう。
ちょっと読みにくかったが、なかなか面白い観点も多くて勉強になった。 ・独善的な行動パターンが、強固な味方を持ちにくく、したがってそういう政策が国際政治においてもちうる影響力も限られ、最悪の場合、孤立に導きかねない。 などなど
ゼミで扱う本の2冊目。 政治=「人間が行う営み」とした場合、国際政治はどのように分析できるのかと考えた一冊。 著者の師である高坂氏は国際政治=権力闘争の場と考えていた事をふまえると、「人間」を枠組みに使ったのは興味深い。 国際政治を三つの切り口ー安全保障、政治経済、価値意識 といった切り口で把握...続きを読むした。それらはそれぞれ、恐怖、自由、文化/文明という人間らしさに著者は還元した。 「人間」という視点から国際政治を考える事には疑問だけれど、読み応えがある一冊。
かの、高坂正堯の弟子の中でも最も学者としては名を馳せているであろう中西寛による、国際政治観に関する一冊であるから、いったい、どれほど楽しませてくれるのだろうかと期待していたのだが、最後のオチで一気にガックリさせられた。 途中までは非常にコンパクトに、そして多くの文献を引用して、国際政治で話題になるト...続きを読むピックをまとめてある。 彼は安全保障の位相、政治経済の位相、価値意識の位相という三つの位相に集約してそれらを歴史的に語るということを為していて、ちょっとしたまとめにはこれ以上ないくらいの本である。 だがその一方で、それを発展させて「地球社会」について語る段になると途端に怪しくなってくる。 全ての位相において問題が世界規模にまで達している現状に対して、それを地球社会だとかと呼んでいるようであるが、いったいそれが何なのかも、本当に存在しているのかも、これからもずっとそうであるのかも、何もわからない。無根拠に、歴史を一直線に捉えているようで、これを彼の歴史観として受け容れることに別に文句はないが、価値意識のところのように「かもしれない」連発をされたりなどすると、説得性に厚いとは到底思えない。 彼はあとがきのところで、高坂の『国際政治』を役立てたように書いてあるが、僕にはそうは思えない。 高坂は現実主義者である。そして中西は、未来の地球社会として主権国家体制に基づく戦争の残った世界を夢想するところから、自身も同じスタンスであるように表現をするが、それは高坂のいうそれとは異なっているように思えるからだ。 高坂は自身を現実主義者と表現する時には、理想主義者に対してその手段や方策についてまで言及している点を重視してそう称していたように思う。別に自身が現状ある秩序を信じ続けていることが所以ではない。それは「リアリスト」という単語が、理論と共にきちんと定義づけられるようになった今の時代からすれば誤用なのかもしれないが、決して今でもそういう姿勢は重視されるべきだと思うし、中西の本書に最も欠けているのはこの視点であるように思う。 といろいろ書いたが、立派な一冊であることは事実。
[ 内容 ] 人類のおかれた状況が混迷の度を深め、希望と苦悩が錯綜している今日ほど、断片的な情報ではなく、深い考察が求められている時代はない。 本書はまず、国際政治の起源を近代ヨーロッパにたずね、現代までの軌跡を追うことで、この基本的な性質を明らかにする。 その上で安全保障、政治経済、価値意識という...続きを読む三つの角度から、差し迫る課題に人間が人間を統治する営みとしての政治がどう答えられるのか、的確な視座を提示する。 [ 目次 ] 序章 国際政治への問い 第1章 国際政治の来歴 第2章 安全保障の位相 第3章 政治経済の位相 第4章 価値意識の位相 結章 二十一世紀の国際政治と人間 [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
いまいちピンとこないっていうか、読んでても目で追ってるだけになるから、とりあえず積読。時間かけて読めば理解はできる内容だけど、逆に時間かけてまで読む内容か?って自問自答すると、うーん…って感じ。この先、この話題に余程興味が向けば再度手に取るけど、あまりそんな日はやってこないような気も…
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